「うっわ・・・ありえへんわ・・・」
ここ最近夜更かしばっかしとったから授業中寝てしまった。
まぁそんなん言うても?あたしってばいつも寝とるし?
先生だってそれ知っとるし?怒られたことは・・・何回かはあるな。
せやけど、罰みたいなもんはこれまでなかった。
みんな、しゃあないやっちゃなーで許してくれてたのに今日に限って罰を言い渡された。
どうも虫の居所が悪かったらしい。その八つ当たりが居眠りぶっこいてたあたしに降りかかったっちゅうことなんやけど・・・これはないやろ。
先生に言われた場所は資料室で、その奥にあるダンボールに山積みして入ってる紙の束。
アホか。こんなんを持って来い言うんか?鬼か。あのハゲ鬼か。
チッ、と舌打ちをしてそのダンボールを持ってみた。
「もっ・・・・・・持ち上がらへんのやけどォ・・・!」
もうね、想像以上の重さですわ。
そらもうとんでもなく重い!!
持ち上げようとする腕も手も指もプルプルしてるし、支えようと踏ん張ってる足もプルプルとしている。
指とかちぎれそうやわ!
こんっな重いものを女の子一人に持って行かせようとかありえへんやろ!
手を離すとドンッと大きな音を立てた。
・・・・・・放棄したいなぁ・・・。
うー・・・やけどこれ持って行かんと成績下げる言うとるしなぁ・・・。
あたしはダンボールを見下ろしてどうするもんかと考えた。
誰か手伝ってくれる奴居らんかな?
あっユイコちゃんなら手伝ってくれるかもしれん!
ユイコちゃんは可愛くて可愛くてしゃーないあたしの親友。
うん、あの子めっちゃええ子やから手伝ってくれるはずや!
そう思って携帯を取り出すが、ふと思い直しまたポケットにインしといた。
やってユイコちゃんは本間にええ子でちゃんとした女の子ー!な子やからこんな重いもんとか持たせたらあかんやろ。
まぁあたしもぉか弱い女の子やからぁこんなクソ重いダンボールなんて持ちたないんやけどぉ・・・・・・なんや自分で言うてて悲しなってきたぞ。やめよ。
溜息をついてもう一度ダンボールを根性で持ち上げる。
「さっさと持ってって帰ろ・・・っ!!」
う、あかんこれ・・・!資料室出るっちゅうだけで体力めっちゃ消費するんとちゃう!?
すでにブルブルきてる腕。いやいやいや負けへんで!!頑張るんやあたしの体!!
資料室のドアを足で開け、ゆっくりのっそりとした動作だが資料室から出ることに成功。
くそ・・・こんだけのことやのにもう汗とかびっしょりなんやけど!
フラフラと足元がやばくなってきたのでちょっと休憩しようかとダンボールを置く。
ふぃー・・・転ぶとこやったなぁ・・・。
でもこんな距離で疲れてたらこれから先もっとやばい。
このダンボール・・・確か職員室まで持って来いって言うっとったよな・・・。
・・・職員室とか別棟なんやけど。しかも階段上るやん。・・・え、あたし死ぬ思うんやけど。
またあの重さを抱え結構歩くとか思うとげんなりしてきた。
あー・・・本間どないっすか・・・。
やっぱ放棄しよかなぁーと思い始めたあたしの背後で突如「こはーるー?」という間抜けな声が聞こえた。
はぁ・・・余計力抜けるわ・・・。
「なにしとんねん・・・」
「うぉっ・・・ってなんやお前か。まだ残っとったんか?」
「まあ色々あって」
「ふーん。なぁ、小春見てへん?」
「見とらん。なに逃げられたん?」
「・・・ちゃうわ鬼ごっこや」
「本間なにしとんねん。テニスやりぃや」
「やかましい。小春捕まえたらやるっちゅうねん」
アホか。
思わず言いかけた言葉を慌てて飲み込む。
いかんいかん、ここで一氏と喧嘩したらさらに帰りが遅くなる。うん、そんなん嫌や。
利口なあたしは一氏に背を向け再度ダンボールを持ち上げ歩き出す。
うう、おもー!
「それ、どないするんや?」
「職員室まで運ぶん、よ!」
「・・・めっちゃ重そうやな」
「めっちゃ重いわ!」
わかりきったことを聞く一氏にイラッとして今すぐ後ろを振り向いて睨み付けたいが、今の状態で後ろを振り向いたら最後倒れるのが目に見えてるので止める。
一氏に背を向けたまま「じゃー小春ちゃん探し頑張りやー」と言い重たい足取りで職員室を目指す。が、ふっと自分の腕から重みが消えた。
隣を緑と黄色のジャージを通り過ぎる。
「えっえっ一氏!?」
「これ確かに重いな・・・それを持つとかお前本間に女なんか?」
「はぁ!?なんやとゴラァ!!」
「ゴリラみたいに喚くなアホ」
ゴリッゴリラだと・・・!?
あたしがさっきまで持っていたダンボールを持ちどんどん歩いていく一氏に顔が引きつる。
な、なんやねんあいつ!なにがしたいねん!!
慌てて追いかけてまた重いの持つのなんて嫌だけどダンボールを寄越せと言うと、逸らされる顔。
お前は反抗期の子供か!!
「一氏、あんた部活あるし小春ちゃんも探すんやろーあたしのことは気にせんと行きや。ほれ、それ寄越し」
「・・・別に親切でやっとるわけやないわ」
え、なんやそれ・・・。
わけがわからんくて思わず立ち止まり首を傾げてると、前からおっきな溜息が聞こえた。
ちょ、せやからさっきからなんなん!?
はっきり言わなわからんわボケ!と言おうと口を開くと、一氏に立ち止まってこちらを振り返る。
その姿にぴたりと開いたまま止まる口。
何故か少しだけ顔が・・・赤い気がする。
「小春探すついでプラスええトレーニングになる、思うただけやから勘違いすなボケ」
そう言ってまた前を向きスタスタ歩いていく彼の背中が妙に逞しく見えて、自分の顔が熱くなっていく。
「勘違いって・・・何の勘違いやボケ」
遠くなる背中に小さく呟いて、わけのわからん気持ちを生みながらその背中を追いかけた。
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