むりむりむり!!
っむりです!!!
俺の彼女はそう言うと、俺の前から全力疾走で走り去って行った。
残された俺は呆然とその場に立ち尽くすしかできなかった。
・・・むりって言われた。
しかも4回も。
・・・俺、やばい、かなり凹んできた・・・。
それからどうやって自分ん家に帰ったかわからない。
気付いたら部屋にいて気付いたら朝だった。
一瞬、風呂入ったか?とか思ったけど、パジャマを着ていたのでちゃんと入っていたらしい。
やべ全然記憶ねぇや。
昨日のことがショックすぎて何もかもが曖昧だ。
ていうか、今何時だ?
外まだ暗くね?
・・・・・・4時?
・・・4・・・4回・・・4・・・嫌な数字だなぁ。
とりあえずまだまだ時間あるから二度寝しようとしたけど、すっかり目が覚めてしまったらしく眠気は一向にやってこない。
・・・起きるか。
のそりとベットから這い出て洗面所に向かう。
ざっと顔を洗って鏡を見れば、なんともいえない情けない顔をした自分がいた。
自分の顔はかっこよくもないし不細工でもないと思っていたのだが・・・これはひどい。
そして母さんが起きてくるまで、ただボーっとイスに座っていた。
「え、円堂・・・?」
気付いたら学校で、気付いたら自分の席に座ってて、気付いたら風丸が目の前にいた。
風丸が心配そうに俺の目の前で手をヒラヒラさせる。
なんだよ、今俺手を振る気分じゃないぞ・・・。
「どうしたんだよお前・・・なんか元気ないぞ?」
その一言に、はぁと溜息を零す。
うん、俺自身もそう思う。
そんな俺の様子に豪炎寺や鬼道も俺の席までやってくる。
口々にどうした?大丈夫か?何があった?と聞いてきて、俺は正直泣きたくなった。
こんなにも悩んだり凹んだりするのはサッカー以外で初めてだ・・・。
「なー・・・」
「ん?」
「好きな奴とキスしたいって思うのって普通だよな?」
「・・・は?」
「・・・円堂、お前・・・好きな奴いたのか?」
「?・・・あれ?言ってなかったか?」
「知らないな」
「あーそっか・・・俺、と付き合ってんだ」
「はぁ!?」
机に項垂れながら俺の今の悩みを言うと、信じられないという感じの声が聞こえた。
そ、そんなに意外だったか?
まあ・・・俺っていつもサッカーサッカーだったから信じられないもしょうがないのかもなあ・・・。
うんうん、一人で納得していれば、勢いよく肩を掴まれ身体を起こされた。
なんだなんだと目をぱちぱちしていると、風丸がすごく険しい表情で俺を見ている。
ちょ、豪炎寺も鬼道も顔怖ぇよ!
「な、なんだよ・・・」
「いつの間に彼女なんて作ったんだ・・・?」
「えー・・・っと、3ヶ月前、かな?」
「お前から告白したのか?」
「いや、から」
「なんでと付き合いだしたんだ?」
「なんでって・・・そんなの俺ものこと好きだったし・・・」
「そうだったのか?」
「うん」
3人の質問にたじろぎながらも全部答える。(だってこいつら目がマジすぎる!)
すると肩から手をはなしたと思ったらブツブツと「あの円堂に先を越されるなんて・・・」「むしろ円堂が恋愛感情というものを理解できるとは思わなかった・・・」
「円堂の頭の中はサッカーだけじゃなかったんだな・・・」とかなんとも失礼なことを言い出す。
お前ら俺をなんだと思ってんだよ!
というか、俺の最初の質問に対する答えはないのか!?
ムッスリと3人を見ていると、俺の不満が伝わったのか鬼道が俺に「そういえば、さっきの話に戻るが・・・どういう意味でお前は言ったんだ?」と言ってきた。
いや、どういう意味も何もそのままの意味なんだけど・・・とりあえず、昨日起こったことを3人に話す。
「むり、か・・・それはきついな」
「きつすぎて昨日の記憶ほとんど曖昧だぜ!ははっ!」
「笑えないぞ円堂・・・!」
風丸が俺の肩を叩き涙ぐんでいる。
豪炎寺が俺の肩を叩き顔をそらす。
鬼道が俺に向けて親指を立てた。
はたから見たら異様な光景だろう。
でも、慰めてくれてありがとな!
