謙也はおもろい。
「謙也ー手ー」
「おー?手ー?」
私が謙也に手を出すと、不思議そうな顔をしながらも私の手のひらにそれを重ねた。
だけど、私がしたかったのは『お手』ではなく、
「ちゃうちゃう」
「??チャウチャウの真似せぇってことか?」
「それもちゃうちゃうー」
「・・・なんやかわええな」
「いやいや今の謙也くんのがかわええですよ」
お手をし首をかしげて私を見つめる姿はまさしく犬そのもの。
本当に、私なんかより断然かわええ。
尚も不思議そうな顔をする謙也に私の頬は緩む。そらもう盛大に。
「謙也は犬みたいやな」
「・・・はぁ?何言うてん。俺ばりっばりの人間やで」
「んーと、人型犬?みたいな?」
「なんやそれ」
私がそう言うと、ちょっと眉を下げて笑う。
そんな表情が私はすごく好き。
みんな謙也の顔見てヘタレーヘタレー言うけど、そんなん愛嬌あってかわええやん。
この緩い笑顔がええやんけ。・・・ちゅうか顔見てヘタレーヘタレー言うんはいじめと思うわ。
まぁ確かにめっちゃヘタレやけどな。
「謙也ー」
「今度はなんやー?」
「めっちゃ、好きー」
「・・・おー、知っとるわ」
きゅっと、重ねられた手を握り何度も好きを言えば、
謙也は少しだけ顔を赤くして先ほどと同じように笑った。
そんな謙也が、誰よりも素敵に見えて、とんでもなーく愛しく感じる。
ほら、やっぱ、謙也にはこの緩い笑顔が一番ええわ。
「謙也!手、繋いで帰ろ!」
「え、俺今日も部活やで?」
「え、知っとるよ?」
「え、せやから今から部活・・・」
「そやね」
「そやねって・・・」
「そやね!」
「・・・・・あー、わかった。部活終わったら、手繋いで帰ろか」
「おん!」
謙也は、どこまでも私を甘やかしてくれる。
どんな無茶言っても我侭言っても、いつもいつも折れるのは謙也。
せやから私はどんどん甘えてまう。
そして、どんどん謙也から離れられんようになってしまうんや。
でも、
「謙也やからええよなー」
「・・・なにが?」
「んー心の話ー」
「・・・なんや今日のは変やな」
そう言って重ねた手のひらを、ほどいて、指を絡めた恋人繋ぎに。
まさか、謙也からするとは思ってなかったのでその行動に私は胸をドキドキさせた。
いきなりやったので本間、心臓破裂しそう。あ、顔赤なってないかな?
「ほな、行くで」
私がドキドキしてる中、謙也が控えめに私の手を引いて歩き出した。
ゆっくりとした、私を気遣う歩調。
あー愛されとるなぁと謙也の後姿を見つめ再確認。
そして、部活に向かう背中はたくましくて、改めてかっこええなぁって思った。私の彼はヘタレやけど、イケメンや。
だけど、
(・・・あれ?)
ふと、気づいたそれに、思わず小さくふきだす。
あー本間にもう、・・・私胸キュンしすぎで死ねるわ。
謙也・・・、耳真っ赤やで。
訂正、謙也はかわええ。