恋人がドSなんですが
異常気象だ。
もうありえない。
4月に入ったっていうのに・・・なんでこんなに寒いの?
ありえへんわ・・・。
未だ登下校にはマフラーが必需品な暦上では春な4月です。
4月といえば、新学期が始まる・・・あ、めでたく私は四天宝寺高3年になりました。
クラスは前と同じ1組で千歳くんと一緒。蔵ノ介とは素晴らしいことに一度も同じクラスになりませんでした。
そして今年はようやっと金ちゃんも高校に入学・・・ああ本間長かったわ・・・。
勉強がてんでダメで大嫌いな金ちゃんに高校受験はとても大変だった。
勉強する金ちゃんも大変だったし、勉強を教える私達も大変だったとしか言えへん。
『嫌やー!!!ワイもうあかんー!!!タコ焼き食べにいくんやー!!!』
『わああああ金ちゃん落ち着いてー!!あともうちょっとやから!!ね!?落ち着いてSitDown!!!』
『ああああッワイは日本人やからそないな英語なんて英語なんて英語なんて・・・うわぁぁん!!』
『いやー金ちゃんは元気やなー』
『蔵ノ介!!笑ってへんでなんとかしてぇな!!このままじゃ私の部屋が悲惨なことになってまう!!』
『は?ええんとちゃうん?』
『よくないわ!!!』
『もう文字も見たない!!!ワイはテニスをしたい!!』
『ちょっだからって私の部屋でテニスラケットは出さんといてー!!』
とまぁこんな感じに、(主に私が)大変だった・・・。
しかも金ちゃんは中学3年で一気に身長がぐんと伸びて・・・今や蔵ノ介を越して千歳くんくらいまでの成長を遂げていて・・・
つまりは、そんな彼を抑えることが私にできるはずがないわけで・・・。
私はほとんど半泣き状態で金ちゃんの暴走を抑えつつ勉強を教えていたのだ(ちなみに約2ヶ月)
蔵ノ介もいたのだけど、私に任せっきりで自分は私のベッドで雑誌を読んでいた。
本当に信じられない野郎やでぇ・・・。
けど、金ちゃんは可愛い後輩やから出来るまでちゃんと親身になって教えた。
あの子は理解すればめっちゃ勉強速度が上がるから教えがいもある。
本間にええ子やで金ちゃん・・・弟にいたら・・・・・・あ・・・いや、金ちゃんはやっぱ後輩でええわ。
金ちゃんが弟なのを想像したら、自分のやつれた姿しか出てこなかったのでなんだか切なくなった・・・。
「まあ可愛えんやけどね・・・めっちゃ可愛えんやけどね・・・」
「堂々と独り言かいな・・・なんや悩み事でもあるんか?」
「悩み事は蔵ノ介の理不尽以外は特にないわ」
「ほう」
「本間ありへんからなぁアイツ・・・」
「ほうほう」
「・・・ほう?」
「ほう」
「・・・・・・あ、おはようございまーす」
「おはよう・・・は朝からええ度胸やな」
ふと独り言を言っていたのにいつの間にか会話になっていて、ふと横を見たらものすごくいい笑顔の蔵ノ介がいて、ふと気付いたら私は走ってたよね。
「ありえへんありえへんありえへん」
「お前がありえへんわ」
「ぐぇ!!」
たった10秒くらいでマフラーをがっちり掴まれ逃避行は終わる。
ま、まあそうやな!帰宅部の足で運動部に所属してる奴から逃げ切れるわけあらへんよな!
