「……」
「?」
「…手を」
「なに?」
「だから、手を出せ、と言っているではないか」
「いやお前それ今初めて言ったからね」
手を突き出して早くしろとばかりに眉間にシワを寄せられたが、いや、そんな唐突になんだと言うのだ。
よくわかんないからシカトして本に視線を戻す。
ちょうどいいとこなんだよね今。
「……」
「……」
「……、」
「んー」
「手を出せ」
イラッ。なんでこいつは毎回主語がないんだろう。
あとね、プリンスだかプリンだか焼き鳥だか知らんけど、人に頼む時の態度がなってないのよね。
私は読んでいた本からジークに目線を移した。
ちょっとばかし不機嫌そうな雰囲気を醸し出していて、いまだに手を差し出している。
私が差し出すまでずっと手を差し出してそうな勢いだ。なんてめんどくさい……。
だけど、いつまでもこんな状態でいるわけにもいかないので、ため息をこぼし渋々左手を差し出す。
「……」
「ほら、出したよ」
ジークは私の差し出した手を見て、満足そうにふむと言いそっと私の手を握った。
真っ白い手がふにふにと私の手を遊ぶ。なんだこれ。
ジークの不思議な行動に目を丸くしていると、今度は私の前に屈んだ。
でも手は放してくれない。
こいつマジ意味わかんねー。
「ちょっなんだし」
「ふむ」
「ふむじゃないから」
「の手は柔らかくて温かいな」
「そりゃあ……生きてますからね」
ぎゅっと力を込め、ジークの手を握る。
ジークだって手柔らかいし温かいよ美味しそうだよ。うん。
しばらく握りあっているとジークが思い出した様に声を漏らした。
「あ」
「あ?」
「あまりに触り心地が良いので忘れていた」
「なにをさ」
「、」
「ん?」
ジークがゆっくり私の手を持ち上げる。
その行動の意図が全くつかめない私は首を傾げるばかり。
とりあえず次の行動を待っていると、ジークがふと顔を上げた。
青い眼がしっかりと私を捉える。
「…?なに?」
「、お前の未来を私にくれないか?」
「…………は?」
ジークはそう言うと、私の手を口元に寄せる。
驚きのあまり固まる私。
数秒たち頭がゆっくりジークが言った言葉の意味と行動を思い出す。
じわじわと熱を持ち始めた頬に気付いて慌てジークから左手を救出すり。
そこでようやく、固まっていた体が事の重大さに気付き、
無意識の内に私は右手に持っていた本を
ジークの頭に振り落としていた。
「なっにしとんじゃ貴様あああああ!!」
「ぐふぉッ!!」
ジークは予想していなかった反応だったのか全くのノーガードでまともに食らった。
ざまぁみろ!
ただ黙ってジークは頭を押さえてしゃがみこむ。
うめき声がすごい聞こえるけど、知らないぞ!
そして私は赤いであろう顔を本で隠して、早足でジークのとこから早々と逃げ出した。
鼓動音がよく聞こえた日
(……マジうるさいよ私の心臓!)