「どどどどうしよう侑斗おおおお!!」
「なんっ・・・あああああ!デネブお前何すんだ・・・!あと少しでガン○ムができそう
だったのにお前のせいで腕が折れちまっただろ!!」
「侑斗っ俺どうしたら・・・・・・!」
「俺だって腕どうすれば・・・・・・!」
1人寂しくこの前くじ引きで当てたぷらもでるというやつをやっていた侑斗に突
っ込んだ。そしたらガ○ダムの腕が折れてしまったみたいだ。ごめん、侑斗!
でも俺は今の侑斗を助けることはできない。むしろ俺を助けてくれ!
尋常じゃない俺の慌てように、ようやく侑斗は話を聞こうとガ○ダムの腕を名残
惜しそうに置く。
「なんだよ?イマジンでも出たのか?」
「朝ちょっと散歩してたら・・・・・・」
「公園の方に出たのか」
「うん、公園で出会ったんだ」
「であっ・・・・・・は?」
俺は顔が熱くなるのを感じてキャーと言って両手で頬を覆う(実際は俺が顔を赤
くしてもわからないが)
けど、今思い出しただけでも胸が高鳴る。あの笑顔が俺の頭から離れない。
侑斗は眉間にシワを寄せ、わけがわからないという顔をしていた。俺は一つ咳払
いをして崩れかけていた体制を直す。
「いや、おまえ、は?何言ってんだ?」
「朝公園でな!」
「いやだからなんだよ」
「とてもいい子に出会ったんだ!」
「あ?」
侑斗の眉間のシワが一本増えた。
「おまえ、今のもう一回言え」
「だから、朝公園でとてもいい子に出会ったんだ!」
「なめんな」
そう一言言って侑斗はまたもやガ○ダムの方に向く。もう話は聞かねえからなと
侑斗の背中は語っていた。
その様子に慌て侑斗の名前を呼ぶ。本格的にガ○ダムと向き合う前に俺の相談を
きちんと聞いてもらわなければと思い、侑斗の肩も揺さぶる。心底うざそうな顔
をされたがめげないぞ侑斗!
「ああああああッ!!」
「っ!侑斗!どうしたんだ!」
「どうしたんだじゃねぇよ!!おまえもうホントなに!?」
「侑斗!やっと話を・・・・・・!!」
「なめんな」
最近の侑斗の好きな言葉はこれらしいな。
侑斗は肩に置いている俺の手を払い落として、首だけをこちらに向けた。どうや
ら話だけは聞いてくれるらしい。(やっぱり侑斗はいい子だ!侑斗!)(うぜえ
)
俺がもじもじと朝のことを思い出しながら口を開く。(えへへ)(うぜえ)
今日の朝早く、侑斗のために椎茸を取りに行った。
(ちょっおまっいつもある椎
茸は野生なのか!?)
だが、公園には椎茸は一本も生えてなかった。
(いやまぁそりゃそうだろうな)
俺は困った。だけど諦めなかった
(諦めろよ)
一生懸命、公園の中を探し回った。砂場で砂も掘った。
(それは果たして意味の
ある行動か?)
そこで、そうまるで小鳥のような澄んだ優しい綺麗な声が俺の耳に飛び込んだ。
(ずいぶん唐突だな)
以下略。それでという女の子に出会ったんだ!
(おまえ俺のことなめ
てるだろ)
一通り話終わり、満足した俺は侑斗に笑顔を向ける。その途端侑斗の顔が盛大に
歪み、舌打ちしてきた。
「侑斗!舌打ちはよくない!」
「誰が舌打ちさせたんだ」
「侑斗の舌か!」
「おまえだ」
はぁ、大きなため息をこぼして侑斗が疲れた顔で遠くを見つめる。いや、見つめ
てるのはガ○ダムのようだ。俺は正座した状態で侑斗の手を握る。俺のいきなり
の行動に侑斗はびっくりした表情を見せた。
「なんだよ・・・俺はそんな趣味ねぇんだけど」
「俺も侑斗にだけはそんな感情もたない!」
「おまえの回答っていちいち腹立たしいな」
「侑斗!俺はあの子・・・・・・さんのこと、すっ、すすすき!に、なったみ
たいなんだ・・・!!」
「そして俺の話は一切聞かないってか」
そう言って口元をひくつかせてる侑斗の目を見て、ちゃんと聞いてるが今は答え
る必要がないから答えない。と言ったら、強烈なボディブローを食らった。(痛
い!)(バカ!俺のがいてえええ!!)