グイとマフラーを引っ張られ、着実にぎりぎりと絞められとる首に冷や汗が止まらず、ひたすら蔵ノ介に呪詛のごとく謝罪をする。
そしたらすぐさまマフラーを引っ張るのをやめてくれたが・・・放してはくれない・・・ええ・・・。
さり気なく身体を左右に揺らして放してオーラ出したけどダメだった。
え、嫌や、なんやこれ。
「え、あの、マフラーから手ぇ放してくれへん?」
「嫌や。放したら逃げるやろ」
「逃げても1分足らずで捕まるからもうしません」
「え〜とか言いつつ逃げるんやろ〜わかっとるで〜」
え、なにそのノリ激しくウザいんやけど・・・。
そう出かけた言葉を慌てて飲み込む。
あかん、あかんで私・・・今そないなこと言ったら最後、マフラーで首絞められてまう・・・恐ろしい・・・。
ぶるっと身震いをしてから再度放してと言うと「なんやこれ犬の散歩みたいや」とか言い出してきたが、残念私は人間や。せやから早よ放せ・・・。
朝からぐったりした状態で上機嫌な蔵ノ介の隣をとぼとぼ歩く(マフラー掴まれたまま)
これじゃ本間に犬の散歩やん・・・。
私の人権どこやねん・・・とぼやいていたら、蔵ノ介が思い出したというように手を叩いた。
それを黙ったまま見ていると、蔵ノ介が少しだけ喜々した様子で話し出す。
「今日の部活な、ミーティングだけやから一緒に帰れるわ。せやから教室で待っとれ」
「えー・・・何時頃に終わりそうなん?」
「多分・・・4時30分くらい?」
「・・・せやったらその時間に部室行くわ」
「ん、わかった」
そう言って蔵ノ介の手が伸びてきたので、一瞬頭を叩かれるかと思って身を竦めてしまったが、その手は叩くでもなくただくしゃりと私の髪の毛を撫でただけだった。
不思議に思い首を傾げると「寝癖ついとるで?恥ずかしいやっちゃな・・・」と笑いながら言うもんだから私の顔が熱くなる。
おかしいわ・・・きちんと鏡見て全身チェックしたのに・・・。
しばらく大人しく頭を撫でられていたが、突如頭皮に痛み。
「えっいたっ」と声を上げたら「髪の毛にゴミがついとった」と蔵ノ介が言った。
それに対してお礼を言ったあと・・・また頭皮に痛み。
蔵ノ介を見上げればただ一言「ゴミ」と言われた。
・・・それどっちの意味やねん。
でも一応髪の毛のゴミを取ってくれたということでまたお礼を言ったら・・・また頭皮に・・・って、
「嘘やろ!!」
「なにがや」
「髪の毛にゴミなんてついてへんのやろ!ただ引っ張っとるだけとちゃうん!?」
「えー嫌やわー人の好意をーなんやと思うとんのやー」
「めっちゃ棒読みやん!」
マフラーを掴む手も緩んでいたのを見計らい、バッと蔵ノ介から距離を取る。
これ以上頭皮を苛められてたまるか!
頭もちゃんと両手でガードしていると後ろから明るい声が響き渡る。
びっくりして後ろを振り返ろうとしたが・・・ドンっという衝撃とともに身体が前に傾く。
うわっ転ぶ・・・!!!
来るだろう痛みに咄嗟に目をつぶると、ぽすんと固いものではなく柔らかい壁に顔がぶつかる。
疑問に思いそっと目を開けると、蔵ノ介がしっかりと私を前から受け止めてくれていた。
「っ!」
「っと・・・コラ、金ちゃん。いきなり後ろから飛びついたらあかんやろ」
「へへっおはよーさん!」
蔵ノ介の言ったことを華麗にスルーして金ちゃんは挨拶をしたが、私は気が気ではなかった。
ありがとうとお礼を言おうにも酸素を吸うので精一杯。
前から蔵ノ介に抱きとめられ、後ろからは金ちゃんに抱きつかれており私の身体は完全に身動きがとれない。
外でこんな・・・!と思い羞恥で頭がいっぱいになった。
なんとか身を捩るが想像以上に金ちゃんの力が強くて、蔵ノ介の私を抱きとめてる腕の力も強くて・・・胸がドキドキ・・・ってちゃうわ、おい、私吐きそうや・・・。
「ちょ、ちょ、二人とも離れてぇな!」
「えーめっちゃ抱き心地ええから放しとぉない!」
「き、金ちゃん・・・!」
「なにときめいとんねん。金ちゃんが言う抱き心地がええって意味は『お前が脂肪の塊』っちゅうことやからな」
「えっ!!!」
「えっちゃうで!は、んと、その・・・なんかふわふわしとんねん・・・!」
「脂肪の塊・・・」
「金ちゃんは優しいなぁそないなフォローせんでも豚には豚っちゅう認識はちゃんとさせなあかんねん」
「もうこれ以上そのネタやめて・・・」
ふにふにといつぞやの朝の時のように蔵ノ介が私の腰の肉を摘んできた。
ニヤニヤとしながらやってくるもんだから余計に腹が立つ・・・!
