ガタガタッと机とイスの移動の音が教室中に響き渡るなか、おれ達は動かなかった。
「鉄平くんとまた隣の席だねー」
「そうだなー」
「またよろしくねー」
「よろしくなー」
先月と一緒の席、先月と一緒の隣。 は楽しそうにさわがしい教室を見ていた。
「あともうちょっとで冬休みだね。宿題たくさんやだなぁ」
「習字たのしいよなぁ」
「えーわたし習字にがてー!」
「えー?たのしいだろー?」
は顔をしかめて「にがてだよ、字へたくそなんだもん」と言って次の時間の準備をする。 おれも教科書とノートを取り出す・・・次は算数だ。 あ、確かは算数もにがてって言ってた。 計算ドリルを出して昨日出されていた宿題のページを開く。
「・・・鉄平くん、すごいね・・・全部答えうまってるや・・・」
「そうか?ふつうじゃ・・・って、は書いてないとこおおいな・・・」
「あはは・・・」
そう言うと困ったように笑って「わたし算数もにがてなんだよね・・・がんばったんだけど、全部できなかったんだぁ」 とところどころ答えが書いてない計算ドリルを見せてくれた。 おれは自分のドリルとのドリルを交互に見る。 は困ってる、から・・・おれはできてない答えを教えてあげた方がいいのかな? あともう少しで算数の時間になるし・・・そっとドリルをに差し出す。
「これ、うつす?合ってるかはちょっとあれだけどさ」
「えっ、大丈夫だよ!ちゃんと先生に教えてもらうから!ありがとう!」
は差し出したドリルをおれの机にもどした。 すこしだけさみしい気持ちになる。 の力になりたかったんだけどなぁ。 みんな新しい席について落ち着いたところでカネが鳴る。 先生がはいってきて、算数の時間がはじまった。 まず最初は宿題の答えあわせだ。 ・・・、大丈夫かな? ちらっと隣を見ると、ちょうどもこっちを向いた。 にこって笑って、は言った。
「鉄平くんはやっぱりやさしくてかっこいいね」
その日はなんでか一日中の顔が見れなくなった。
小6の冬