「・・・ほら」

「え。」

「べ、別にお前のために作ったわけじゃないんだからな!ただ俺が食いたいから作っただけなんだからな!」





そう言ってあたしの目の前にスコーンの入ったバスケットを差し出してきたイギリスを呆然と見つめる。 相変わらずのツンデレっぷりを発揮するのはいいと思うが・・・なんてことをしてくれたんだろう。 ふわりと香ってくるスコーンの香りはとてもいい匂いなのだが・・・ 味がとんでもないということをあたしはよぉく知っている。ああああどうしようかなぁ!冷や汗が止まらない。 ふと気付くとカチャカチャと紅茶の用意をしながらイギリスは鼻歌を歌っていた。 見たところによるとかなり機嫌がいいみたい・・・。 今日は会議があったから不機嫌になると思ったのに・・・ あ、珍しく会議がすんなり終わったからこんなに機嫌がいいのかな?





「紅茶も・・・ってなんだよ」

「へっ?い、いやいやなんでもないっす!」

「は?お前大丈夫か?」





あたしが考え事をしているうちに、 イギリスは紅茶を淹れ終わってカップを2つ両手に持ちあたしを不思議そうに見つめていた 。あたしは急いでイスから立ちイギリスからカップを1つ受け取ると、苦し紛れの引きつった笑いをしながら座る。 それに微妙な顔をしながらもイギリスもイスに座った。





「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・食べないのかよ」

「えっ?いやいや食べるに決まってんじゃん!だってイギリスの手作りだし!」





自分馬鹿・・・ッ!イギリスにそう言った瞬間もの凄い後悔の念にかられる。 なんで命を無駄にすることを言っちゃったんだろうなぁあたし!背中に汗がだらだら流れてきた気がする・・・。 軽く涙が溢れ出そうな目で前を見れば、イギリスがあたしの返答に対して 「そ、そうか・・・まぁ俺が作ってやったんだから当たり前だよな!」 などと嬉しそうな顔であたしに言ってくるもんだから、これもう食べるしかないよね! あたしは伸ばしたくない腕を伸ばして、イギリスが作ってくれたスコーンを1つ手にとる。 あぁ・・・いい匂いはしてるのに、なぁ。 過去の苦い思い出を思い出しながら、紅茶を左手に、スコーンを右手に持ち・・・口へ運ぶ。 ・・・お願いだから、そんなキラキラした目であたしを見ないでよイギリス・・・!!





「・・・ど、どうだ?」

「・・・」

「え、おい、うまいよな?」

「ま、あ・・・う、うん・・・」

「なんでだんだん目線が下がってくんだよ!」





うっ泣きそう・・・。口の中でもしょもしょする不思議な味のスコーンを紅茶で流し込む。まさしく味の大革命。 ・・・紅茶を淹れるのはうまいのになぁ。 壮絶なスコーンの後味に顔が歪んでいくのを感じ、一生懸命に紅茶を飲み込んでいく 。はぁ、予想以上に大きなため息が口から漏れた。 一口食べたスコーンをチラリと見てから、すぐさまイギリスに視線を移すとなんだか悲しそうな目でスコーンを見つめている。あれ、ちょっと・・・





「やっぱお前もまずいとか思うのか・・・?」





え、あれ?





「今回のは絶対にうまくできた、と思ったんだがな・・・」





いつも言われてるようなことなのにそんな泣きそうに顔を歪めるなんて、





「・・・けど、お前が食べてくれないなら作った意味ないな。悪い、捨ててく「美味しいよ!すごく美味しかったって!」

「食った瞬間めちゃくちゃ顔歪めたじゃねぇか・・・」

「ちっ違・・・わないけどそれはスコーンがちょっと歯にはさまって困っちゃったなぁ・・・み、みたいな?だから、あたし全部食べるから捨てるなんて言わないでッ!!」





それはものすごく反則なんじゃないの!?いつもとは違う反応を見せたイギリスに あたしは心の中ではんば叫びながらそう言うと、 スコーンが入ったバスケットを持ち上げようとしたイギリスの手を慌てて掴む。 そしてバスケットをテーブルに置き直した。 すると、あたしの行動に少し驚いて固まっていたイギリスは突然ニヤッと笑い「そうだよな。俺が作ったスコーンなんだからもちろん食べるよな」て言ってきやがりましたがちょっと待て。





「え、ごめっ・・・え?」

「食うって言ったんだからちゃんと食えよ。」

「いや、あ、はい・・・」

「ん、やっぱうまいな!」





切り替えが高速のイギリスくんがパクリと一口スコーンを食べて言った一言は耳を疑うものである。ニコニコしながら、「ほら、お前ももっと食えよな。だからそんなに痩せてんだよ。」とまだ食べ終わっていないというのに、もう1つあたしにスコーンを差し出してくるコイツは本気で殴ってやりたいと思う。









午後、ここ、
スコーンとあたしと味音痴。










「あー・・・(くじけそう・・・)」

「・・・あ!や、さっきのは別に今のお前に不満があるとか言ってるんじゃないからな!お前結構痩せてるから抱きしめた時、折れそうだからもっと俺的には肉を増やしてほしいんだよ!」

「あ、え、うん・・・(これいくつ食べれば日本兄さんとこ帰れるのかなぁ日本食カムバックつぅか日本に帰りたい・・・)」

「いや、でも、まぁ、い、今のでも十分可愛いけど、なッ!」

「あぁもうお腹いっぱ・・・えっ!?今なんて言ったの!?」

「ッもう一度スコーン作ってくる!」

「ちょっええええ!?(恥ずかしくなったからってこれ以上殺戮兵器作るの止めてよ・・・!!)」