抵抗できない分、蔵ノ介を睨みつけるけどアイツの顔がさらに楽しそうに歪むだけで一向に摘む手は休めない。
本間サイテーや・・・!!
もだもだと身体を動かしていると金ちゃんが不思議そうに私の顔を覗き込んできて思わず顔がまた熱くなる。
理由は・・・金ちゃんは本当に男前に育ってしまって、なんていうか、男の子から男の人っていうか・・・かっこよくてたまに不意打ちでこういうことされると本間に照れてしまう。
そんな私に気付かず金ちゃんが赤くなった顔を見て「あれ?顔赤いで?」と顔がまた近づくもんだから心臓が飛び跳ねる。
もう頭がパンクしてしまいそうだ・・・と、思ってたら・・・ぎゅむっとさっきより強く腰の肉が摘まれ口から盛大な悲鳴が漏れた。
おかげで違うドキドキが心臓を襲う。
「いったあああい!!!」
「うわっ急にどないしたん!?」
「ちょお本間に痛いて・・・っ蔵ノ介痛い!!」
「えっ白石なんかしとるん??」
「えーなんもしとらんでぇ金ちゃんー」
「つま、つまんどんねん!!」
「つまむ??」
「金ちゃんは何も気にせんでええでー?なぁちゃん?」
お前は気にしろ・・・!!わざとらしく『ちゃん』付けで呼びよって・・・!
ぐっと唇を噛み締めて目で蔵ノ介に訴えるがニヤニヤしやがってこのやろー・・・!!!
もう我慢の限界(お肉の)がきたので本格的な抗議をしようと口を開こうとしたら、
金ちゃんが突如大きな声で「あー!!ワイまたやってもうたわ!」そう言うと蔵ノ介に一言謝って、ぱっと金ちゃんの身体が離れた。
何をまたやってしまったのかは知らないが、ようやく身体が少し自由になったで・・・。
・・・ちゅうか金ちゃんは謝るんなら蔵ノ介やなくて私にやないの?と少々疑問はあったが・・・まあええか。
溜めていた息を吐き出し、安堵したのもつかの間・・・突然蔵ノ介が耳元で「・・・浮気はあかんからな」とちょっとよくわからないことを囁いてきたので私の眉間に皺が寄る。
金ちゃんに続いて蔵ノ介も何を言っているのか・・・いや、本間に、浮気ってなんやねん・・・なんのことやねん。
首を捻って考えてみるが・・・うーん・・・全くわからない。
・・・って、そんなことより・・・蔵ノ介もええ加減離してくれへんかな・・・。
私的にはこの現状を早くどうにかしたい。
両手で蔵ノ介の身体を少し押すと、ため息はつかれたものの案外簡単に蔵ノ介は身体を離してくれた(いやため息つきたいんはこっちやから)
やっと完全なる開放を得られ肩をまわしていると、金ちゃんが申し訳なさそうに私を見ていることに気付く。
?なんや?
「金ちゃん?」
「ワイ・・・白石に言われてたのにまたやってもうて本間すまん・・・!」
「へ?」
「けど、見ると嬉しなってしもてつい抱き締めてしまうんや・・・」
「っ、金ちゃん・・・!」
「・・・ときめいてるとこ悪いが、今のお前のその顔、めっちゃ不細工やで」
「!?」
せっかく金ちゃんにときめいているというのに・・・蔵ノ介の邪魔な一言で一気にテンションが下がる。
空気読めやドアホ・・・とついつい言葉を零せばものすごい目で睨みつけられたので、慌てて両手で口を塞いどいた。
「白石ー・・・ワイもっとちゃんと気ぃつけるわ・・・」
「おん」
「?」
金ちゃんは何に対して蔵ノ介に謝っているのかはわからないが・・・色々と何かあるんだろう。
それにしても・・・いつ見ても二人の仲の良さは本当の兄弟みたいだ。
・・・だけど、金ちゃんの頭を優しく撫でる蔵ノ介を見てると・・・微笑ましいけど、なんだかなぁという気分になる。
蔵ノ介は金ちゃんにはすごい甘いし優しいよなぁ・・・。
私には全く見せた事のないような優しい顔をする蔵ノ介に・・・少しばかし寂しさみたいなものを感じる。
なんていうか・・・金ちゃんが羨ましいくらいだ。
・・・、とか、思っちゃったりしてる自分に恥ずかしさが込み上げてきて、頭を抱えたくなった。
なに、これ・・・これじゃ嫉妬やん・・・!うわ!ないわない!
