午前2時。
本来ならもう寝ている時間だが、菊から借りたゲームが面白くて寝ないでずっとやっている。
結構いいとこまでやってきたぞ!あとは伝説の武器さえ揃えば完璧だ!
あと一息でクリアというところで、ふいに家の電話がけたたましい音を立てた。
それに肩を少しだけビクつかせ・・・はっはっはっ別に俺はビビッたわけじゃないからな!なんて誰に言うわけでもないけど、
そうぼやいてから受話器を手に取る。
「はいもしもし?今何時だと思ってるんだい?」
『あっ・・・ごめんなさい。やっぱり迷惑だったよね・・・』
「その声・・・もしかして、?」
『うん、そう・・・ごめんね、こんな夜遅くに・・・あの、切るね。ホントにごめん』
「えっ、わっ、待ってくれ!!大丈夫!大丈夫だから!どうしたんだい?君がこんな時間まで起きてるなんて珍しいじゃないか」
『いや・・・その、ね、眠れなくて・・・』
こんな時間になんだ!と少し腹を立ていたが、受話器の向こうの人物がとわかれば話は別だ。
彼女からのコールなら何時だって構わない。
それにいつもとは違う弱弱しい声に俺は心配になった。
ゲームのコントローラーを投げ捨て、が話す言葉を一言も漏らさず聞こうと耳に神経を集中させる。
「なんかあったのかい?怖い夢でも見た?」
『・・・うん、当たり。アルすごいね』
「当たり前だろ!のことはなんでもわかるさ!」
『ふふ、そっか』
大好きな子のことだから、俺は小さな変化だってすぐ気付ける自信がある。
そう言えばがまた小さく笑った。
が笑ってくれれば俺はいつだって温かな気持ちになる。
少しの間、が話し出すのを待つ。
カチコチと響く時計の音、耳元に微かに息を呑む音。
そして・・・俺の名前が小さく呟かれた。
すかさずなんだい?と返せば、ゆっくりと彼女の胸にある不安を話し出す。
『アルが・・・』
「俺かい?」
『・・・い、いなくなっちゃう夢見ちゃって・・・』
「いなくなる・・・、俺が?」
『・・・うん』
「・・・ぷっ」
『ア、アル?』
「ははっ全くは何言ってるんだい!俺がいなくなったりするわけないだろう!俺は国なんだからそう簡単に消えたりしないよ」
『・・・違うよっ!そ、そうじゃなくて、いなくなっちゃうっていうのは・・・アルが、私から離れてっちゃったってこと』
「?」
『夢のアルがね、私のこと嫌いだからもう二度と君とは会いたくないって・・・言ってて』
の夢の内容を知って、俺は暫し口を閉ざしてしまった。
あまりにも夢の俺は酷い奴で、俺とは似ても似つかないから驚いた。
俺がのこと嫌いって・・・そんなのありえなさすぎて全然笑えないよ!
「俺はが好きだよ。」
『・・・え、えぇ!?』
「だから君が見た夢の俺は俺じゃない偽者だ!」
『え、えええ、ア、アル?それホント?』
「あぁ!俺はが大好きで、今だって電話じゃなくて会いたいくらいさ!」
電話の向こうでまた小さく息を呑む音が聞こえた。
彼女が望むのなら俺はなんだってしてあげたい。
この気持ちは紛れもなく真実だ!
『アル・・・』
「なんだい?」
『私もアルに会いたいよ・・・』
「わかった!それじゃ今すぐ君の元まで行くよ!」
言い切って俺は勢いよく受話器を電話に戻す。
リナが何か言っていたかもしれないが、今は彼女に会いに行くのが先決だ!
俺は床に置きっぱなしだった上着を掴むと、まだ星が瞬く夜へと飛び出た。
君が僕を呼ぶならば、僕は君の元へ全力で行くよ