「え、」

「・・・」









いつもデートの時に行く公園のベンチに私は座っていた。目の前に立っているのは大好きなうらちゃん。けど、今のうらちゃんにはいつも私に向けてくれる優しい眼差しはなくて、あるのは冷たい眼差しだけ。こんなうらちゃん知らない・・・この人は一瞬誰だろう?という思いがよぎる。(この人は、)確かに私が、誰よりも大好きでしょうがない人なはずなのに、知らない人みたいに感じて初めてうらちゃんが怖いと思った。足が震えて、息が苦しくて、うまく笑えない。表情をまったく変えないで物みたいに見つめてくる、そんなうらちゃんの視線に耐えきれず、俯く私。 それに、さっきうらちゃんはなんて言ったんだろう・・・?ぐるぐるする頭。必死に考えても、何も答えは出なくて、言葉が出ない。どうしよう、なんか言わなきゃいけないのに・・・。胸がキュッとしてすごく、痛い。しばらく黙っていると、頭上でため息が聞こえた。(あぁ、早く何か言わなきゃ・・・)









「ぁ、えっ、とごめんね、えと、・・・うらちゃんの言ったことがよく、わかんなかったんだけ、ど・・・」

「・・・はぁ。わからないんだ?」

「う、ん・・・」

「僕はね、別れよう、って言ったんだよ。・・・君のそういう理解力が足りないところも嫌になったんだよね」

「う、らちゃん」









顔を上げた瞬間、激しく後悔した。呆れたような表情に、彼の言葉に、私の時間は止まった。ただ呆然とするしかなくて、そんな私を見てうらちゃんはまたため息をついて、悲しいとか苦しいとか思う前に疑問ばっかり浮かんできて・・・。 だって、昨日は普通だったんだよ?昨日はうらちゃんと一緒にデートに行って、いっぱいうらちゃんにぎゅってしてもらって、大好きだよっていっぱい言ってくれたよ?いっぱいいっぱい話して、いっぱいいっぱい笑ったんだよ?いっぱい、うらちゃんは私に愛をくれたよ?いつもみたくうらちゃんとすごく幸せな時間を過ごしたのに・・・なのに、どうして・・・? 視界がだんだん歪んできて、息苦しくなってきた。鼻の奥がツーンとして、やだ、私うらちゃんの前で不細工な泣き顔さらしたくないのに、・・・これ以上うらちゃんに呆れられたくないのに、嫌がられたくないのに・・・こんなに、うらちゃんのこと好きなのに、









「泣かないでよ。面倒くさいな」

「っふ、ごめ、なさ・・・っ」

「・・・もう僕は帰るよ。女の子待たせてるんだ」

「うっ、」

「それじゃ」









いやだ行かないで、なんて言葉は喉の奥にひかかって、出ることはなかった。そして、うらちゃんが去っていく。私の前から、私の隣から、私の想いから、うらちゃんが離れていこうとする。そう思ったら我慢してた涙がぼろぼろ私の目からこぼれてきた。うらちゃんの後ろ姿が歪んだ私の視界で揺れている。嗚咽も止まらなくて、息ができなくて吐きそうになる。いっそこのまま吐いた方が楽なんじゃないかと思ったけど、吐けなかった。うらちゃんへの想いも一緒に吐いてしまいそうで、嫌だった。誰よりも何よりも大切で愛してるの。私にはうらちゃんだけしか、









「うら、ちゃん・・・うらちゃん、うらちゃん・・・!!」









もうあなたの名を何度呼んでも、届きはしないのですね




















私の望みはなんですか?
ただ一人、
愛しいあなたの隣にいることです


(それだけで、私の世界は色づいていたの)