恋愛って、結構むずかしいもんなんやな。
なんて厄介なもんなんやろ。
05
それは昨日に遡る。
「財前くんって・・・好きな子とかおるん?」
「は?」
今日の最後の授業は自習で寝たろうとか思っとったけど、の一言により寝るなんて考え吹っ飛んだ。
妙に真剣な顔で俺を見て言った言葉に思わず間抜けな声が出た。
から・・・まさかそんなこと聞かれるなんて思ってもみなかったため、俺はただまじまじとのことを見てしまう。
「それは答えなあかんことなんか?」
「えと・・・その・・・、」
俺の言葉に困った顔をして前を見る。
その視線をたどれば、こちらをチラチラ見てくる女子の塊がいた。
(あぁ、なるほど・・・そういうことか)
きっとはあいつらに俺のこと聞いて来いみたいなこと言われたんやろ。
お人好しで優しいのことや、こういうこと聞くのは苦手やけど断れんかったに違いない。
しょうがない・・・答えてやるか。
頬杖をつき溜息をつけば、はビクリと肩を震わせ不安げな顔で俺を見る。
そんなの姿がまるで小動物のようで心の中で笑った。
(本間・・・可愛え奴)
「おるで」
「へ・・・?」
「せやから、好きな奴。」
「・・・え?」
目を真ん丸くして固まるに、今度ばかりは顔に出してニヤリと笑う。
はハッとしたように俺に「ありがとう!」と言ってから携帯を取り出し何かを打ち込んでいた。
(多分あいつらへ向けてやろうな。)
それからパタンと携帯を閉じ、携帯が震え開いていじっていたの顔がみるみるうちに驚愕の表情へと変化していく。
なんて書いてあったのか知らんが、どうせロクでもないことなんやろう。
そう思いつつを見ていると何かを決心したように頷いてがまた口を開いた。
「あの、こ、答えたくなかったら無理して答えなくてもええんやけど・・・その、財前くんが好きな子ってどんな子なん?」
こういうこと言うのは慣れていないのか、顔を真っ赤にしてどもりながら聞いてくるに、
胸がキュンとした。
(あぁ、くそっ、可愛えすぎや・・・!)
悶えてしまいそうになるのを抑えながら、平静を装って俺が知ってる限りの好きな奴・・・の特徴をあげる。
「・・・笑顔が可愛くて人に頼まれたら嫌とは言えんお人好しで何事も一生懸命やっとって一緒にいて落ち着けて・・・あとは料理が好きな奴。」
「そうなんや・・・財前くんがそんな風に言うんやったら、その子めっちゃ可愛えんやろなぁ」
そうや、めっちゃ可愛えよ・・・なんたってお前なんやから、とか何言っとんねん。本間最近キモすぎやわ俺。
臭すぎて笑えん台詞を浮かべる脳内に呆れた。あー本間キモい。
これじゃ小春先輩らよりキモいかもしれん・・・・・・いや、それはないか。
考え事をしているとがまた携帯をいじっていた。
・・・せや、これ、俺も聞けるんちゃうか?
を見ていて思った・・・の好きな奴がいるかどうか、聞けるチャンスなんやないか?
これでに好きな奴がいなくて、好きなタイプとか聞けたら・・・・・・。
そんな淡い期待をしながら携帯をしまったに声をかけた。
「なぁ・・・は好きな奴とかおるん?」
「・・・、うん」
数秒間があったと思うと、恥らうように顔を俯けては小さく返事をした。
その言葉に俺の頭が真っ白になって、時間が止まる。
俺の淡い期待なんて見事にぶち壊したものやった。
だけど、俺の口は無意識に言葉を発する。
「へえ・・・どんな、奴なん?」
「・・・最初は怖いなとか思っとったんやけど、全然そんなんやなくて優しくてびっくりで、」
俯きながら話すの横顔はとても綺麗なものやった。
頬を赤らめ幸せそうに緩む目元、そんな表情をそいつに見せているのか。
「かっこよくて運動もできて・・・・・・めっちゃモテる、人」
言葉の最後に笑うに胸が軋む。
の笑顔は好きや、その中でも今の笑顔が一番好きかもしれん。
すごく、綺麗で可愛くて眩しくて・・・目が離せない。
例え、それが俺に向けたもんやなくても
(それでも俺はが好きだと強く思った)