「きよしくんかっこいいね!」
「えっ・・・え、え、おれ、のこと?」
「えっ?きよしくんって名前じゃなかったっけ?」
「きよしだよ!」
「じゃあきよしくんだ!!」
突然女の子に話かけられた。 それは小学校の帰り道だった。 まわりはおれより頭ひとつぶんくらい小さいのに、そんな中でもさらに小さい女の子がおれに声をかけてきた。 おっきな目でおれを見てる。 なんだか顔が熱くなってきてしまう。 それに今この子・・・おれのことかっこいいって言っていた。 ・・・は、初めていわれた・・・っ。 女の子の言ったことを思い出したら、ぶわっと今度は全身まで熱くなってくる。 女の子は相変わらずへにゃへにゃとした笑顔。
「きよしくん、おっきくていいね!」
きよしくんみたいにおっきかったら、お空に手がとどきそうだよ! 花が飛ぶような笑顔で空に手を伸ばす女の子。 でも、おれのきぶんはしゅんってなった。 おれ・・・すきでおっきくなったわけじゃないしなぁ・・・。 それにお空に手をのばしたってとどかないし・・・。 ただみんなよりでかいだけ・・・こんなのそんばっかだよ。 ぼんやりとそう思った。
「あっそうだ!きよしくんきよしくん、これあげる!」
そんなおれの考えを知らない女の子はガサガサとポケットをあさってから手を差し出してきた。 なんだろうって思って見たら、小さな手のひらにはあめがたくさんあった。
「?」
「これあげる!おいしいよ!」
「う、うん?」
小さな手のひらはおれの手をつかむとあめを一つ握らせる。 その時女の子の髪が風に揺れて、ふわりと砂糖菓子のような甘い香りがした。 いいにおいだなぁ・・・。 そしてもう一度、「きよしくんにあげる!」と行ってたたたと走りさっていった。 しばらくその後姿を眺めたあと、手のひらを開くと真っ黒色の包み。 あの女の子の甘いにおいはこれだったのかな・・・? 包みを開けると、なかみも真っ黒だ。 それを口に含んだら、むっと眉間に皺がよる。
(あの女の子のしてたにおいとは全然違うな・・・でもおいしいや)
もごり、広がったのは、何の味?
小4の夏