「土浦、」

「ん?どうした?」

「お前・・・なんで可愛くなくなったの?」

「は?」



休憩時間に入り、次の授業の準備をしているの俺の元に、 隣のクラスからやってきた。 だが、真顔でいきなり意味のわからないことを言ってきたので 思わず眉間に皺が寄ってしまった。


「お前、なに言ってんだ?」

「日野ちゃんに土浦のちっさい頃の写真を拝ませてもらったんだけどさ、」

「拝むなよ」



偉そうに俺の前の席に座り、とんでもないことをぬかしやがった。 日野に俺のちっさい頃の写真を見せられたらしい。 なにやってんだ、日野。 この場にいない日野を軽く恨みながら、頭を抱えてため息を溢す。 よりよってコイツに見せるとは・・・っておい


「・・・なにやってんだよ」

「んー・・・土浦の可愛いとこどこだろと思って」

「んなもん、ない」



何を思ったか知らないが、いきなりは俺の頭を撫でてきた。 ぐしゃぐしゃ髪の毛を掻き乱す。 すんげー迷惑。



「おい、いい加減にしろって」

「あ、ごめん。なんか意外に髪の毛柔らかかったから、つい」

「・・・」



俺に言われて、ハッとしたかのように手をどかす。 そして今度はうーんと唸りながら、首を傾げた。 今度はなんだ。


「土浦ってさ、」

「なんだよ」

「今思ったんだけど、」

「だから、なんだよ」

「結構かっこいいね」

「っはぁ!?」



何もかもが唐突で意味がわからない。 ・・・・・・・・・今、なんて言った?コイツ。 かっこいい?誰が?は? これには思わず固まる俺。 いや、でもそれが普通の反応だと思う。


「うおーい、土浦ぁ?どしたー?」

「・・・いや、お前、今なんて言った?」

「・・・うおーい、土「そこじゃねぇよ。その前。」

「・・・結構かっこいい」

「・・・誰が?」

「土浦。」

「指さすな」



ホント、あまりにも唐突すぎて不意討ちで俺は頭痛がした。 コイツ・・・なんでこんなに馬鹿で可愛いんだ・・・?マジで。 クラッときてしまった俺は机にうつ伏せになる。 すると、は俺の頭をペシペシ叩いてきた。


「土浦ー?土浦ー?なに、具合悪いのー?」

「・・・ちげぇ」

「じゃどしたのさ」

「・・・なんでもねぇよ。そろそろ時間だろ?早く自分の教室戻れ」



顔を上げず、手でシッシッと教室に戻るよう促す。 少しの沈黙の後、ガタッ・・・前から席を立ち上がる音。 と同時に俺の机に何かが乗る音がした。


「・・・?」



顔を軽く上げて見てみると、すぐ目の前にペットボトル。 不思議に思いながら、ペットボトルを手に取り首を捻ると


「土浦ー感謝しろー!あたしのおごりだ!」



大声が聞こえたのは教室のドア付近で、慌てそちらを向く。 そこにはが俺に向かって満面の笑みをむけていた。 それから、じゃと片手を上げてから背中を向け、自分の教室に戻っていった


「恥ずかしい奴・・・」



前髪をくしゃりと掴み、ぼそっと呟く。 ちらっとが出ていったドアを見てから、ため息。







「・・・はぁ」 「お、土浦。どうした?顔赤いじゃん。なに、さんとなんかあった?」 「うるせー・・・」 前の席の奴が帰ってきた途端、俺の顔を見るなりニヤニヤしながら言ってきた。 物凄くムカついたが、今日の俺は微妙に機嫌がいいから殴らないでいてやるよ。 そんなことを思われてるとも知らず、俺の目の前の奴は呑気に鼻歌を歌っていた



しばらくして先生が入ってきた。 俺は未だに握っていたから貰ったペットボトルを急いで鞄にいれる。 あ、そういえば・・・







アイツ何しに来たんだ?











残された俺と熱とペットボトル



(お前、さっき何しにきたんだ?俺の教室に)
(んお?あぁあれ?)
((んお?って・・・)おう)
(なんか今日、土浦元気なかったから)
(は?)
(だから押し掛けてみました)
(・・・はぁ、ホント馬鹿だな(そして可愛い))
(おまっ、励ましにきた友達にそれはないだろっ)
((友達・・・)まぁいいか・・・今はそれで)
(は?)
(なんでもねぇよ。)
(キモい土浦)
(殴るぞ)