いつもいつも彼はそうだ







「なぁー好きって言って?」

「はぁ?なんでよ」





やることなすこと言うことすべて唐突すぎる。それが田島悠一郎という人だ。
日直の最後の仕事、日誌を書いていたら田島は前の席に座り私の机に両肘をついてニコニコしてる。
田島も日直なのだが、彼には黒板消し係という粉まみれになる恐怖の仕事をまかしていたけど、もう終わったみたい。
あ、髪の毛にチョークの粉ついてる。
プッと軽く噴いてから、田島の少し固めな髪に触れる。ビクッと田島の肩が揺れた。




「ぅおっなに?」

「髪の毛にチョークの粉ついてるよ」

「えーマジ?とってとって!」

「はいはい、今やってるわよ」




さっさっと、チョークの粉をはらう。その間、田島は目をぎゅと閉じており・・・・・あれ、可愛い。
その表情を見ていたいがために、しばらく何もついてない髪の毛をはらう。
(うん・・・可愛い、なぁ・・・)




「・・・なーまだー?」

「あっ、うん、もう平気だよ!」




ぎゅーと閉じられていた目が控えめに細く開けられた。
そこでハッとなり慌てて手を引く。
やだ、私ってば何してんのよまったく!
さっきの自分らしからぬ行動に頬がだんだん赤くなるのを感じる
くぁっ・・・もうっなんなのよ!!
そんな顔を見られたくなくて、咄嗟に顔を俯ける私。
すると、田島は何を思ったか、俯く私の顔を覗き込んできた。
ちょっ、ちかっ・・・!!




「おーい、どうかしたのかー?ー?」

「な、っんでもない!あるとしたら、あんた近いのよ!」




「?そうか?」 私が両手を突っ張って田島の顔を遠ざける。
「わぷっ」と前からなんとも間抜けな声が聞こえた。
頭を左右に振って田島を見ると、不思議そうに首を傾げて私を見てる田島が。(も、もうこっち見んな!)
見てる田島に対して私はそれに睨んで返すと、田島はポンと手を叩く。




「え?」

「忘れてた!」

「な、なに!?」

「だからー、好きって言って?」




そう言って、不思議そうな顔から一変、にぱっと笑顔になったと思ったらまたまたずいっと顔を近づけてきた。
驚いて思わず膝を机裏にぶつけた。(いっつぅ・・・っ!!)




「うわっ・・・今机浮いた!」

「・・・う、浮いてません」

「ぶつけたんだろー!」

「ぶつけてなんか・・・あるやい!ちくしょう!」




私が机裏に膝をぶつけたことを知ると、田島はケラケラと笑い出した。(あぁ殴ってやりたい!)
くっ、少し悔しげな顔をしたら、田島が少し大人しくなって口を閉じたかと思えばまた「なぁ、好きって言って?」と言う。
今度は私が不思議になり、首を傾げる。




「・・・えーと、なんで?」

「もちろん、好きだから!」




「当たり前だろー」って頭の後ろに両手をやりながら、こいつはさも当然かのように言うが・・・それは、どういう意味なのだろう。




「・・・えーと、ごめんそれはlikeの好き?」

「like?あー・・・likeはたしか好きって意味だよな!」

「いやまぁそうだけど・・・・」




って、私なに英語で聞いてんの!?普通に「友達の好き」って聞けばいいじゃん!!
なに「likeの好き?」とか聞いてんの!?
余計なんか恥ずくない!?つーか恥ずい!!
一人、自己嫌悪に陥っていると田島が「あ!」と声を漏らした。




「な、なに?」

「likeってさ、好きだよな?」

「うん、そうだけど。(こ、これ以上そのネタを引っ張るな・・・!)」

「loveも好きだけど、likeの好きより上だよな?」

「あー・・・まぁ、そうかも?」




首を傾げながら、軽く中一の問題であろう質問に答える。
・・・別に間違ってないよね。
てか、loveは愛してるって意味な、わけだし・・・うん、間違えてないぞ、私・・・!だから自信持て・・・!
なんともいえない不安に駆られてる私はまた黙りこくってしまった田島を見る。
首を傾げて手を顎に添えて目を閉じて・・・何やら悩んでるもよう・・・だが、なんて似合わないんだろう・・・
田島ってさ、とことん悩む姿が似合わないと思う・・・すごい失礼だと思うけど、心底そう思うよ。




「た、田島?」

「んー」




なんだかこの変な空気に耐え切れなくなり、田島に声をかけた。
返ってきた返事は生返事。ど、どうしたこいつ・・・
少し心配しながらも途中で書くことを放棄した日誌をまた再開する。




「あのさー」

「なに?」

「loveって愛してるって意味だっけ?」

「・・・あーうん、そうだよ」

「じゃあlikeじゃねぇや!」

「は?」




日誌に向けていた目を田島に向けると、嬉しそうな顔で私を見ていた。
は?となった私の目を見開いていて田島のその顔を瞳に焼き付ける。
やっと再開した日誌はもう止まってしまった。




「だからー、おれの好きはlikeかって聞いたじゃん!」

「え、あ、うんそうだね」

「そんで、おれがいう好きはlikeじゃなくて、」




パッと私が握っていたシャーペンを奪う田島。(はぁ!?)
急いで取り返そうと腕を伸ばすと、田島の手に強く掴まれた。
そして、勢いよく引っ張られ、田島の顔が目の前に!(ギャー!!)
にぃっと笑うと田島は私の鼻に小さくキスを落として、口を開く。(っっっ!!)







「おれの好きはlove!の方!」






(だから、おれと付き合って!)


あんなことされて、こんな近距離で、あんなに輝かしい笑顔でそんなこと言われたらさ、
誰でも断れないと思うのよ・・・!
そうだよ、そう!これは不可抗力なのよ!
田島にそう言われた直後、口が勝手に「喜んで!」って言っちゃったのは!