ペチペチと自分の頬を叩いて邪念を振り払っていると、二人して不思議そうに首を傾げるから・・・金ちゃんはモチロン、蔵ノ介も少しばかり可愛いとか思ってしまった私しにたい・・・。
********
「忍足くんや」
「お、」
残すとこあと1限。
もうひと踏ん張りということでトイレに向かったところ、偶然にも忍足くんと廊下で出くわした。
忍足くんは蔵ノ介のクラスメイトかつ部活仲間で、よく蔵ノ介に会いに行くと話しかけてくれるすごくいい人だ。
さらには蔵ノ介の素性も知っていて蔵ノ介の無茶振りの被害にも合っている被害者である。
忍足くんとは、いつか絶対蔵ノ介にぎゃふんと言わせてやろうぜ・・・と涙ながらに握手も交わすくらいの仲だ。
つまりは私と忍足くんは仲良しで、良き相談相手であり良き理解者の忍足くんとは会う度に話に花が咲きまくる。
今日も朝の出来事を話すと、忍足くんは笑顔で話を聞いてくれた(本当にいい子である・・・)
「へー!金ちゃんに会うたんか!ええなぁ・・・俺も早よ金ちゃんに会いたいわー」
「えー?忍足くんこの前も会っとったやろ?」
「そうやけど!俺が言うとんのは制服姿の金ちゃんに早よ会いたいねん!」
「あー・・・そっか、まだ忍足くんは制服姿の金ちゃん見てへんのか・・・。うふふ、金ちゃんめっちゃかっこええで!」
「かっこええとか・・・本間、金ちゃんはえらい成長を遂げたわ・・・俺の身長もあっちゅう間に越してしもうたし・・・」
あまりにも悔しそうに忍足くんが呟くので噴出してしまう。
そんな私を見て忍足くんは「俺かて中学よりは少し伸びたんやで!!!・・・何mmか・・・」と言うもんだからさらに噴出したのは言うまでもないだろう。
「ふふっまぁ蔵ノ介も金ちゃんに身長越されて悔しそうにしとったなぁ・・・」
「そらそうやろー弟みたいに可愛がってた奴に身長越されるんは相当くるで?」
「ふぅん・・・そうなんや」
「そうやでー」
私は金ちゃんに身長を越された時は純粋に男の子の成長ってすごいなぁってだけやったけど、男の子同士やとやっぱちゃうんやなぁ。
・・・しかし、こうして金ちゃんの話をしていると朝の私を思い出す。
金ちゃんに対する蔵ノ介の態度・・・。
「・・・蔵ノ介って金ちゃんにめっちゃ優しいよなぁ・・・」
「ん?まあ確かに中学ん時から白石は金ちゃんに優しいっちゅうか甘かったな」
「へ?」
「え?」
思いがけない返答にきょとんとしてしまうと忍足くんもきょとんと私を見る。
「い、今なんか言うた?」「え、が言うたんやろ?」・・・え。
心の中で呟いていたつもりがどうやら口に出ていたらしい・・・!
