「ん・・・」
噎せ返るような何かの匂いで俺は重たい目蓋を押し上げる。
あー・・・なんで俺こんなとこで寝てんだ?
身体を起こし辺りを見渡せば、俺の周りは薔薇で囲まれていた。
「・・・何処だ?」
見知らぬ景色が俺の視界に広がり、少しばかし不安が募る。
とりあえず立ち上がり、服についた土を払って状況を整理しようとする。
・・・って、オイ、待て・・・。
自分の服を思わず凝視し、固まった。
風が吹けばヒラリと揺れる、服。
足が、非常に涼しい・・・。
・・・っ!?
「な、な、な、」
なんで俺スカートなんてはいてんだ・・・!?
こんなの男の俺がはいてちゃ変態じゃねぇか・・・!!!
そう、俺はいつの間にか水色のエプロンドレスを着ていて、頭にはカチューシャまでもがついていた・・・
落ち着け、・・・落ち着くんだ俺。
わけのわからない状況に軽く眩暈がしてきた・・・。
えーっと、まず、俺はなんでこんな見たこともない場所にいるんだ?
で、なんでこんな格好になってんだ?
誰だこんな格好にしやがった奴。マジでぶっ殺す。
ピキリと俺の中で何かがヒビ割れる。
そこでふと過ぎった、手のひらの熱・・・、あ。
・・・そうだ、俺・・・。
俺がここで寝っ転がってた前のことを思い出した。
あの、頭にウサギ耳をつけた変な女・・・のことを。
いきなり俺の家の庭に現れたと思ったら俺のことを「アリス」とか言ってきてわけのわからないことばっか言ってて・・・
俺はそのに変な穴へと引きずり込まれたんだ・・・で、ここは何処だよ。
思い出したはいいが、結局今俺がここにいる状況を打破できるわけでもない。
「・・・探すか」
なんとか導き出した答えは、俺をこの場所に連れてきたであろうを見つけることだった。
しかし・・・こんな格好で探すのもいやだ。
とりあえず俺の服はどこいった?
つーかどうやって着替えさせられたんだ?
ヒラヒラとするうざってぇスカートをつまんで、どうしたもんかと考える。
「はあ・・・」
今頃、幽はどうしてんだろ・・・俺のこと探してたりしてんのかな・・・。
そう思うと申し訳ない気持ちが込み上げてきて、こんなところで立ち止まってられないと思った。
この格好で歩き回るのは激しく抵抗があるが仕方ない・・・幽のためと思い我慢、しよう。
今にもそこら辺の木とかへし折ってやりたいけど、我慢だ。木はなんも悪くない。
とにかくここが何処で、どうやったら俺の家に帰れるかを探すため俺は歩き出した。
それが側で草陰からひょっこりとウサギ耳を飛び出させているを見つける数秒前の俺である。
見つけた、シロウサギ?
(さて・・・まずは服の場所を吐かせるか)