しばらく2人してうずくまる。
痛みの波が過ぎた頃にようやく顔を上げたら、侑斗も同じタイミングで顔を上げ
た。
「侑斗・・・」
「デネブ・・・・・・」
「・・・・・・結局俺は・・・どうしたらいいんだろう・・・」
うずくまっていた体勢から体育座りになる。侑斗のボディブローで思い出したの
だ。今の俺はイマジンで、普通に人間の女の子に恋をするなんて間違いだと。ふ
と我に返って俺はなんだか急に泣きたくなってきて、顔を俯けた。
小さくぐずっと鼻が鳴る。さっきまでの浮かれていた気持ちが嘘みたいに俺の心
に重くのし掛かった。(なんで俺イマジンなんだろ・・・ぐすっ)(・・・あのさ)
「デネブ・・・いきなりこのシリアスな展開はねぇだろ・・・・・・」
「侑斗・・・・・・けーわいだ、ぐすっ」
「うっせ」
そう言って侑斗は俺の手を力強く引っ張り勢いよく立たせた。いきなりのことだ
ったのでちょっとよろけたが、なんとか持ち直す。
「ゆ、侑斗?」
「・・・だっけか?そいつん家ってどこだよ」
「えっえっ?侑斗?」
俺の手を掴んだまま侑斗がずんずんと歩く。戸惑いながらもちゃんと侑斗の後ろ
を付いていき、確か公園の近くに住んでる、と彼女が言った言葉を侑斗に伝えた
。侑斗はそれを聞くと、わかった、一言だけ呟いて走り出す。もちろん俺もそれ
につられて走る。
「う、わわっ!」
「しょうがねぇから探してやる!だからうじうじしてんな!」
「ゆ、侑斗・・・・・・!」
「ってやつの名字なんだ!?」
「えっ、!」
「よし、んじゃ会いに行くぞ!」
振り返って侑斗は笑う。前歯がキラリと光った。
俺も(わからないだろうけど)笑う。(わからないだろうが)ぎこちなったけど
。だけど、さんに堂々と会ってもいいように思えてきた。侑斗がいて
くれるなら、俺頑張れる気がする!(やっぱり侑斗はすごい!)
走って走って、公園付近の家を探した。って名字がないかひたすら見
て回る。そんなのすごく大変で面倒で果てがないのに、侑斗は一生懸命探してく
れた。
「っはぁ、ほ、ホントにっ、公園のちかっ、くに、住んで、のか・・・・・・っ?」
「んとっ、はぁっ・・・たしかにっそ、言って、た・・・・・・!」
全速力で走り回って小一時間。さすがに息が切れてきた。もう諦めた方がいいの
かな・・・・・・。そもそも会ってどうするとか考えてないし、彼女だって会いに来られ
たら迷惑かもしれない。ただ椎茸探しを手伝ってくれただけの関係。それに俺の
姿じゃどうあがいてもさんに好いてもらえる自信がない。それに侑斗
にも迷惑かけちゃって・・・・・・なにしてるんだろうな。深呼吸を何回も繰り返して、
諦めると一言告げようとした瞬間、ずっと離れなかった綺麗な声が響いた。
「あれ・・・・・・あーデネブさんだ!」
「えっ!?あっ・・・さん!?」
「え、あ、こいつか?」
「うんっさんだ!」
突然の登場で俺は体を大きく揺らして驚いてしまったが、さんに会え
たのが嬉しくて恥ずかしいと思う暇もない。侑斗がチラリとさんを見
てから俺の肩を叩いた。
なんだろ・・・はっ!まさか侑斗さんに一目惚れを・・・・・・!?
「侑斗一目惚れ!?」
「は?ちげえよ。お前わざわざ会いに来た理由忘れたのか?」
「理由・・・・・・あぁ!」
そうだった!
