放課後、体育館裏、目の前には可愛い女子。
ここから連想するものと言ったら、やっぱり告白だ。
うん、だよな。どっきどきの雰囲気だよな。
だけど、俺の場合は違う。それは前回でわかっていたことである。
ぎゅっと握り締めた手のひらは、汗ばんでいて少し気持ち悪かった。
「あの、浜田くんにね、どうしても伝えたいことがあって・・・・・」
俯き加減で言うの表情は俺には見えなかった。
心なしか少しの声が震えている気がする。
身体もなんだか少し・・・震えてる?
どうしたんだろう?相談してきた友達と何かあったとかか?
いや、むしろ風邪?ここ寒いもんなぁ・・・・・・風邪!?
それヤバくないか!?
あ!じゃあ顔俯けてるのも体調が悪いから!?
が少し震えている理由をごちゃごちゃ考えてたらなんだか嫌な想像ばかり浮かんできて、
俺は慌てての顔を覗き込んだ。
「、大丈夫かっ?」
「へっ!わ、わわわ!!」
「やっぱり・・・!」
覗き込んだの頬は赤く染まっていて目が軽く潤んでる。
これは風邪の症状に違いない・・・!
すぐに俺はに背を向け「さ、ほら乗れ!」と言った。
今の俺は自分で言うのも何だが結構かっこいいと思う。
だが、いっこうに背中には重みは来ない。
不思議に思って後ろを振り向けば、困ったように眉を下げオロオロしてる。
それに首を傾げながら、俺はの名前を呼んだ。
「あの・・・?」
「あっ・・・えと、そのね、」
「?どうした?」
「浜田くん、こそ・・・どう、したの?急に・・・」
「?だって熱があんだろ?ほら、立ってるのも辛そうだし・・・だから送って行こうかと・・・」
「ね、つ・・・?」
今度はが不思議そうに首を傾げる。
・・・あれ?熱じゃないのか?
いやでも、今も顔真っ赤だし・・・だから風邪・・・え、風邪だよな?
そこで、はっとなる。
俺、ちゃんとに風邪か確認してないで一人勝手に騒いでた・・・?
次の瞬間、先ほど自分で結構かっこいいとか言ってた自分を殴りたい衝動に駆られた。
とりあえず、なんだか顔が熱くなるのを感じながら、咳払いをして立ち上がる。
「えーと・・・もしかして、俺の勘違い・・・?」
「えーと・・・そう、なるかな・・・」
なんて恥ずかしいんだろう俺。
の苦笑を見たら、余計恥ずかしさが増す。もう一度言おう。なんて恥ずかしいんだろう俺。
苦し紛れに笑えば、も控えめに笑う。
それから「それで、さっきの話の続きなんだけどね・・・」といつもより小さな声で呟いた。
その言葉に心臓がドクリと音を立て、頬の筋肉が引きつる。
そうだった・・・にまた呼び出されたのは、俺のことを好きだという友人のためだ・・・。
忘れかけていた事実に気分が沈む。
人に好かれるのは嬉しいが、やっぱり好きな人に好かれることが一番の幸せだ。
たとえ、の友達が俺のことを好きでも、俺はその気持ちに答えてやれない。
俺は・・・、
「あのね、浜田くん・・・」
「あー、その、ごめん。ちょっと、待って」
「え・・・?」
俺は話そうとするの言葉を遮った。
なんか、これじゃダメだ。
目を閉じて大きく深呼吸をして、を見る。
俺は、が好きだ。
こんなこと思うのはおかしいかも。
だってとまともに喋ったのは昨日が初めてだ。
でも、昨日からのこと思い出すだけで、すごく顔とかが熱くなる。
そういうのって、恋、だろ?
俺はに恋してしまったんだろ?
友達のために一生懸命になる優しさとか、ふわっと微笑むとことか、そんぐらいしか俺はのことあんまり知らないけど、
好きだ。
にはものすごく悪いと思う。
友達が俺のことを好きだと言うのに、俺はのことが好きだと言おうとしてるんだから。
・・・しかし・・・、告白なんてどうすれば・・・。
ここで問題が発生した。
困ったことに俺は告白なんてしたことないから、こういう場合どうやってしたらいいかなんてわからない。
俺の言葉を待っているからすぐさま目を逸らす。
え、こ、告白って「好きです」って叫べばいいのか?
・・・いやいやいやもしそれで誰かに聞かれたらやばいよな。
俺としては、待たしちゃってるし早く言いたいんだけど・・・
あ、じゃあ軽めに「俺好きなんだよね」とか・・・?
