「謙也ー」
「んー・・・?」
私が名前を呼べば、眠そうに目を擦りながらも返事をしてくれる。
何回呼んでも、そのたびにきちんと反応してくれる彼が好き。
こてんと、謙也の肩に自分の頭を乗せた。
二人座るのはきついベンチで二人寄り添って座ってる。
この隙間のないゼロの距離はなんだか嬉しい。
「謙也ー」
「んー?」
「好きー」
「んー・・・俺ものこと好きー」
謙也はそう言って私の肩に手をまわした。
ゼロの距離なのに、まだ縮まる。
うとうと、と謙也の目が半開きになってきた。
それを見て、思わず笑いそうになるけど、我慢我慢。
きっと、ここで笑ったら謙也拗ねちゃうから。
心の中で笑っていると、だんだん
隣にいる謙也の熱がすごく心地よくて、私までうとうとしてきた。
「ねー」
「んあー?」
「眠いー」
「奇遇やなぁ・・・俺も今めっちゃ眠いねん」
「じゃここのまま寝るー?」
「んー・・・それもええなぁ」
「せやけど、風邪引かんかなー?」
「・・・まぁ、なんとかなるやろ。ちゅうか、俺ら馬鹿やから風邪引かへんて」
「・・・せやな」
謙也の言葉に頷きながら、目を閉じる。
そしたらすぐに横から寝息が聞こえてきて、私はそっと目を開けた。
ちらりと横を見ると、口を大きく開けて気持ちよさそうに寝てる謙也。
その姿を見て、寝るの早っ!!という突っ込みを心の中でしといた。
ぷぷっ、小さく私の口から笑いが漏れ、慌てて両手で口をふさぐ。
起こしたら可哀想やもん。
そして、のびたくんもびっくりやなぁなんてのん気に考えながら、
私はこの寝息を聞ける存在であることに幸せだと思った。
そんな春の午後。