一人わたわたと焦っていると忍足くんが苦笑しながら「さっきも言うたけど、」と話を続けた。
「白石は中学ん時から金ちゃんに甘かったで。アイツは女姉妹だけやったから、
何や金ちゃんのこと弟ができたみたいや言うてめっちゃ可愛がってたな。ま、なんちゅうか・・・あの金ちゃんへの優遇を見とると俺らもたまに何とも言えへんけど」
「うん・・・」
「・・・なんかあったん?」
心配そうに忍足くんが私を見てきたので、もうここまで来たら全部話しちゃおうかなと思い始めた。
朝、ふと思ってしまったことを・・・ちょっと口に出すのは恥ずかしいんやけど・・・。
数分くらい迷ったが、覚悟を決めて口を開く。
「う、羨ましいなぁ・・・って」
「?羨ましい?」
「いや・・・その・・・金ちゃんには優しいから、その、」
「・・・あーなるほどそういうことか」
忍足くんがふむと一つ頷いたのを見て、なんだか顔が熱くなる。
わ、私・・・とんでもなく恥ずかしいことを相談してないか、これ・・・。
しかも廊下のど真ん中で・・・。
言ったあとに後悔がどっと押し寄せてきた・・・ついでに汗も出てきた・・・。
如何せんこういう話題はいまだにどうしたらいいかわからない私だ。
悶々と悩んでいると忍足くんが私の名前を呼ぶ。
「なに・・・?」
「あんな、せやったら言ったらええと思うわ」
「・・・はい?」
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4時30分前・・・部室前に到着。
そろそろミーティングが終わる時間だ。
私は部室の少し奥にある水道がある場所に移動する。
蔵ノ介にメールで『部室奥にある水道のところで待っとれ』と言われたからだ。
今日に限ってなんでやろ・・・とか思っていたけど、先ほどから部室前でキャーキャーと女の子の声がするから納得した。
ミーティングの日は部室前は女子でごったすんのを忘れとったわ・・・。
ふうと息を吐いて蔵ノ介が来るまで、今日トイレに行くのも忘れて忍足くんと話したことを思い出す。
言ってみたらいい、かぁ・・・。
それはそうかもしれない・・・何も言わないで文句を垂れるより言ってから文句を言った方が何事もいいよね。
携帯を取り出して時間を確認・・・4時30分は過ぎた。もう来るだろう。
ドキドキしながら今日忍足くんに教えてもらったことを脳内でおさらい。
恥ずかしいが・・・『これなら白石はイチコロ!』という言葉を信じてやるで忍足くん・・・!!!
「・・・なに一人でガッツポーズしとんねん・・・相変わらずキショイわぁ・・・」
「・・・」
「なんやねんその目。言いたいことあるんやったら言えばええやろ?ん?」
登場して早々なんてこと言うねんくたばれクソが、なんて言葉は飲み込んで・・・早速忍足くんにご教授していただいたことを実行しようと思う。
何も反論せず、帰る気満々な蔵ノ介にそっと近づいて・・・そっと服の裾をつまむ。
それからゆっくり顔を上げて蔵ノ介の目をじっと見つめた・・・ポイントは上目遣いや・・・。
そうして見つめた蔵ノ介の瞳が少しだけ揺らいだがわかり、心の中でガッツポーズ。
これは勝機を見た気がした・・・いける・・・これならいけるで!!!
忍足くん・・・本間にありがとう・・・!感謝も心の中でしてから、最後に忍足くんに教えられた言葉を言おうと口を開いた。
勝利を確信して・・・、
「く、蔵ノ介・・・あんな・・・、」
アドバイス2
『優しさが欲しいなあて言うてみたらえんや』
い、言ったで・・・!
羞恥も何もかも捨てて私は言った・・・!
これで少しは優しく・・・、
「?何言うとんねん・・・いつもに優しいやろ」
「・・・は?」
「あ?」
「いえ・・・」
もう何も言葉が出なかった・・・。え。本当に、え、である。
忍足くん、彼の中では私に対する扱いは優しいらしいです。
蔵ノ介の優しいって・・・。
優しい!?
しばし呆然と蔵ノ介を見つめていたら、蔵ノ介が眉間に皺を寄せて、ボンと最後の一撃を落とした。
「しかも何やその仕草・・・お前別に可愛えないんやからその仕草似合わへんで?」
「・・・」
そう言って蔵ノ介は鼻でハッと笑ってきました・・・いや、似合わないってわかって・・・わかってたけど・・・もう私は優しさの意味がわかりません・・・!!
起訴!!