私の大好きな青い人。
嘘ばっかりで女の子いっぱいナンパするけど、とても優しい。
そんな彼を私は愛
した。
彼もどこでもいそうな特別可愛いってわけでもない普通な女の子の私を愛してく
れた。
幸せだった。何もかもが、彼がそばにいてくれるだけで世界が変わったんだ。
だけど、もうお別れの時間が近付いてきてる。
「あーあ、もうこんな時間か・・・」
「そうだね。全く時間ってものは早いもんだねぇ」
「だねぇ・・・寂しいなぁ」
いつか離れる未来に怯えながら過ごすのも、今日でおしまい。
今日がいつか離れ
る未来である日。
だからこそいつも通りにウラとデートをした。
優しい彼は今日1日ずっと私の手
を握っていてくれた。
その温かさが、あと少ししたら離れてしまうと思うと胸が
苦しくなる。
このまま、ウラと別れるくらいなら死んだ方がいい。
けど、彼はそ
んなこと望んでないし、私が死んだらきっと彼も私を追って死んでしまうのも私
は知っている。
ウラ、好きだよ。ウラしかいらないよ。ウラが私の世界なの。
私の心も体もすべて彼のモノ。
繋いでいる手に力を込めて、沈みかけている夕陽を睨む。
刻一刻と近付く、さよ
ならの時間。
どんなに願っても時間は止まらないのに、馬鹿みたいに今は願って
しまうよ
「ね、ウラ」
「うん?」
「私と貴方が出会ってどれくらいが経ったかな?」
「・・・多分1年は過ぎてるんじゃない?」
「そっか・・・・・・もうそんなに経つんだ」
私的にウラの第一印象最悪だったなぁ、なんて笑いながら言えば、僕も
の第一印象最悪だったよ、と笑いながら返される。
確かに最初はお互い最悪な仲だったと思う。
私は嘘ばっかナンパばっかして良ち
ゃんを困らせてたウラが大嫌いだったし、ウラもそのたびに突っかかるうるさい
私のことを大嫌いだった。
だけど、いつからかその関係が変わり、今ではそばに居てくれなくちゃいけない
存在になった。
すごい変化だなって自分でも思う。
みんなもまさか私達が付き合うなんて誰も思ってなかった。
もちろん、ウラは私と付き合ってからナンパもしなくなって今まで遊んでた子と
もすべて縁を切った。
が一番大事で何よりも愛してるから、そう言っ
て私の目の前で携帯に入っていた女の人のアドレスやらすべてを全部消した時に
、彼に私はすべてを奪われた。
まぁ後々良太郎の友達のアドレスまで消してしまったことが発覚して大変なこと
になったけどね
ウラ、いつの間にか口が紡いだ音。
ウラが優しく微笑んだ。あなたのその表情は私だけに見せてくれるものだと自惚
れてもいいですか?
「、」
「・・・・・・うん」
「そんな泣きそうな顔しないで?」
「・・・・・・、うん」
「余計離れたくなくなっちゃう」
「ウラ・・・・・・・・・ダメだよ、離れ・・・なきゃ」
離れていかないで、今の私はその一言が言えない。
だってね、ウラも泣きそうな
顔なんだもの。繋いだ手から痛いくらいの愛を感じる。
でもその手をゆっくりと
解いていく。急激に寒くなる手のひらに、痛みすら覚えるよ。
息が詰まりそうになって、心の中で何度もウラの名前を繰り返す。
ウラ、ウラ、
ウラ、好きだよ、ウラ。
ふいに視界がぼやけ始めた。あぁ涙なんて卑怯だし彼を苦しめるだけだから、ど
うか彼が去るまで流れないでいて。
目をきつく閉じて、瞼の裏でも彼を思い浮かべる。
「ウラ、ウラ、ウラ」
「なに?」
私が何度も呼べば、困ったように笑う。
それから彼は私を正面から抱きしめ、肩に頭を乗せた。
そんなウラの背中に腕を
伸ばし私も彼の肩に額を押し付ける。
もう一度、ウラ、と名前を呼べばウラも私
の大好きな声で何度も私の名前を言ってくれた。その柔らかい声に息がつまる。
・・・あぁ、離れたくないよ。
肩に押しつけていた額を離せば、ウラも顔を上げる。
鼻先がつきそうなくらいの
至近距離で見るウラの深い青の目はいつ見ても綺麗だ。
・・・ねぇウラ、最後の私の我が儘に付き合ってくれますか?
「ウラ、」
「なに、?」
「・・・指切りげんまんしよっか」
「指切り?」
「うん」
彼が頭を上げて不思議そうに私を見つめる。綺麗な青は何もかもを呑み込みそう
だ。
私は震える小指をウラに差し出す。
「また、会おうねっていう・・・・・・約束しよ」
「・・・・・・うん、そうだね。指切り・・・・・・しよっか」
私の震える小指にそっとウラの小指が絡まる。
繋がれた小指からじんわりと優しい温もりが伝わってきた。
今、この体温は良太郎じゃないウラの体温だ。
確かめるように力を込めて、この温もりを忘れぬようにする。
「・・・・・・さよならは言わないからね」
「うん」
「また、いつか会えるから」
「うん」
ゆっくりお互いの小指を解く。
ウラの優しげな眼に泣きたくなるよ。
忘れない、なんて言わない。
だって忘れられるわけないもの。
それに忘れる必要だってない。
これからも、ずっとね。
後悔なんてものもしないよ
(あなたを愛したことは、)
(私にとって大切な大切な、)
(過去の記憶。)