そう意味合いを込めて俺も親指を立てる。
やべえマジで泣きそうだ。
「あのう・・・円堂くん、いますか・・・?」
「!!」
そんなやり取りをしてる中、小さいが俺の耳には確かに聞こえたの澄んだ声。
ぐりんと声のした方を向けば、教室の入り口で控えめに立っているがいた。
俺はすぐさま席から立ち上がりのもとへ駆け寄る。
昨日のショックからは立ち直れてはいないが、が俺を呼んでいるんだ。行かないわけがない。
後ろから「頑張れ円堂!」「負けるな円堂!」「お前ならきっと大丈夫だ」と声援が・・・お前らホントにありがとな!俺負けない!
を目の前にして昨日の惨劇ともいえる出来事を思い出しクラッとしたが、そこは踏ん張りいつも通りに話しかけることにする。
がんばれ俺。
「よっ!がここに来るの珍しいな」
「あ、うん・・・私、円堂くんに謝りたくて・・・」
「謝る?」
「うん、き、昨日はごめんね・・・」
俯き気味にぽつりと言われた言葉の意味を理解するのに数秒かかり、返答が遅れた。
その返答も「お、おう、いや、べ、別に、気に、してなんか、ないぞ!」と情けないことにどもったあげく声が裏返ってしまった。
うわホントに最悪だ。
恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じていると、がまたもや消え入りそうな声でぽつぽつと話し出す。
「あ、あのね、昨日の・・・い、嫌だったわけじゃないの・・・違うの、そうじゃなくてね、」
嫌だったわけじゃない、たった一言でさっきまでの憂鬱感が消え去った。
よ、良かった・・・心底そう思う。
もしこれで俺とは付き合えないむりです別れてくださいって言われてたら本気でやばかった。
今日の練習でボール全部顔で受けてるとこだった。
安心と感動とまだの言葉に続きがあると思い何も返さず黙ったままでいると、ふいにが上目遣いで俺をちらりと見てきた。
その行動にドキッと心臓が飛び跳ねる。
少しばかし目が潤んでて余計にドキドキして、だんだん顔だけじゃなく全身が熱くなってきた。
「その・・・その、円堂くんと一緒にいるだけでもドキドキしすぎで倒れそうなのに・・・そ、そんな・・・キ、キスなんてできないって思って・・・っだから昨日円堂くんから逃げちゃって・・・あのっホントにごめんなさい!」
顔を真っ赤にして言ってくるに俺はどうしようもなく抱き締めたい衝動に駆られた。
そんなこと言われたら、もっと我慢できなくなる・・・!
グッと拳を握り締めて、爆発しそうな脳内を一生懸命に落ち着かせようとする。
だけどはそんな俺の苦労を知ってか知らずか、俺の我慢を一発でぶち壊す一言を言った。
「でも、き、嫌いにならないで・・・私、ちゃんと今度は・・・が、がんばる、から・・・!」
「っ、!」
「へっ・・・・・・、っ!?」
「俺、こんなにものこと好きなんだから嫌いになるわけないだろ!」
「え、円堂くん・・・!!」
無理でした。
があまりにも可愛くて可愛いこと言うから、我慢しきれず教室の入り口でを思いっきり抱き締めてしまった。
俺の腕の中であわあわと慌ててるもまた可愛すぎて可愛すぎてつい抱き締める腕に力が入る。
だけど小さく「痛いよ、円堂くん・・・!それと、はず、恥ずかしいからそろそろ離れて・・・っ」と言われたので渋々、を離した。
「び、びっくりした・・・っ!」
「わ、悪い・・・が可愛すぎてつい・・・」
「!!!バカ!!」
「あっ、!」
俺の言葉に耳まで真っ赤にしてすごい速さで昨日と同様、俺の前から走り去って行く。
へと伸ばした手はの腕に掠りもしなかった・・・アイツすげーな風丸並みに速いんじゃないか?
またしてもに逃げられてしまったが、今度は凹んだりしない。
今の俺は昨日の俺とは違う・・・って言うのも、の気持ちをちゃんと知ったからだけどな!
はーホントアイツ可愛すぎで困る。
耳まで真っ赤にしてたを思い出し顔を緩ませていると、肩をぽんと叩かれた。
ん?と振り返ると、風丸がニコリと笑いながら俺の肩に手を乗せている。
???
疑問符を頭の上でいっぱい飛ばしていると風丸の後ろにいた鬼道がぽつりと、
「リア充は爆発すべきだな・・・」
と呟いた。
・・・りあじゅうってなんだ??
意味がわからず首を傾げていると豪炎寺が小さく溜息をつくのが聞こえた。