「おっまえはまた来たんかー!!」
「ひい!ご、ごめんなさい!!」
「ちょっとユウくん!ちゃんのこと苛めたらあかんで!」
いつも通りに進んでいくと、目の前に広がるのはお洒落な長いテーブルと椅子、その上にはいくつもの綺麗な食器と美味しそうなお菓子と紅茶。
そしてそこにいるのは、とても優しくて色々と親切にして下さる小春さんといつも不機嫌そうな顔をしているユウジさん。
いや、小春さんと話す時は上機嫌なのだけど、私が加わると途端に表情を暗くする。
どうやら私はユウジさんに嫌われているようです・・・。
「チッ・・・何やねん・・・毎回毎回小春はって!構いすぎやないか!?」
「そないなこと言われてもぉちゃんめっちゃ可愛えんやもんー!あ、今日は紫のピン止めつけとるんやな!さらに可愛さ倍増やわぁ!」
「えっありがとうございます!!」
「なっ・・・そいつより俺の方が可愛えやろ!」
「はぁ?もうええわ、お前寝とれ」
「・・・」
小春さんに光くんから貰ったピン止めを褒められ上機嫌な私と、小春さんからの一言に絶望的な顔を見せるユウジさん。
う、うん・・・私もそんなこと言われたら凹んじゃう・・・。
小春さんは優しくて親切だけど、ユウジさんへの当たりは結構ひどかったりする。
まあ逆に仲がいいからそんな風に接しられるのかな?
小春さんから頂いた紅茶をちびちびと飲みながら(あ、今日はダージリンだ)、二人の様子を眺める。
すると凹んだ様子のユウジさんと目が合ってしまった。(小春さんはケーキを取りに行くと言って小屋に行ってしまった)
「・・・何見とんねん」
「あ、い、いえ特に意味はないですけど・・・」
「どうせ笑っとるんやろ?小春に怒られた惨めな俺を笑っとるんやろ?」
「そ、そんなこと思ってませんって!」
「優雅に紅茶なんか飲みよって俺にも寄越せアホ」
「あ、はい」
この前小春さんに教えてもらった美味しい紅茶の入れ方でユウジさんに紅茶を淹れる。
淹れてる最中、じとーっとユウジさんの視線が私に突き刺さった。
うう・・・やりにくいです・・・。
「まだできひんのか」
「あと少しなんで、もうちょっとだけ待ってください」
「のろま」
「う、すいません・・・」
「なしてお前みたいなのろまに小春が構うのか全くもってわからん」
「すいません・・・」
「とか言いつつ、ユウくんってばワテよりちゃんに構ってへん?」
「なっ・・・何言うてん小春!!」
どうしても小春さんみたく手際よくできず手間取っていると、例の如くユウジさんに文句を言われた。
しかしケーキを持って戻ってきた小春さんに助けてもら・・・というかなんというか・・・反対にユウジさん顔真っ赤にして怒っちゃった・・・!
「お、おお、俺が構ってるわけないやろ!邪険に扱ってるだけや!」
「ほう・・・ワテにはちゃんの気を引こうと意地悪言うてるとしか思えへんけどなぁ」
「!!!」
「あ、あのー・・・」
「なっんやねん!!!」
「紅茶できたので・・・どうぞ。あ、小春さんも」
手間取ったけどなんとか淹れられた紅茶を仲良く言い合っている二人に差し出す。
結構頑張って淹れたので是非とも飲んでもらいたい!
自然と笑顔になるのを感じながら差し出していると、ユウジさんが相変わらずの不機嫌顔で紅茶を受け取り、小春さんが満面の笑みで紅茶を受け取ってくれた。
「ありがとう!んーめっちゃええ匂いやわ!これは・・・アッサム?」
「あたりです!」
「ちゃんも紅茶淹れるのうまなったなぁ」
「いやいやまだ下手ですよー。小春さんみたく手際よくできませんし」
「そんなん慣れやって!それに味が美味しければええんやって!この紅茶めっちゃ美味しいで!」
「良かった・・・」
「ね、ユウくん!」
「・・・・・・まあまあ飲めるわ」
「まぁたそないなこと言うてー素直に美味しいって言いや」
「あははっ私は飲んでもらえてるだけ嬉しいですよ!」
「っ・・・健気やなぁ!もうっ素直やないユウくんはほっておいてケーキでも食べましょか!」
「んなっ!?」
小春さんは花が飛びそうなくらいの笑顔で、先程取りに行っていたケーキをででんとテーブルに置く。
今までどこに置いてあったのか(椅子かな?)・・・なかなか大きいケーキだった。
・・・す、ずごく美味しそう。
「こ、これなんていうケーキですか?(ごくり)」
「ミルクティのシフォンケーキ!ささっ食べて食べて!」
「ありがとうございます!!」
「こ、小春〜お、俺の分は・・・?」
「知りませーん。食べたければ自分で取ったらええやろー?」
「小春・・・!?・・・おっ、お前のせいやからなぁ!!」
「ふぁんれれふか!?(なんでですか!?)」
小春さんが大きく切ってくれたシフォンケーキを頬張っていると、ユウジさんにいちゃもんをつけられついつい口に入っているというのに口を開いてしまった。
あわわ、銀お兄様にはしたないと怒られてしまう!
とりあえずもぐもぐとケーキを咀嚼し飲み込む。
その間もユウジさんに恨みがましそうに見つめられたので、「食べますか・・・?」と聞くと「!お、お前の食いかけなんていらんわ!」と言われてしまった・・・ご、ごもっともです。
まあ、すぐに小春さんがユウジさんの分を切り分けてくれたので、喧嘩にはなりませんでした。
「はふぅ・・・、小春さんのお菓子は全部美味しいですね!」
「そう?うふふーありがとうね!ところで、ユウくん」
「ん、なんや?小春ぅ」
「貴方、眠りネズミなんだからそろそろ寝たら?今だって辛いんとちゃうん?」
「べ・・・別に今は眠ない」
「・・・ふーん・・・まーったく本間素直やないなぁ(ちゃんが居るから寝たないんやろ?」
「!!?ちゃ、ちゃうわ!!!だ、誰がこんな奴の・・・!!」
「??」
小春さんとユウジさんって本当に仲良いなぁなんて、二人のこしょこしょ話をしてる姿を見つつ、3個目のケーキに手を伸ばしたのでした。
ハロー、帽子屋さんと眠りネズミさん
(あー美味しかったなぁ・・・って、これある意味餌付けされて、る・・・?)