ちゃんってさ、新八っつぁんのどこがいいの?」

「・・・はぁ、!?」








どうも、俺平助です。
幼馴染の千鶴に絶賛片思い中のピッチピチの高1。
ちゃん(ちゃん付けだけど俺より年上っていうか先生)は話しやすく俺の良き相談相手で仲がいい。
そんなちゃんにも好きな人がいる。
同じ教師で、体育担当の新八っつぁんだ。
新八っつぁんは、すっげー面白くて馬鹿で乱暴だけど、優しいとこもある兄貴的な存在でみんなに好かれている。
二人は俺と千鶴みたく昔からの幼馴染で、周りもそれを知ってるから新八っつぁんが何かやらかすと必ずちゃんに面倒ごとが振りかかったりしていた。
土方先生も左之先生でさえも新八っつぁんのことで何かあるとすぐちゃんに押し付けてる。
だから二人でいるとこでよく見かけるのは新八っつぁんがちゃんに怒られてるとこ。
たまにちゃんは新八っつぁんの保護者に見える(まぁ、そんなこと言ったらちゃんに怒られるけど)
毎回毎回怒られる新八っつぁんも新八っつぁんだけど、毎回毎回怒ってるちゃんもちゃんだ。
何回怒られても学ばない新八っつぁんは本当に学習能力がないんだなーって思うけど、何回も新八っつぁんに怒るちゃんは新八っつぁんのことが好きでほっとけないからだと思う。
そう考えるとちゃんって可愛いよな。(ま、一番は千鶴だけど!)









「で、結局どこがいいわけ?」

「ちっ、ちがっうわよ!別にあんな馬鹿たれのことなんて好きじゃないからね!?ただの腐れ縁で面倒見てやってるっていうかさぁ!」

「そういや今日の放課後女子に体育館裏に呼び出されてたような・・・」

「えぇ!?」

「その子確か新八っつぁんのこと好きだとか言ってたっけ」

「っ・・・で、でもほら生徒でしょ!?女にモテなくて飢えてる新八でもさすがに生徒には手は出さないわよ!・・・よね?」









俺が言った言葉にわたわたと顔を赤らめては次に軽く青ざめて必死に弁解する姿はとてもじゃないけど年上になんか見えなくて可愛かった。
もちろんさっき言ったことは嘘。
新八っつぁんモテるけど女子に呼び出されてるとこなんて見たことないし、聞いたこともない。
左之先生が言うには『モテるけどモテない男』らしい。
意味は、モテることにはモテるけど疎いせいで相手からの好意に気付かず終わってしまうタイプ、とのこと。
確かに、ちゃんの新八っつぁんへの尽くしよう(世話焼き)はすごいのにまったく気付かないもんな・・・。
ちなみにちゃんが新八っつぁんのことを好きなことはほとんどの人にバレてる(前、総司にそのネタでたかられてたっけか)
千鶴も応援してるから俺も応援してる。いや、それがなくても応援してるけどな。
初々しく可愛いちゃんの恋を応援しない生徒は、はっきり言ってこの学校には存在しないだろう。
新八っつぁんのことを好きな女子はいるけど、ちゃんだったらいいと言う子ばかりだ。
・・・今考えるとちゃんって男女問わずめちゃくちゃ好かれてるよな。
俺の言う言葉にどんどん不安気にそわそわし始めたちゃんに笑いを漏らしそうになりながらも、追い討ちをかける。









「でもさー新八っつぁんも教師と言えど男だからさーわかんないじゃん?し・か・も、その子学校で一番可愛いとか言われてる女子だった気がするけど・・・そんな子に迫られたらいくら新八っつぁんでも、なー」

「〜〜〜っ、新八はそんな男じゃないもの!!いくら新八が全然モテないからってそこまで落ちてない!!」




「・・・おい、だぁれが全然モテない、ってぇ・・・?」




「あ、新八っつぁん」

「し、新八・・・!」









ガラリと音楽室(ちゃんは音楽教師)の扉が開いて、新八っつぁんが口元をヒクつかせながら入ってきた。
ちゃんはハッとしたように口元を押さえて、大きな目を見開き新八っつぁんを見ている。
俺はというと、面白いことになってきたなーとか思ってたりする。









「お前な、すげー失礼だぜ。まぁ、間違っちゃいねえけどよ・・・モ、モテねぇのは確かだし?つーかどういう話してたんだよお前等」

「んー・・・秘密、だよなーちゃん」

「う、うん!そ、それよりなに?ここに来たってことはまた面倒事持ってきたんじゃないでしょうね?」

「俺が毎回面倒事持って来てるみたいな言い方よせよなー・・・・・・今日は、その、千鶴がと平助が音楽室に放課後引きこもってることがあるっつーからよ、まぁその、なんだ、何やってんのかなーみたいな?」

「えっ千鶴が!?も、もしかして俺たちのこと疑ってんのかな!?これちょ、ヤキモチ!?」

「平助くんはホント千鶴ちゃん好きねー・・・」

「まぁね!んじゃちょっと千鶴んとこ行って誤解ときに行かっ、あっちゃん今日もありがとな!明日もよろしく!あとついでに新八っつぁんも教えてくれとありがとなーじゃ!!」

「えぇ!?嘘っ!?この状況で置いてくの!?」

「頑張れ!ちゃん!!」


ピシャン!








早口でそう捲し上げ急いで音楽室から出て、息を殺して音楽室の扉に張り付く。
そしたら携帯が震えたので慌てて取り出すと千鶴からのメールで「私も今からそっちに行くね」とのことだった。






・・・実をいうと、今日は千鶴と協力してちゃんと新八っつぁんを何とかくっつけようと作戦を立てていたのだ。
俺はまぁいつも通りの恋愛相談室だったんだけど、 千鶴の方は違くてちゃんと俺が怪しいみたいな嘘を新八っつぁんに言ってもらいやきもきさせるというものだった。
(千鶴に誤解されないようにちゃんと俺とちゃんはそういうんじゃないけどなということを嫌と言うほど言っといたけどね)
つまりは、作戦は見事成功したわけで、万々歳みたいな?
新八っつぁんもなんだかんだちゃんのこと大事にしてるっつーか、もう好きだろ!とか思う行動をしたりする。
そんな新八っつぁんに気付いてないのはちゃんだけ。
ちなみにちゃんの想いに気付いてないのも新八っつぁんだけ。
二人そろってにぶちんだから困るよなー。
変に馬鹿正直なくせして意地っ張りで素直じゃないんだよな二人ともさ!
















そんな二人にキューピット!!
ってな!

















・・・あ、左之先生の言葉もうひとつ忘れてたや。
新八っつぁんは『自分の恋にも疎いからモテない』ってね。
つーか、俺もダメな男にはなりたくないから、いい加減千鶴にはっきり言おうかなーなんて二人を見てたら思いましたとさ。