私と彼が関わる機会は、事件が起こらなかったらきっとなかったと思う。
そして「特別捜査隊」というメンバーにならなかったら、彼と話すこともきっとなかった。
この現状で満足しなければならない、そんなのもわかってるのに、私はもっともっと、彼との何かを欲しがってしまう。
私を救ってくれた彼は私の中で誰よりも特別だけど、彼にとっては彼が救った中のただの一人だろうに。
死ぬかもしれない、そんな事件に巻き込まれて出会った。
巻き込まれてくれたおかげで出会えた、なんて最低すぎる考えだ。
俺は感謝してはいけないものに感謝をしている。
彼女は俺をリーダーとしてとても慕ってくれていると思うが、
こんな汚いことを考えてるなんて知ったらどう思うだろうか。
この先、この「特別捜査隊」が解散することになったら、それはとても喜ばしいことなのに、彼との接点がなくなってしまうと思うと酷く気分が滅入る。
「特別捜査隊」としてなら気軽に側にいれるけど、ただの私になってしまったら彼の隣にいるにはどうしたらいいのかな?
「特別捜査隊」の中での俺は皆に頼られてる、だけど、ただの俺ではどうなんだろうか。
彼女は何もない俺でも、頼りにして・・・側に、いてくれるだろうか。
どうしようもない、何も答えがでなくて、すごく胸が苦しい。
彼の声が聞きたい、少しでもこの関係のうちに彼に近付きたい。
震える指が携帯を手繰り寄せる。
今日は雨じゃないからマヨナカテレビは絶対に写らない・・・それでも、彼に電話をかけてもいいのだろうか?
私個人の理由で電話をかけるなんて迷惑ではないだろうか?
いや・・・「特別捜査隊の私」なら大丈夫だよね。
どうしようもない、考えていてもしょうがない。
答えなんてわかっているのに、俺がその答えを隠している。
陽介が聞いたら「お前考えすぎ!」と俺の背を押すだろうな。
彼女に会いたい、こんなぐちゃぐちゃとした思考を吹き飛ばして欲しい。
ぐっと背伸びをしベットに倒れこむと、ブルブルと、携帯が震えていることに気付く。
手を伸ばして画面を見れば、今まさに考えていた人物の名前があった。
『・・・?どうしたんだ、こんな時間に・・・』
「あ、えっと、ちょっと悠くん話がしたくなって・・・」
『そっか』
現金な私だ。
彼の声を聞いただけで、こんなにも気持ちが軽くなった。
他愛無い話をたどたどしく語る私に呆れもせず悠くんは優しく相槌をくれる、それがすごく嬉しい。
『悠くんはこの時間いつも起きてるの?』
「ん?まぁわりとな。でも俺はこんな時間までが起きてるのが意外だった。は俺の中で10時に寝てるイメージ」
『え!なにそのイメージ!私優等生だ・・・!』
「成績はまったくもって優等生からかけ離れてるけど」
『そこは触れないでください・・・』
電話越しでも彼女がどんな表情でいるかわかる。
こんな些細な会話でも彼女としてるのかと思うと顔が緩む。
いつまでも話していたけど、気付けば時計の針は大分進んでいた。
「あ、やだ・・・もうこんな時間なんだね。ごめんね、夜遅くに」
「いいよ、俺も楽しくてこんな時間になってるなんて気付かなかったし」
「そっか・・・ありがと・・・、あの、またかけてもいい?」
「・・・うん、いつでもかけてきていいよ。の電話だったらいつでも出るし、相談とか乗るし」
「っさ、さすが我等がリーダーは仲間思いですごく頼りになります!ありがとう!」
言ったあとにすごく泣きたくなった。
自分で自分の首を絞める発言してなにしてんだろ。
浮き沈みの激しいこの感情はいつになったら、軽くなれるんだ。
少しの間が俺達の埋まらない距離だと言うのか。
「・・・俺達は仲間だからな」
「うん、仲間だもんね・・・」
この言葉に、あなたは、きみは、心底安心するんだろう?
平行線をたどる日々
彼にとっては私は仲間で、
彼女にとっては俺は仲間で、
私の思いは
俺の思いは
決して踏み出してはいけない、領域だ。
近いようで近くないこの距離が苦しいよ