ウィーンとなって開いた自動ドアにすかさず挨拶をする




「いらっしゃいませこんばんは」




今日も笑顔が満点な私はとてもいいコンビニ店員だ
























「あれ、じゃん」










いかにも私はですが、言葉を発しそうになったのを慌て飲み込む。 おいおい冗談じゃねぇよなんでここにこいつくんだよここはてめえん家から遠いだろうが。 これも慌て飲み込む。 いけないいけない、私は素晴らしき優秀なコンビニ店員よこんなことで今までの実績をぶち壊してたまるか。 いや別に社員とかじゃなくアルバイトだけどさ、優秀だから給料上げてもらってんだよね内緒だけど。 ニコニコと笑顔絶やさずお客様から顔を逸らした。










「おいシカトかよ」

「お客様、お手洗いは店内の奥にかかっているプレート場所にございます」

「誰も便所に行きてぇなんて言ってねぇだろ」










バカヤロウ、てめえなんか糞して帰れって意味だよ気付よバカヤロウ。 お客様は心底ムカつく顔で私がレジを担当するカウンターにムカつく足取りでやってくる。










「はい、お客様はプライスレスですねありがとうございました」

「まだなにも買ってねぇよ。つぅかプライスレスってなんだよ」










プライスレス知んねぇのかよ。なめんな、お金に代えられない価値が・・・・・・ってないじゃんこいつ。 いけない、言葉を間違えたな。 もうなんでもいいや、とりあえずさっさと帰りやがれですよこのやろー。










「他のお客様のご迷惑となりますので、この場から離れていただけないでしょうか?」

「他のお客様って・・・俺以外客いねぇじゃん」










ホントだよね。いつもは結構いんのにさ、なんで今日に限っていないんだろうね。 お客様はレジに肘をついて眠そうにひとつ欠伸をする。 ほら、眠いんなら帰れっての。










「あ、そうだ。お前バイト何時に終わんの?」

「私ここに住んでるんで終わるとかないです」

「高校生は確か10時までだっけか?じゃああと少しだな」










マジうぜぇんですけど、本気でうぜぇんですけど。 私の答えた言葉をガン無視で自己解決しやがった。










「送ってってやるから早く着替えろよな」

「・・・」

「なんだよ、その心底嫌そうな顔は」










実際嫌なんだよ。 そんな私の心情を理解できる脳を持ち合わせていないお客様はニヤついた顔でレジに置かれてるチロリチョコで遊んでる。 遊ぶくらいなら買えよ。 ついに素敵なコンビニ店の員私の顔が崩れかけようとした時、










「あ、ちゃんもうあがっていいよ」

「っ・・・はい、店長」

「お、やっとか。早く着替えて来いよ」










うっせぇよお前マジ存在うっせぇ。 今日ほどバイト終わらなきゃいいのにとか思った日はないと思う。 店長にかけられた言葉により、私はしぶしぶ中に入った。 ホントいつもならよっしゃあ!とか思うんですけどね。 いそいそといつも以上に時間をかけて学校の制服に着替える。ゆっくーりゆくーり。 その間にあいついなくなっちゃえばいいよ。










「遅かったじゃねぇか」










ちくしょう! 私の願い事は即座に破れた。 私が店長に挨拶して店を出たら、これだ。 バイト終わりで疲れきった私を待ち受けていたのは、 自動ドアの横でヤンキー座りしてるお客様もといクラスで何かと突っかかってくるクソ野郎こと榛名元希だ。 店の前でヤンキー座りとかガラ悪いよあんた。










「あ。これさっき買ったんだよ・・・だからお前にやる」

「え。あ、どうも」










突き出されたものはペットボトルのサイダー。 あ、どうしよう。私炭酸苦手なんだけど。










ん家ってこっちだろ?」

「そうだけど・・・え、なんで知ってんの?」

「!!た、たまたまだ、たまたま!」










夜に大声でたまたまを連呼するのはやめていただきたい。 ちょっと榛名から距離を取る。 てか、たまたまで人の家知るとかどんだけだよ。 そう思いつつズンズン前を歩く榛名の後ろを付いていく。










って毎週あの時間にいんの?」

「まあ・・・いるね」

「ふぅん」

「なんで?」

「別に」










たいして話すこともないから、今のこれで会話がぶっつりと切れた。 ホントもうなんなのこの状況。 軽くきまずいなぁなんて思いながら歩いていると、榛名が止まってこちらを振り向いた。










「な、なに」

「家。」

「あ、お、ホントだ。・・・てかマジで私ん家知ってんだ・・・」

「っだからたまたまただっつの!!たまたま!!」










いや、私ん家の前で大きな声出さないでよ。近所迷惑になるんですけど。 てかそこまでムキになる内容でもないのに、何故にそんな突っかかる。 でもまぁ送ってもらったことは事実なので、一応お礼は言っとくか。










「ありがと」

「っ!!お、おう・・・」

「じゃ」

「おう・・・あ、あのよ」










お礼も言ったしで家に入ろうとしたら、榛名に呼び止められた。 送ったんだからなんか寄越せと言って来たらとりあえず殴ってやろう。先ほど貰ったペットボトルで。










「・・・なに?」

「その・・・来週もさ、」

「うん」

「バイト終わったら送っててやるから」

「・・・・・・・は?」

「じゃ、また明日な!!」

「は、え、ちょ・・・はぁ!?」













え、待って待って、え、あいつなんて言ってた?え? 猛ダッシュで私ん家から遠ざかっていく後ろ姿に頬が引きつる。 来週も、・・・バイト終わったら送っててやる・・・って言った・・・? え、ちょ待てよ。ないわ・・・。 家の前で私は思わず頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。 榛名の新手の嫌がらせに私は盛大な息を吐く。もう二酸化炭素大放出だよ。 あー明日マジ会いたくねー。

























『店長、来週のシフトなんですが・・・変えてもらってもいいですか?ちょっとあのー・・・・・・え?ダメ?あ、そうですか・・・はい、いえ、 まぁ大丈夫です。はい・・・はい、ありがとうございました。では失礼します・・・。ちっくしょおおおお!!』








叫びながらベットの上に携帯を投げ捨てたら「うるさいっ!!!」とお母さんに私の何倍もうるさい声で怒鳴られた。 ・・・ちくしょー。