・・・それだったら振られたときに「冗談だ」って言えばまだ気まずくなったりとかしないよな。
お、それがいいんじゃね?おお、そうしよう!
頬を両手でパーンと叩けば、少しだけだけど勇気が出た。
に目線を戻せば、ちょっとびっくりしたような顔をしている。
そんなのこと可愛いなぁなんて思いながら意を決して口を開く。
いくぞ!男、浜田良郎!
「あ、あのな、!!」
「は、はい!」
「俺もに言わなきゃいけないことがあって・・・っ俺昨日からが好きです!」
「・・・・・・・・へ?」
・・・・・昨日からが好きですってなんですか俺。
俺との間に微妙な空気が流れる。
俺はというと頭が真っ白だ。
いや、昨日から好きですとかおかしくね?おかしいよな?
これは絶対振られるよな。いやいや、元から希望なんてなかったわけだけども!
冷や汗をとめどなく流しながら、の反応を待つ。
その間、心臓が破裂しそうなぐらいバクバク鳴ってる。
そして暫く固まっていただけど、大きく目を見開いたと思ったら顔を俯けて
「嘘・・・」と震える声で言った。
ここで嘘だ冗談って言ったらを混乱とかさせないですんだかもしれないけど、
ここまできたら、もう冗談とかで済ましたくないと思った。
ていうか済ませられない感じだ。
だから、俺は「嘘じゃない、んだけど・・・」少し声が震えてしまったけど、にそうはっきりと告げた。
「え、っと・・・、」
「ほんといきなりごめんな。でもなそのー・・・の友達には悪いんだけど、俺はが好きだから
その子とは付き合えないっていうかー・・・あー・・・」
うまく口が回らなくてしどろもどろになる言葉。
が顔を俯けたまま、上げてくれないのがなんとも切ない。
あー振るならさっさと振ってくれ・・・そしたら俺はすぐにの前から猛ダッシュで消えるから!
俺はもう振られる準備は万端だった。
振られる前提の告白だから、振られても全然怖くない!
泣きたくはなるだろうけどな・・・。
あと、人生初の告白は変な告白だったが、それについては今は泣かない。後で泣く。
ぐっと拳を握り締めて、の「ごめんなさい」はまだかと心で思いながら、待つこと数分。
がようやく顔を上げた。
その目にはうっすら膜が張っていて、眉は寄せられてる。
「浜田くん、」
「は、はい」
「私・・・」
緊張でごくりと咽が鳴った。
真っ直ぐ俺を見つめてるから目が離せない。
やっぱり、って可愛いな。
俺、振られるにせよに告白できてよかった。
俺のこと好きだという友達には感謝しないとな。
と話せるきっかけをくれたんだから。
俺も目を逸らさないようを真っ直ぐ見つめ、の次の言葉を聞き逃さないよう耳を澄ませた。
「私、・・・私も、浜田くんが好きです・・・!」
「・・・・・・」
が発した言葉に口があんぐり開いた。
あ、れ?今はなんて言った?俺の耳はどんだけ都合良くできてんだ?
が俺のこと好きって・・・・・・・・・・マジで!?
「え、ええええっと、え?ご、ごめん、え、今なんて・・・」
「私も、好きって・・・言い、ました・・・」
頬を先ほどより赤らめながらはふわりと俺が好きだと思った微笑みで、そう言った。
この時俺は、
人生初の告白は、
人生最後の告白だと思いました。
(えっ、ええええっ!?うわっ・・・すげえ嬉し・・・っいやでも、友達のことはどうすんだ?
やっぱ・・・まずいよな?)
(えっ?あー・・・あ、あれはね、実は浜田くんにどうやって話しかけたらいいかわからなくて・・・
それでそのことを友達に相談したらじゃあ私を使いなさいって言ってね、それでね、)
(え、ということは・・・俺のこと好きな友達は・・・いない?)
(う、・・・そう、です)
(つまり嘘・・・!)
(ご、ごめんね浜田くん!!騙すみたいなことして!)
(あああああっ、そんな頭下げなくていいって!つぅかむしろそれはそれでよかった!!
それに、そんな嘘があったから、こうしてー・・・まぁ、その、とめでたく結ばれたー・・・という、か・・・)
(!そ、そうだね!)
(まぁー・・・・そのー、これからよろしくな、)
(っうん!よろしくね浜田くん!)