何気なしにウラちゃんの横を通って空いているテーブルへ向かおうとした。


が、ウラちゃんの横を通った瞬間、プチッという変な音が聞こえ立ち止まった。
何かなと思って周りを見渡しても、みんなそれぞれコーヒーを飲んでたりとのんびりしてるだけ。


でも、急になんだか……非常に胸元が開放的だ。


その感覚に首を傾げながらもとりあえず座ろうと歩き出すが、ナオミちゃんにストップと声を掛けられ停止。
なに?そう言って振り向こうとしたら、 奥のテーブルに座るモモちゃんの噴出音がして、キンちゃんのいびきはさっきよりも大きなり、 リュウちゃんは何かを凝視してる。
何を凝視してるのだろうと視線を辿れば、それは私の横に座るウラちゃんみたいだった。
そのウラちゃんはクスクス笑いながら、ピンク色の何かを持って私を見上げてる。











「……ん?」



さんの可愛いね」












良ちゃんに入っていたら満面の笑みで言っているだろうセリフの調子を聞いて、私は首を傾げた。


私の……何が可愛いんだろ。


じっとウラちゃんが持っているものを見ると…………あれ、これは……
そこでようやくピンク色の何かが何なのかに気づき私は慌て屈む。
不安な気持ちで恐る恐る両手で胸を触る。


……っ!?












「えっ……えぇ!?」

「ピンクか……女の子らしくていいね。でも僕的に青の下着のがいいかなぁ……ほら、僕の色の下着着てる方が興奮するし」

「なっなにっ何言って……!!」












ウラちゃんの発言に他のモモちゃんとキンちゃんが咳き込んだ。
リュウちゃんは「亀ちゃん変態」とまとも意見を述べてくれた。


いやっそんなことよりどうやってウラちゃんは私の下着取ったの……!?
混乱しながらウラちゃんを見やれば、「こんなの朝飯前だよさん」 とふふんと語尾につきそうな勢いで言われた……最低だ!


とりあえず私はそんな最低な特技を披露してくれたウラちゃんから下着を取り返したいものの、 胸元が気になり立ち上げれない。
デンライナーの中は寒くないし、今日は家のトイレから乗車することを決めていたので今回の服装は薄い長袖なのだ。
う、迂闊に立ち上がったら……っ考えたくない!


顔が急激に火照るのを感じて、とにかく早く返してもらおうとウラちゃんを睨みながら口を開く。











「ウラちゃん!早く返して!」

「いいよ、ここに置いとくね」











あれ?案外素直に聞いてくれた……と思ったのもつかの間、 ウラちゃんはこともあろうことか座っているテーブルの奥に下着を置いた。
それは私が立ち上がらなければ取れない距離。


こっんの磯野郎……!わざとだな……!


フツフツと湧き上がる殺意に震える私
絶対ウラちゃん内心ニヤニヤしてる……むっつり!
て、ゆうか、なんで他の奴らは助けてくれないわけ!?
どうしようもできない私の怒りの矛先がウラちゃんから他4人に移る。
ギッとモモちゃん達を睨みつければ、 モモちゃんとキンちゃんは何故かテーブルに突っ伏してるし リュウちゃんはお絵かきしながらも私の下着から目を離さない。
どうしようなんだかリュウちゃんがウラちゃんみたいなことになってる……
唯一の助けはもうナオミちゃんしかいないのか……!?と思ってカウンターの方を見れば、 それはもう楽しそうにコーヒーを作っていた。


……なんでこういう時ハナちゃんと良太郎くんはいないのかな……


あまりにもみんなが人でなし(?)すぎて私はとても泣けてきた
とりあえずウラちゃんなんて死ねばいい












「あれ?さん取らないの?」

「取らないんじゃなくて取れないの!」

「なんで?立ち上がれば取れるよ?」

「立ち上がれないから!」












もうやだこの変態!わかってるくせになんでいちいち言ってくるの!?


ウラちゃんと意味のない会話をしながら、口の端が引きつくのを感じた。
というかはんば涙目です私
ウラちゃんは相変わらず内心ニヤニヤしてるんだろうと悔しくて気持ち悪くて仕方がない!
両手も自分の胸元を隠すので必死だから容易に手は出せない、し……?あれ?


両手……あ。


はたっとあることに気付いた私は、ウラちゃんを見つめた。
ウラちゃんはそんな私を見て不思議そうに首を傾げる。












「ウラちゃん……」

「ん?どうかした?」

「…………死ね」












自分でも驚くくらいの低音でそうウラちゃんに向かって言ってから、
私はバッと立ち片手でウラちゃんの顔面をそれはもう力の限り殴った。
もちろんもう片方の手はしっかりと胸を隠している。


ぐっぼあっ!!と言うウラちゃんの悲惨の声が聞こえた気がしたが、私知ーらないから!
殴られた拍子に壁に頭を打ち付け泡を噴いているウラちゃんを見ぬ振りをして私は下着を助け出すことができた。
長かった…









先ほど私はあることに気づきました。
そうです、手は2つあるんだよね
片手で隠せば立てるよね。
それに気付いたが最後体は無意識のうちにウラちゃんの顔面に拳を突っ込んでいました。
ちょっとばかしやりすぎたかなって思ったけど、当然の報いだよね
それに、ウラちゃんを力の限り殴れたのは結構気持ち良かった、です




そう思いながら、無事下着を付け直した私は当初座ろうとしていた席まで行き、
ナオミちゃんにコーヒーを淹れてもらったのでした













なんてことないこんなオチ