「こら」
コタツに深くもぐり寒さをしのぐ私を見て、良太郎が口うるさくなるのはいつも
のこと。
だけど今回はコタツからちょっとだけ出てる私の頭をポコッと叩いた。
良太郎のくせに、そう思って困らせてやろうと大袈裟に痛い痛いとコタツから頭
を出し良太郎にぶーたれる。良太郎に叩かれたとこをさすりながら、痛かった、
と不満顔で言えば少しだけ焦った顔をして今度は私の頭を撫でてくれた。
「ごめんね、そんなに強く叩くつもりなかったんだけど・・・・・・」
しゅんと眉を下げて謝る良太郎を見て笑いをこらえながらコタツに再び頭を隠す
。だって別に痛くないし。良太郎ったら本気で困ってやんの!・・・・・・でも嘘なのバ
レたら後で良太郎に愛理さんの料理をおすそ分けされるから隠さないとなーあれ
はさすがにきついんだもん。そんなこと思っているとは知らない良太郎は、私が
コタツから出ないで黙っているのを泣いたと勘違いして慌てだした。こんぐらい
で泣くわけないのにね!ふはっ全くこれ以上笑わせないでくれよ・・・!
「ご、ごめん!でもあまりコタツに深く入ってると風邪引いちゃうと思って・・・・・・」
あ、今なんかキュンってなった。そろそろとコタツから頭を出せば、良太郎が私
の頭上(?)に正座している。本当に申し訳なさそうにしているので、もっと困
らせてやろうなんて気持ちはどこかへいってしまった。ていうか逆にこっちが申
し訳ない。だけど今更ね、嘘だよずぇんぜん痛くなかったよーとか言っちゃった
ら絶対良太郎拗ねるもんなーそれで愛理さんの手料理だろー・・・・・・どうしたもんか
。まぁとりあえず良太郎の正座をやめてもらおうか。
「りょーたろ」
「・・・ちゃん怒ってる・・・・・・?」
「いや怒ってないけど・・・・・・いやまぁさっきのことは許しますので私の頭上での正
座はやめていただけないか」
「へ?あ、うんごめんね」
良太郎はそう言うやいなや、サッと立ち上がって(寒かったんだな)私とは違う
とこから素早くコタツに入る。うわっ・・・・・・
「良太郎ってば足冷たっ!!」
「いたっ!ふ、冬だから仕方ないでしょ・・・・・・」
「だからといってこれは異常だ・・・・・・!!一瞬氷かと思ったじゃん!」
「えっそんなに?」
良太郎が足をコタツに入れたとき、運悪く私の足と軽くぶつかった。その時当た
った良太郎の足が冷たくて冷たくて思わず蹴っちゃいましたよ。仕方ないだって
冷たすぎ。良太郎はそんな私の反応に苦笑。
「あーでもやっぱりコタツはいいね」
「まぁね。冬と言えばコタツだよね」
「コタツと言えば・・・ミカンだよね」
「そうだね」
「「・・・・・・」」
ちらりと良太郎を見やる。良太郎も同じことを思っていたのか、目があった。
「ミカン・・・持ってきてよ良太郎」
「・・・・・・さっきコタツに入ったばっかりなんだからもう少しゆっくりさせてよ」
「入ったばっかなんだったらまだコタツの支配には飲まれてないっしょ。立つな
ら今だよ!」
「そういうならちゃんが取ってくればいいじゃん」
ちょっとムスッとした表情を見せた良太郎にウッと詰まる私。だがしかし、今の
私にはコタツを出る勇気は一ミリもない。残念なことだ。そんなわけで標的はや
っぱり良太郎に移るわけで、さっきまでオロオロ私に謝罪してきたくせにこのや
ろー楯突くなんていい度胸じゃないですかこのやろー。なんて思ったがなんだか
んだ言ってあれは私が悪かったので何も言わないことにする。うーと唸りながら
顎をテーブルの上に乗せた。良太郎もぐでぐでと顔をテーブルの上に乗せている
。あぁダメだ。こりゃホントにミカンにありつけん・・・・・・。
「良太郎ー」
「んー」
「ミカン」
「・・・・・・食べたいね」
「・・・・・・そうだね」
あぁダメ人間2名の出来上がりですか。ミカン食べたいなぁと思うだけ思って、
コタツで2人ぬくぬくしながら、結局愛理さんがくるまでミカンを持ってくるこ
とはなかった。
こたつむり
「コタツって悪魔だね」
「あら、そうなの?」
「愛理さんも気をつけないと出れなくなっちゃうよー」
「まぁそれは怖いわね」
「そんなのちゃんだけだよ・・・」
「良太郎もでしょうが」
「あ、そういえばね、ちゃんも今日夕飯一緒に食べると思ったからいつもより多めに料理作ったの。
あと今日は一段と寒くて風邪引いちゃうかもと思ったから健康にいいものをたくさんいれたからね。
ほら2人とも遠慮しないで食べてね」
「「え。」」
早々にコタツから出て私は家に帰れば良かったと、軽く青ざめた顔の良太郎と見
合わせながら密かに思いました。