榛名元希という人間は、私の苦手な部類に入る。
ちょー俺様で横暴で我侭ですぐ怒るし宿題やってこないし私のことチビって言うし(お前が無駄にでかいんだよ)、 何より優しくていい人な秋丸くんのことパシリに使うとこが信じられない。
ああ、訂正、苦手ではなく嫌いな部類だ。





「おい、チビ」





今日も私のいる教室にズカズカと入ってくる榛名。
他クラスのくせによく堂々と入ってこられるなと感心してしまう。
まあ見習いたくはないけどね。
ズズーと購買で買ったジュースを飲み、榛名を視界から消す。





「おい、無視してんじゃねぇよ」

「あーあーあー」

「ブス」

「しね」





わかってるけど榛名に言われると物凄く腹が立つ。
本当、ブスですいませんね。

イラつきでストローをがじがじと噛みながら、私の机の前に仁王立ちしてる榛名を睨みつける。
さっさと用件言って消えうせろ!





「うわっブスがさらにブスになってんぞ」

「うっさい。早く用件言え」

「今日の放課後部活休みになった」

「あっそう」

「だから俺の自主連付き合え」

「は?」





何言ってんだコイツ。
なんで私がそんな面倒なことを引き受けなきゃなんないわけ?
馬鹿じゃない?果てしなく馬鹿じゃない?





「いや、意味わかんない。私帰るし」

「はぁ?ふざけんなよお前」

「いやふざけてんの明らかあんたでしょ」





私の返事にめちゃくちゃ不服という顔をする榛名。
本当にコイツなんなんだろうか・・・。
呆れて口を開くのも億劫になっていると、同じクラスである秋丸くんが笑みを浮かべて私達のとこまでやってきた。





「本当に榛名ってのこと好きだよね」

「は、あ!?」

「うわ、ないわ。それはないよ秋丸くん」





開口一番、秋丸くんのありえない発言に苦笑とともに否定の言葉を返す。
やっと話通じる人が来たと思ったら何を言うのか・・・。
ありえなさすぎでよ。マジで、ない。
この後、「なんで俺がチビブス女のこと好きだなんて思うんだよ、お前バッカじゃねーの!?」と言う榛名のことが安易に想像できて、なんて不愉快なと思った。
しかしいつまで経っても榛名の怒声が聞こえない。
あれおかしいな、と思い榛名を見上げると、顔を真っ赤にしてパクパクと口を開け閉めしながら固まる榛名がいた。
は・・・?





「榛名?」

「っう、うっせーよ、バーカ!!」

「え?あ、ちょ・・・」





勢いよく教室を飛び出していった榛名に意味がわからず呆然としてしまう。
ええ、っと・・・?





「あー・・・もしかして図星だった、みたいな?」





乾いた笑みを漏らす秋丸くんに顔が引きつる。
いや、・・・ないわ・・・。





「うわぁ・・・自惚れかもしれないけどさぁ・・・」

「う、うん」

「榛名って私のこと好きなの?」

「・・・かもね」





じゃ、じゃあ俺、自分の席に戻るね!と言いすごすごと自分の席に戻って行く秋丸くん。
私はこの後・・・どうすればいいのだろうか・・・。
え、あいつにさっき自主練付き合えとか言われたのに・・・え、会いづらッ!

















ちょっと意識してみた、苦手なあいつ。












「おい、チビおせぇよ!」 「・・・やっぱお前しね」






(秋丸くん、やっぱりアレは君の気のせいみたいですねー)

(心臓マジうるせえ・・・!)