バスケ部に入った。 が褒めてくれた俺の大きな身体は、バスケ部でとても重宝されている。 バスケ部でもたくさん友達ができて、たくさんのやりがいを見つけて、様々な世界が広がって、 ・・・でも、代わりに、何故だか彼女との距離は少しだけ離れた。
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「あはっおもしろいねぇ!じゃあ今度そのオススメの本借りようかな!」
「うん貸す貸す!もオススメあったら教えてねっ」
廊下で楽しそうに話しているに俺は視線を送ることしか出来ない。 中学でも同じクラスになれたのに、どうしてだろう、がいる場所が酷く遠く感じる。 誰かが話しかける、俺でない誰かだ。 誰かが触れる、俺でない誰かだ。 誰かと話して笑う、俺でない誰かとだ。 そう考えると胸が痛い。 なんでだろう、すごく痛いんだ。 息もつまって頭もクラクラして・・・まるで風邪を引いた時みたいになる。 でも熱はない・・・何回計っても俺は平熱、変わりない。 ううむ・・・不思議な感覚だ。
「おーい、木吉ー!飯食おうぜー!」
「っ、ああ!今行く!」
そうだ、今はお昼ご飯だ。 早く食べないと昼休み遊びにいけない。 友達に声をかけられ、沈んでいた思考が一気に浮上する。 「なにボーっとしてんだよ!」と俺のもとへ来てバシバシ肩を叩くとみんなが集まっている教室の端を指差した。 そこへ行こうと立ち上がり顔をあげたところで、・・・と目が合った。 ちょっとだけ目を見開いたあとに、小さく笑顔をこぼす。 ・・・ああ、鼓動が早まる・・・。 足が止まって、時も止まった。 だけどそれはたった一瞬で、友達に今度は背中を叩かれてまた動き出す。 ゆっくりと、今日も時間は流れていく。 俺の中で変わらない毎日。 もう変わってしまった毎日。 彼女へ再度視線を向ける・・・もうはこっちへ見ていなかった。 ・・・さみしい、なあ。
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放課後も変わらず、だった。 バスケに費やす時間はとても有意義だ。 しかし学業も怠れない・・・なのに、どうして宿題を教室に忘れてきたんだか・・・。 せっかくのバスケの時間が減っちまう。 今日出された宿題は数学だった。 そこで思い出すのは小学校のとのこと。 きっと今日目があったからだと思う。 算数が苦手だった彼女は、きっと数学も苦手だろう。 だろう、というのは、実際が数学を苦手という話をしたことがなかったからだ。 前はわからないところを俺がに教えていたけど、今は様々なわからないことを女子の友達に教えてもらっているみたいで俺の出る幕はない。 ・・・本当は、俺がのわからないところを全部教えてあげたいし・・・俺のことをなんでもいいから頼って欲しいなんて、少しばかし思っている。 友達が多いのはいいことだ・・・だけど、俺はその友達の中でも・・・なんていうか、付き合いは長いわけだから、特別だと思ってるのに、 は違うのだろうか。 って、なんてことを考えてるんだ俺は・・・さっさと用件済ませて部活に戻らなきゃ。 じわりと嫌な気持ちを払拭するように頭を振って足を進めたら、気付いたら教室は目前。 こういうときでかいってのはいいよなぁ・・・目的地にすぐ着く。 だが、教室の前まで来ると複数の話し声が聞こえた。 多分・・・声的に女子だけみたいだ。 ちょっと気まずいけど、俺も用があるから仕方がない・・・と思ったが、その複数の話し声の中に馴染みのある声が聞こえてくる。 さっきまで考えていたからだろうか、ドクンと心臓が跳ねた。
「いやーそうだったんだねぇ・・・私、全然気付かなかったよ・・・」
「まぁはそういうの疎そうだもんねー」
「あっそれわかるかも!ってばに彼氏いたことも気付いてなかったもんね!」
「えっマジで?てか、私言ってなかったっけ?」
「聞いてないですけども!」
内容は・・・どうやらガールズトークみたいだ。 入り辛いことこのうえない、でもずっとこうもしてられない・・・。 溜息つきそうになるのを飲み込む。 部活を抜けてきて早30分は経っている気がする・・・早く戻らないと仲間に怒られる・・・うん、覚悟を決めるか。 ガールズトーク中の女の子だけの空間に入るのは気まずいが、中にはがいる・・・そう思うとなんとかなる気がしてくる。 そう、思っていたが・・・聞こえてきた会話に俺は教室に入ることなく来た道を引き返した。
『そういえばって好きな人いないの?』
『好きな人かぁ・・・いる、かな・・・』
駆けるように、逃げるように、俺はその場から、・・・・・・・・・・から離れた。 なんでだろうと自分の中で問いかけても答えは出ない。
「あっ!遅いぞ!教室行くまでどんだけかかって・・・・・・あれ?どうした?」
「・・・なにがだ?」
「お前今めっちゃ顔恐いぞ?」
体育館に戻っての第一声にとりあえず俺は顔を隠した。
しかし、後日勇気を振り絞って聞いてみるとあれはの小さな見栄で、まだ好きな人がいないということだった。 あの時何故逃げたのか、何故のその答えに酷く安心したのか・・・自分でも不思議だが、その話の真相を聞いてからまたと喋れるようになったのでよしとする。
中2の春