最近のスーパーは本当に助かる。
24時間っていいよね!バイトが11時で終わりでも買い物できるんだもん、これを素晴らしいと言わずなんと言う!
しかも夜遅いと値引きされてるのもたくさんあるしで・・・最高だわ!
同居人が一人増えるだけでやっぱり食費とか高くなるわけだから、なるべく安いもの安いものと考えてる私にとってはとても助かる。
いや、私一人だけでも安いものしか買わないけどね。
さて、確か冷蔵庫の中身がほとんどないから・・・買わなきゃな・・・あ、そういえば牛乳なかったっけ。
「・・・あ、そういえば財布家だっけ」
チッと自分に舌打ちをして、スーパーに背を向ける。
そうだ、そうだった。何買おうとか考える前に財布を取りに行かなきゃいけなかったんだ。
今日はたまたま財布を忘れてたことを忘れてた。
私は急ぎ足でアパートへ帰る。
(私もそろそろ年かなー・・・)
***
「俺も、行く」
「いやいやいいです。私一人で行きます」
「ダメだ。今何時だと思ってるんだ。女一人で出歩く時間じゃないぞ」
財布を持ち、さぁ行くぞ!と意気込んだのはいいもののディーノさんに腕を掴まれ外へは踏み出せなかった。
真剣な顔で私の心配をしてくれてるのはよくわかる。
だけども、私的にはディーノさんと一緒に外に行く方が危ないのだ。
彼と共に生活をし出して早3日。この3日で私は多くの怪我をした。主にディーノさんのおっちょこちょいに巻き込まれてだ。
いくら警戒しても絶対に巻き込まれる。これは何の仕打ちなの?と何度も思った。
私は引き下がる気配のないディーノさんをじと目で見るが・・・これは・・・私が折れるしかないのかな?
「いやーあのーほら!留守番してくれないとその間に誰か来ちゃったらどうするんですか!」
「俺が留守番してたってどうせ出れないだろ。居候条約その4、家にいる場合は誰が来ても返事をしてはいけない開けてはならない居留守を使う(宅配便は除く)」
「・・・・・・えーと、」
「俺はお前が心配なんだ。に何かあったら・・・俺はどうすればいい?」
そ、そんなことを真顔で言わないでくださいよ・・・!!
ディーノさんは顔がとんでもないイケメンだからそ、そんなこと言われるとクラッてきちゃいます!
ただ私を心配しての言葉だとしても、私は顔を赤くせずにはいられない。
ど、どうせこういう言葉に慣れてないよ!彼氏いない暦=私の年齢さ!
急に押し黙った私を不思議そうに見てくるディーノさんの視線から逃れるようにそっぽを向いた。
「わ、わかりました。わかりましたよ!い、一緒に来てください・・・買い物」
「おう、もちろんだ!」
結局私が折れるんだよね・・・まぁ、仕方ないか。
少し項垂れてから今度こそ外に出る。
後ろでディーノさんは呑気に「に何かあったら俺飯とか作れねぇからなぁ」とか言っていた。
・・・・・・ちょっと、さっき照れた私死んで。
***
スーパーにたどりつき中を物色する。
さぁて、今日はどれが安いかなぁーなんて主婦じゃないのに主婦じみたことを考えて野菜とかを手に取った。
決してお金に余裕があるわけではないので、なるべく食費は抑えておきたい。
けど、安すぎて品質が悪いものは選びたくない。
うーん・・・ここは難しいところだよねー・・・。
「なぁ、明日は何作るんだ?」
「んー・・・特には決めてないですね。ディーノさんは何か希望あります?」
「そうだな・・・が作ってくれるならなんでもいいが・・・」
・・・こういうことをさらりと言うディーノさんに周りにいた人たちがぴくりと反応する。
そしてこそこそと「あの人かっこいい」とか「あの人の隣にいる子って彼女なわけないから妹さんとかかしら」とか言いたい放題言っていた。・・・聞こえてるんだからね!
ていうか、私がディーノさんの妹っていうのも無理あるでしょ!この人ばっりばりの外人だし!私ばっりばりの日本人じゃん!
ありえないでしょ!・・・まぁ彼女ってのもありえないけどね!
悶々としながら野菜を手にとっては戻しの作業を繰り返していたら、ポンっと手のひらを叩く音が聞こえた。
振り返るとディーノさんが思いついた!みたいな顔で私を見てる。
な、なんだろ?
「明日の夕飯はにくじゃがとかどうだ?日本料理と言えばやっぱりそれだろ!」
ディーノさんがじゃがいもをカゴに入れだす。
私の返事を聞く前に、もう決定みたいな。作るの私なんだけどな・・・。
けどまぁ作れないこともないし、いいか。
とりあえずじゃがいもをカゴいっぱいに入れていきそうなディーノさんを止めて、にくじゃがに必要な材料を買うため他の場所を見に行く。
途中、これはなにあれはなにの質問攻めを受け相当疲れたけどね!
そんなこんなで無事買い物を済ませスーパーを出る。
会計時にやけに店員さんがディーノさんを見ていたことはこの際忘れよう。
「さー早く帰りましょうか・・・うわ、もう12時過ぎてますね」
「もうそんな時間か・・・ほら、。やっぱりそっちも持つ」
やっぱりそっちも持つ、というのは私が持っている買い物袋。
野菜やら肉やらを袋に詰めているとき、ひたすら荷物は俺が全部持つと言ってくれたが荷物はちょうど2つあったのでディーノさんと私で1つず持つことにしたのだ。
私は大丈夫だと言っても、やはり不満らしくずっと俺がそれも持つと言っている。
どうしたものかなぁなんて思いつつディーノさんの前を歩き出すと、ふいに私の手から買い物袋を奪われる。
「ちょ、ディーノさん!?」
「女のお前にとっちゃ重いだろ?」
「それぐらい持てますよ!!」
「ん?別に気にすんな。これぐらいどうってことないしな」
それに、こういう時ぐらい俺に頼ってくれよ。とシュンとしながら言われてしまい・・・私はもう何も言えなくなった。
本当に重くなくて大丈夫だったから持ってたんだけどな・・・私ってそんなにか弱く見える?
ちょっとした疑問を抱きつつ、2つの買い物袋をぶら下げ私より先に行くディーノさんを追いかけた。
さん。
いつもは早歩きですぎる夜道をゆっくり進む。
こんな風にここ歩くのは初めてかもしれない。
電灯があまりなく、とても暗い道で、だけどそれ故に星がすごく輝いて見えて綺麗だ。
隣にいるディーノさんもそう思ったのか、小さく「うわ・・・すげえ綺麗だな・・・」と呟いていた。
やっぱり星はいつ見ても綺麗だから好き。今度星座の勉強をしてみようかとも思う。
ふと隣のディーノさんを見上げた時に「ディーノさんって背高いから私より星を近くで見れていいですね」と零すと、
ディーノさんは一瞬きょとんとしてからハハッと笑って私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「んじゃ、肩車とかするか?」
「や、やめてくださいよ。私そこまで子供じゃないですからね」
そっか、と言ってディーノさんは笑顔を浮かべたまま、また星空を見上げた。
(ディーノさんって、笑うと幼いんだなー・・・なんて新たな発見)