少し、距離が縮まったと思ったら すごく胸が満たされてく感覚がした。
















04
















「おはよう、財前くん!」

「おー・・・今日も元気やな・・・」

「そう?財前くんは朝から部活やったん?」

「まぁな」

「じゃ財前くんも元気なもんやないの?」

「俺あんま朝得意やないねん」

「あ、確かにそんな感じする」

「どんな感じや」









あれから、『ガトーショコラ』を貰った日から、からよく話しかけてくれるようになった。
自分でも驚きだが、俺からもに何かしら話しかけとる。
前までの俺やったら、女子に無駄話されんのも嫌やったし女子に話かけるのも嫌やった。
だが、はそうは思わない。
それだけは俺にとって特別なんやな・・・とか柄にもなく思ってしまう。ああ、なんやこれ本間俺キモいわ。
朝っぱらから何考えとんねん俺。
自分の考えに恥ずかしくなりながら腕を枕にして顔を隠すと、周りの音がだんだん小さくなっていき、・・・―――――――――


























まあ・・・・・・時間の流れは早いもんで気づいたら昼休みに突入しとった。
ボーっと上手く働かん頭で隣を見れば、が友達のもとまで机を移動させ嬉しそうに弁当を広げてる。
あー・・・あれも手作りなんかな?遠目からでもうまそうや。
の弁当を見とったら腹の虫が鳴る。なんちゅうか・・・素直な腹やな。
俺も飯を食おうと立ち上がる・・・ちなみに今日は弁当忘れたから学食や。











「あ、あのっちゃん廊下で・・・っ」

「?どうしたのちゃん?」









財布を取り出そうとしたところで慌てたようにの友達がに駆け寄ってきた。
混乱したような興奮したような表情のの友達はちらちらと廊下を見ている・・・そういや廊下少し騒がしいな。
なんかあったんやろか?









「あのね、ちゃんのこと白石先輩が呼んでるよ・・・!!」

「白石先輩が?なんだろ?」









(誰や白石先輩って・・・白石・・・は・・・?白石・・・って白石部長か!?)
別に聞くつもりはなかったが、聞こえてしまった単語に俺は目を見開いた。
廊下が騒がしい理由はわかったが・・・・・・部長ってと面識あったん?
部長といえば学校一モテる男や。その男がなんでと・・・ちゅうかこれ・・・まずいんとちゃうん?
友達から聞いた内容に不思議そうにしながらも廊下に向かうの後ろ姿を目で追う。
廊下には白石部長がうさんくさい笑顔を振り撒いとった。
相変わらずやなあの人は・・・あの笑顔の裏では何考えとんのかわからんわ。


は部長のもとまで行くとお辞儀をして、部長はそんなに笑いかけてから話し始めた。
・・・何話しとんのやろ・・・。
残念ながらここからじゃ二人の会話は一切聞こえない。
笑いあいながら話してる二人の姿はとても仲良さげで、は部長に無邪気に笑顔を見せている。
いつもは可愛えはずのの笑顔は・・・なんか、
(なんか・・・ムカつくわ。なんやようわからんけどめっちゃムカつく。腹が沸々とするこの感じはなんやねん。)
ジッと睨みつけるように二人を見てれば、部長がちらりとこちらを見た。
目が合って、部長の動きが止まり驚いたような表情をする。
俺からは目を逸らさず見てると、部長から目を逸らしに何かを言って去っていく。
それに少し安心したが、すぐに疑問が浮かぶ。
(さっきの顔はなんやねんあの人・・・)
とりあえずが自分の席に戻ったのを見ると、俺は財布を持ち教室から出た。
あんま昼食う気なかったけど・・・今日はくいだおれ丼でも食うか。


















昼休みが終わる五分前、教室に戻ってきた。
あかん・・・あれはやっぱありえんわ・・・。
あの量はない・・・あれを平気でバクバク食う金太郎はやっぱおかしいとしか思えへん。
昼飯の選択ミスをした俺は吐きそうになりながらも席につく。
隣では次の授業の準備をしている。微かに口元に笑みを浮かべている。
そんな姿を見ていてふと思い出すのは楽しそうに話す、と部長の姿・・・。
うわ・・・またムカムカしてきよった。
思わず眉間に皺が寄るのを感じ溜息をつく。
このままじゃ、前みたく部活やっとる途中でなんかやりそうな気がしてきた。
そんなのは嫌や二回目があってたまるか、俺はこの前の失態を繰り返したくないため、そうそのために俺は聞くんや。
そう自分の中で結論づけ、の方を向く。









「なぁ、と・・・白石部長て仲ええんか?」

「へ?」









突然の俺の問いかけにきょとんとした表情でが俺の顔を見る。
考えるように首を傾げてから自分の中で考えがまとまったのか、ひとつ頷き口を開いた。









「私、保健委員の副委員長やっててそれで委員長の白石先輩と話したりとかすんねんけど・・・んと、せやから仲ええっちゃ仲ええんかな」









それから部長とあんな風に話してたのも、委員会の話をしていたと言った。
そうだったんやと安心したが・・・・・・









「・・・って副委員長やったんか」

「うん!」

「へー・・・なんや意外やわ」









そんな話は初耳で素直に驚く。
あんまそういうのせぇへんように見えんのに。
それが顔に出ていたのか、がにこりと笑って「私もそう思うわ」と言った。
けどまぁ、









「結構似合っとるかもな」

「え、本間?」

「おん」

「わー・・・そう言われたん始めてかも!あはっなんか嬉しい!」









そう言って照れたようにはにかむ。
本間・・・なんやっちゅーねん・・・、今度は胸がムカムカしよる。
でもそれは決して嫌なムカつきじゃない。
チャイムが鳴り先生が入ってきて、ざわざわしとった教室が静かになった。
も前を向き、始まった授業を真剣に聞いている。
そんなを見てから、俺も前を向く。
しかし授業なんて頭に全く入らなくて、思い浮かぶは・・・さっきのの笑顔だった。
















(あー・・・頼むからあんな可愛え顔見せんなや。)