「私は思うわけ、栄口、あんたもったいない」

「・・・は?」






俺の前の席に座りながら、偉そうにクラスメイトのがそう言い放った。 相変わらず言うことが突発的でよくわからない。 行動もよくわからず、彼女は女友達がいるくせに何故か昼飯をいつも俺たちと一緒にしている。 今日は巣山がちょっと用事でいないから、俺とだけだけど。 ・・・別に、嫌だっていうわけではないんだけど、やっぱり俺だって思春期なわけで、 こうやってが俺達といつも昼飯を食べてくれるとか思うと少しばかり期待とかしてしまう。 ・・・ハッ!いや違う、今はそんな話じゃなかった・・・! 考えている間には弁当を食べ終わり食後のポッキーをポリポリと食べていた。 俺も慌てて弁当の中身をかきこむ。 だいたい半分まで食べたところでさっきのの言葉を問おうとしたら「だってさ」とが言葉を続けた。






「ん?」

「栄口ってかっこいいんだから、もうちょっと女子にがっついてもいいんじゃないかなって」

「っ!?、は、はぁ!?」

「うわ、からあげ落っことしたよ。もったいな!」






あ、ホントだもったいな・・・じゃなくて!! に言われた言葉が頭の中をグルグルと回り、顔がじゅわっと熱くなった。 落としたからあげを弁当のフタに置いてを見やれば、今度はチュッパを咥えて平然としてる。 な、なんか俺だけ動揺して恥ずかしくないか・・・? とは言っても、あまり言われない言葉に完全に頭が混乱してしまっていて、冷静さを取り戻すことは出来ない。 しかも少し気になっている子から言われたら、そりゃあさ!無理だろうよ!






「え、や、俺が・・・か、かっこいい?」

「うん?うん、そうだけど」

「冗談?」

「マジだけど」






いやだからなんでそんな平然と言うんだよ・・・! ケロリといった表情で、俺を動揺させる言葉ばかり言うにどうしたらいいか頭を抱える。 やばい・・・なんか胃が痛くなってきたかも・・・。






「ていうか栄口って好きな子とかいんの?」

「すっ・・・さ、さっきからなに!?なんなのこの質問!」

「単なる好奇心ってやつ?」

「こ、好奇心って・・・!」

「あははっ栄口ってば顔真っ赤!」






っ誰のせいだと・・・! ケラケラと笑っているからこれ以上笑われないように顔を机にふせる。 弁当がまだ残ってるとかそんなことわかってるけど箸を持つ気にもならない。 ドキドキと馬鹿みたいに心音がうるさくて全身熱くて・・・俺、今すごくかっこいいって言葉からかけ離れてると思う。






「栄口ー?」

「・・・なに」

「お弁当残ってるよ?」

「知ってる・・・」






ああ、やっぱりはよくわからない・・・! ホントに何考えてるんだよこいつ・・・。 なんだかめちゃくちゃ反応してる俺は馬鹿馬鹿しくないか・・・? そう思ったら心の底からため息が出た。 そうだよ・・・はいつも通り何気なくなんとなく言ったことに何過剰反応してんだか・・・本当にこういう話題慣れてなさすぎて恥ずかしい俺・・・。 突発的な発言は今に始まったことじゃない。 あー・・・なんだか今度は違う意味で顔が熱くなってきた。 巣山帰って来るまでずっとこうしてたい・・・の顔見れない・・・。






「ねー」

「・・・」

「ちょっと、シカト?それとも寝てるの?もうすぐで昼休み終わるわよ?」

「・・・起きてる」

「ねぇ」

「聞いてるよ」






なおもうつ伏せたまま返答をしていると、髪の毛に違和感を感じた。 優しい手つきで俺の短い髪の毛に指を通す・・・の手。 ・・・こうやってすぐ俺の心を乱すんだよな・・・。 このの何気ない行動に俺はいつもドキドキさせられてる。 彼女の無意識の行動は質が悪いとしか言いようがないよ・・・。 言葉をかけてから黙ったまま何度も俺の髪を梳いてるは今何を考えているのだろう。 固まったまま動けない俺はただされるがまま。 しばらくそうしていたがお昼の終了を告げるチャイムが鳴り、ガタガタと机やイスを移動する音が聞こえてきての指が俺の髪から離れた。 少し残念だな・・・って俺、ほんといい加減にして・・・。 はあと長いため息を吐き出して深呼吸。 ・・・俺もいい加減顔をあげないとと思い、腕に力込めた時だった。






「あのさ、もし好きな子とかいないならさ・・・私のこと好きになりなよ」






ぽつり、周りの雑音がうるさく占めている空間でが小さく言ったことは漏れることなく俺の耳に届く。 勢いよく顔を上げれば、もうは背を向け自分の席に向かっていた。 急激に上がる熱に・・・咄嗟に俺の身体が突き動かされる。 頭が真っ白で、でも俺の頭いっぱいにはで、目に映るのもだけ。 手を伸ばして掴んだのは、の腕。 初めて掴んだ腕は俺や他の奴等とは全く違くて・・・細くて、思わず力が緩んだが決して放そうとは思わない。 驚いたように振り返ったの頬は微かに色づいていて、なぁ、これは・・・期待してもいいよな? 授業開始のチャイムが鳴る数秒前、かっこつけるなんて俺には似合わないしできないから・・・ただ思ってることを、今伝えたいと思う。













答えは、考えなくてもわかってる。





「もう、好きだよ」