例えば、 野球やってるときボールを目で追ってしまうみたいに、 ある人物をいつも目で追ってしまう。 別に考えたくも無いのに、そいつのことを考えてしまう。 一日そいつに会えない日があると、何故だか気持ちが沈んだり、 会えたら、何故だか変に気分がいい。 これって明らかにおかしいよな。 そう俺のベットに図々しくも寝っ転がっている奴に言えば、そいつは目を丸くして固まった。 それから、のそのそと身体を起こしあぐらで座ると、俺の顔を見て瞬きを数回してから目を閉じ顎に指をそえる。 何分経っただろうか。だいたい五分経ったくらいにようやく、悩むようにうーんと唸っていたそいつは、 目を開いて「それってさ、おかしいんじゃなくて恋しちゃったんじゃないの?」と言った。 「恋?」と俺が聞き返せば、「うん、恋。恋愛の恋だよ」と笑顔付きで答える。 恋、か・・・・自分の中で繰り返す。 目の前で「ふぅん、隆也が恋かー・・・うわぁなんか想像してなかったわぁつぅか恋という言葉が激しく似合わないね!」 などと失礼なことを抜かしている奴を見つめ、顔を俯ける。 ・・・恋か・・・。この言葉を繰り返せば繰り返すほど、なんだか胸が熱くなってきて、心なしか顔も熱くなってきた気がする。 そんな俺を見られたくなくて、俯いた時点で見えないだろうに反射的に右手で顔の下半分を隠してしまった。 はぁ、と熱い息を零す。ちくしょうなんか熱いし恥ずかしい。俺の目の前には、未だひたすらべらべらしゃべってる女。 なにやら恋について語っているらしいが、今の俺の耳にはろくにその話は入ってこない。 ちらり、少しだけ顔を上げそいつを見る。そこにいるのはお隣さんでずっと学校も同じの幼馴染。 しかし、いつも見ているはずの彼女は、今改めて見るといつの間にか大人っぽくて綺麗になっていた。 アホやバカなところはちゃんと健在しているが・・・やはり、幼かった頃とは違う雰囲気が彼女を纏っている。 じっと見つめていると、そいつは俺の視線に気づいたのかべらべらとしゃべっていた口を閉じ不思議そうに首を傾げて「隆也?どったの?」と言った。 それに俺は「いんや、別に」と返してまた頭を俯ける。 するとそいつは「そう?あ、それでさー」とまた話を再開させた。 少し目が合ったというだけで、さっきから心臓がやけにうるさく鼓動する。 彼女の言ってたことをもう一度、心の中で呟く。 恋・・・・・。 そこで浮かぶのは、彼女の、目の前に座っている奴の顔。 どうやら俺は、 彼女に恋をしてるもよう。 (、と口に出せば自然に緩む頬と熱くなる頬、そして心) (あぁ、『恋をしてるもよう』じゃねぇなこれは完全に『恋してる』だ)