「金ちゃん、どこ?」
「ここに居る」
そう言って、不安げに辺りをキョロキョロしていたの頭にポンッと手を置いた。
そうすれば何も写さないビー玉みたいな目は緩く細められる。
彼女の目は、もうだいぶ前から機能していない。の綺麗な瞳には俺は映らない。
そのことが悲しく思うが、が頼るのは俺だけだと思うと嬉しくなる。
床に右手を這わせ、俺の居場所を探す。
の小さな右手を撫でていない方の手で包み込むように握ると、は優しく微笑んだ。
かわええなぁ、小さくに向けて呟けば、ほのかに顔を赤らめる。
そして顔を俯けるのだ。そんな仕草1つ1つが愛おしくてたまらん。
「、好きや」
「……金ちゃんってさ、」
「ん?」
「そ、そういうこといきなり言うから、その…恥ずか、しいんだけど……」
なんなんや、この可愛ええ生き物は。
心の中だけでため息と共に呟く。
口に出せばはさらに顔を赤らめて、俯いてしまうだろう。
そんな可愛らしいことをされてしまえば、俺の理性が保つかどうかわからないのでここはあえて口に出さなかった。
本当には可愛すぎんねん……これじゃ俺の心臓がもたん。
「金ちゃん…?」
急に喋らなくなった俺にが不安そうに、綺麗な瞳を曇らす。
左手で右手を握る俺の手から、腕、顔をの可愛い小さな手が触れていく。
は俺の存在を手のひらで確かめながらゆっくりと目を閉じた。
「金、ちゃん?」
「ん……?」
俺の名前を呼ぶとき、の睫が微かに揺れる。
そっと顔を近付けて、俺に触れているの左手首を掴む。
少しでも俺が力を入れたらこの細い手首はすぐに音を立てて折れるだろうな、と思う。
グイッとの手首を手前に引く。
すると簡単には俺の方に傾いた。が俺の胸で驚いたように目を見開いて固まっている。
「、」
耳元で名前を呼べば、ビクリと肩を震わせて顔を上げる。
ほのかに色付く頬に小さく口付けを落とすと、上擦った声で俺の名前を呼んだ。真っ赤になったの顔。
コツンと額を合わせたら、の瞳には俺がいっぱいに広がる。
俺の瞳にも、今はがいっぱいに広がってる。これだけでとても幸せだと感じた。
例え、
僕が君の
瞳に映らなくてもいい
僕が君を
瞳に焼き付けるから
(せやからいつまでも一緒に居よな)