この想いはどんどん加速していく
















08
















『あ・・・え?あ、へ?』

『・・・、俺、』

『っ・・・ご、ごめん!も、そのっ私は大丈夫やから心配せんといて!あ、あわっきょ、今日は見たいドラマあんねん!もう、帰るね!ほな、また明日・・・!!』



















あの日、俺が無意識やってしまった行動から早一週間。
あれからが一度も俺と目を合わせてくれへん。
会話はちゃんとすんねんけど・・・どうもぎこちない。
もちろんそれは俺のせいやてわかっとるけど、

(あんないきなり・・・ただのクラスメートに目蓋とは言えどキスなんてされたんやから・・・当然の反応やわ)

机に突っ伏して今日の授業はもう捨てることにする。
ノートなんてほかの奴に見せてもらえばええ。

(本間こんなん嫌やわ・・・自分なに悩んどんねん・・・俺が招いたことなんやからしっかりせぇや。)

そうは思っていてもは俺と目を合わせてくれない、話はすぐ切られる、そんなんばっかのこの一週間はかなり堪えた。
もう何を話しかけたらええかわからん。
柄にも無いとか言ってられへん。なんとかしてと前と同じように話したい。
報われない恋ならば、尚更今の席の間にとたくさん話しておきたい。
なのに、こんな状況でうまく話せるほど俺の口はうまない。
どないしたらええねん。
悩みに悩んで、今日も昨日と同じように過ぎていく。
結局とあまり話せずに終わる。
んで、部活で謙也さんに当たる。
それが今の俺の日常になりつつある、最悪やな。





今日も同じで気付けば帰りのHR。
どんだけ俺はボーっとしてたんやろ。
担任が帰りの挨拶を済ませ、クラス全体がざわざわとし出す。
あぁ、せや、に「また明日」だけでも言うか、と思い顔を上げて隣を見ると何故か知らない女子が立っとった。









「・・・」

「あの・・・あたし、光くんに話したいことあんねん。やからちょっとええ?」

「・・・おん」









本間どんだけやねんボケ。
タイミング悪すぎなこの女に少々苛立ちが募る。
ちゅうか誰やこいつ。全く知らん。
は気付かぬ内にもうすでに帰っていた。
・・・ああ、本間に最悪すぎて溜息しか出ん。
とりあえず俺はこの女に「ついてきて」と言われ、テニスバックを肩にかけついていく。
早よ話とやら終わってくれんかな。
今日はいつもよりイライラするので、早く部活行って存分にテニスをしたい。
そんなことを思っていると、いつの間にか女が立ち止まった。




ついた先は体育館の裏。
・・・・・・ああ、そういうことか。









「あたし、光くんのこと好きです。付き合うてください」









やっぱりか。
思っていたとおりの展開に思わず溜息が出かけるが、俺のことを好いとるわけやし、 なるべく傷つけんよう俺の出せる限りの優しい声ですぐさま断りをいれる。









「・・・俺、好きな奴おんねん。悪いけどその気持ちには答えられへん。」









すると、女は顔を俯かせ何も喋らなくなった。
普通やったらここで「そっかわかった」で女が走り去って終わりなんやけど・・・、なんで動かへんのや。
俺としては早よ部活に行きたいわけで、いつまでもここにいるわけにはいかない。
むしろあれか。ここは俺から去ればええんか?
そう思い体を反転しようとした途端、女が小さく呟いた。









「・・・・・・そう。・・・なぁ、もしかして光くんの好きな人ってさんやったりする?」





「・・・・・・は?」

「やっぱそうなんや」









俯いていた顔を上げ、泣き始めたその女。
正直言うてドン引きやわ・・・。
早々に立ち去りたいとは思っていても、先ほど言った女の言葉に俺は動けずにいた。
俺は隠し事とかそういんは得意や。顔にも出にくい、なのにこの女は・・・なんでわかったんや?
そんなことを思いつつも表情は無表情で泣き顔を見とれば、女がふいに顔を歪ませ耳障りな甲高い声を上げた。









「光くんて女子とあんま話せぇへんのに、さんとは毎日と言っていいほど話しとる! それにいつも見てたからわかるんや!光くん・・・さんの前やとよう笑っとるもん!!」









笑っとる・・・?
まぁ確かにといる時間は幸せで顔緩んどる気するが・・・一目で笑っとるっちゅうから緩んでたんか。
恥ずかしすぎるやろ自分。
女の言う衝撃の事実に不本意だが、顔が熱くなる。
だが、女はそんな俺を睨むと尚もキャンキャンと喚いた。









「あたしの方がさんより光くんのことずっと好きなのに!!せやのに・・・なして・・・なしてあんな普通な子がええの!?」

「は・・・・・・?」

さんなんて別段可愛えってわけやない頭も普通、なんの取り柄も無い普通の子やんけ!! ちゅーか普通どころか地味やろ!?そんな子のどこがええんや!!光くんに・・・あんな子合わへんよ!」

「・・・・・・が普通言うんやったら、お前は普通以下のブスでバカやな」

「なっ・・・・・・!?」

は可愛え。お前の目にあいつが普通に映ってようが、俺の目には可愛えとしか映らん。 まぁ別にお前にの可愛さなんてもんはわからんでもええんやけどな。 俺だけがあいつの可愛さ知っとけばええねん。それにあいつの笑顔が可愛いと思うんも俺だけでええ」

「っ・・・・・・」









俺がそこまで言うと、目の前の女は悔しそうに唇を噛んで黙りこくった。
誰がなんと言おうと俺はが可愛えと思う、これが俺の本心。
それにが俺に似合わへんのやない、俺がには似合わへんのや。
あんなに優しくて笑顔の可愛えに、俺みたいな・・・性悪とか生意気とか毒舌とかボロクソ言われる奴なんて似合うはずない。
やけど・・・別に好きでいるのはええやろ。
どう言われたって好きなんや。
ボロクソ言われる俺やけどのことが、好きや。
思えば思うほど、胸が満たされて温かくなる。
それを見ず知らずの奴にどうこう言われる筋合いは無い、ましてや・・・が悪く言われる筋合いもない。
ただ俺があいつを好きなだけで・・・一方的に思っとるだけや。









「せやからお前とは付き合えへん。ちゅうかお前のことなんて俺知らんし、好きな奴いなくても多分お前と付き合うのは無理やわ。わかったらさっさと消えろ」









久しぶりにこんなにもムカついて言葉を発した。
自分でもわかるぐらい、不機嫌で低い声で目の前にいる女に最低と言われる言葉を吐いた。
その女は真っ赤な顔をして「最低!!」と大きく叫ぶと俺の前から走り去っていく。
ちゅうか結局名前知らんかったわあの女。・・・まぁどうでもええけど。
あーそれにしても今ので大分俺の気分は最悪のどん底まで落ちた。
あの女とのやり取りもそうだが、何よりも・・・とまともに話せんせいやわ。
なんて薄ら寒いことを思いながら俺はテニスコートに向かった。
















(・・・って俺の精神安定剤と化してきとる気する・・・)