久しぶりの、頑張り。私めちゃくちゃ頑張った。
マジ今まで生きてきた中で一番頑張ったと思う。
大嵐の中、金髪の美形さんが暗い波に飲み込まれそうになったところを必死こいて救い出し、陸にあげて早30分程。
苦しそうに眉を寄せている美形さんは一向に目を覚まさない。
(え、どうしたらいいんだろ私。)
こんなことするの初めてだし、むしろ人間にこんなに近づいたのも初めてだ。
(いやそれにしても美形である・・・)
じいっと彼の顔を覗き込むと、適度に白い肌、長い睫、高めの鼻、とにかく顔のパーツが整っていて・・・思わず見惚れてしまう。
うちの姉どもとは大違いである。人魚のくせにどうしてああ人相悪いんだろうね。特にニ番目の姉。
しばらく見つめていると、「う・・・」と小さく呻き声がした。
「あ、れ・・・俺・・・」
「!!」
長い睫が揺れ、彼の目蓋がゆっくりと開いていく。
彼の閉じられていた瞳が開き、覗きみえたのは綺麗な澄んだ色のブラウン。
もうダメだ・・・なに見ても綺麗しか言えない。それぐらい美形だよこの人・・・!
パチパチと瞬きを繰り返しポケーっとしている彼に、胸をドキドキさせながら「あの・・・」と切り出してみる。
とりあえずどこか怪我してないかを確認しないとね!
「え・・・?」
「どこか痛いとこないですか?」
「え、あ、ああ・・・まあ少し全身が痛む程度だから特にはないな・・・」
「そうですか!それは良かった!」
もし怪我してたら私一人じゃ対応できないもの。
姉様達を呼び出すのも面倒だしね。
どこも怪我をしていない彼に私は安心で溜息が漏れた。
するときょとんとした彼の視線が私に注がれる。
「?」
「・・・にん、ぎょ・・・?」
「!?」
(ア、アウトォォォ!!!)
やばいやばいやばい!
彼の視線は真っ直ぐ私の足に向けられていた。
彼の呟いた単語と視線に汗がどわっとどばっとあふれ出ていくのがわかる。
助けるのに必死すぎてすっかり忘れていた問題に、私の頭は爆発寸前だ。まじ、やべえ。
「あ、あのっ、あの、私・・・っご、」
「ご?」
「ごめんなさああああい!!!」
「え、ええっ!?」
(とりあえず、逃げる!!)
瞬時に導き出した答えで、彼から逃げ出す
と言うか海にザッパンと飛び込む。
そして一気に海底まで沈めば、辺りは真っ暗で微かな光しか差さない場所にたどり着いた。
心臓が、バクバクと五月蠅く鼓動している。
(あーへたこいちゃったよぉ)
彼に見られた自分の姿。
人間にとっては・・・異形の姿。
彼の瞳に自分がどう映っていたのかは全くわからなかったが・・・絶対いいものでないのはわかってる。
でも、それでも・・・私は彼を助けられ、目をあわせ、言葉を交わせてよかったと思った。
貴方と交わした時間、
(例え短い数分でも確かな私の宝石)