侑斗の一言で体が燃えるように熱くなる。さんを侑斗越しに見てみた
ら侑斗とこそこそと話している俺達を不思議そうに見つめていた。
・・・・・・ダメださん見てたらドキドキしてきた・・・。さりげなく
さんから侑斗に目線をずらす。
「こっち見んなよ。俺はじゃねぇぞ」
「だだだだって侑斗!彼女はさんだ!」
「あ、はい。です」
「あっ違います!」
「あっ違うんですか!勝手に返事してすみません!」
「いやこっちこそ紛らわしくてすみません!」
ペコッと頭を下げたさんに申し訳なくなって、俺も慌て頭を下げる。#
すると、#name_1##さんも頭をまた下げた。だったら俺も・・・・・・!
2人ペコペコ頭を下げていると、侑斗が俺のお尻を突如蹴り上げた。
驚きと痛さで情けない声が出る。さんの前なのに・・・・・・!
「侑斗!何するんだ!」
「お前は何してるんだ」
「あっあの、デネブさん大丈夫ですか?」
「あっはい!こんなの全然痛くないです!」
頭をかきながらさんにそう答えると、さんがふわりと微笑
んでくれた。あぁっすごく眩しい・・・・・・!
あまりにも可愛らしい笑みにデレェとしていたら、侑斗が腕を引っ張ってきた。
「どうした?」
「どうしたじゃねぇよ・・・・・・俺、帰るからな」
「えっなんで!?」
俺がいちゃ言いたいこと言えないだろ、また前歯がキラリと光らせ侑斗が笑う。
侑斗かっこいい・・・・・・!
拳を俺の肩に当ててから侑斗はダッシュでもと来た道を行く。侑斗かっこいい・・・
・・・!!
「あ、あのーデネブさん?」
「っ!あ、は、はいっ!」
侑斗の後ろ姿を見てたら、さんに名前を呼ばれた。はじめて呼ばれた
わけじゃないのに、すごく胸がドキドキする。俺は胸に手を当てて、息を深く吸
った。侑斗がくれたチャンスを俺は活かさなければいけない。なんのために、俺
がさんに会いに来たのかを忘れてはいけない。
う、わ・・・・・・でもどうしよう・・・そうは言ってもさんに何を言えばいいか
わからないんだけど侑斗ォォ
「デネブさん?大丈夫ですか?」
「だ・・・・・・大丈夫です!さん!」
「は、はい!」
ひたすらうんうん唸ってたら、さんが心配そうに俺を見てきた。なに
してるんだ俺!さんが心配してるだろ!ドキドキドキドキ、体の中の
音に耳を済ませて、この高ぶる気持ちを落ち着かせる。そ、そうだ、俺は男なん
だ!いつまでもグダグダしちゃダメだ!侑斗みたくかっこよく潔くないと・・・・・・!
!力いっぱい拳を握りしめ、心配そうに俺を見つめてるさんに勢いよ
く頭を下げた。
「さんっ」
「はいっ」
「お、お、おおお、」
「おおお?」
「俺はっ、あなっあなたが・・・・・・好きです!」
「・・・・・・へっ!?」
「もしよろしければ、友達から付き合って下さいっ!!」
言った・・・・・・言っちゃった・・・・・・!!体中が熱くなるのを感じながら、俺は
さんに片手を差し出す。情けないことに、指先が微かに震える。こんな姿の俺だ
けど、・・・・・・君ともっと話がしたい。たくさん、話したい。
「デネブさん、顔を上げて下さい」
ふわりと柔らかい何かに包まれた俺の固い手。さんに言われて顔を上
げれば、少し頬を赤らめている彼女。柔らかい何かは・・・・・・さんの手だ
。そうわかった途端、手が燃えるように熱くなった。うわーうわーどうしよう!
!手、握られ・・・・・・わー!!叫びたい衝動に駆られたが、ぐっと飲み込む。
さんは、そんな大混乱中の俺の目をまっすぐ見ていてくれてるから、俺だってそ
らせない。
「あの、ですね・・・・・・私なんかでよろしければ、お友達からはじめましょうか」
ここからが、出発点。
(侑斗ォォ!!)
(あ・・・・・・っああああ!!てっめ今度は足が折れ(それどころじゃないんだぁぁぁ
!!)・・・・・・なんだよ)
(さんと・・・・・・さんと、)
(だからなんだよ)
(水族館行くことになった!服どうしよう!!)
(服どうしようもなにも、お前着る服かんてないだろ)
(そっ、そうだった!とんだうっかりだったな!)
(・・・・・・(うわうぜえ))