わたしはいつも通りベポと甲板でひなたぼっこしていた。 今日は風もあっていい感じ。 すごく気持ちがいい。 隣に目を向ければ、うとうとしてるベポがいる。あぁ、ものすごく可愛い。 だけどそれを言うとベポは拗ねてしまう。 なんでも「かわいい」より「かっこいい」のがいいらしい。 そんなこと言う時点でベポはかっこいいよりかわいいの部類に入ると思う。 ふふっ、小さく笑いを零せば少し潤んだくりくりの瞳は私を映した。








「ん・・・どうしたの?」

「ううん、何でもない。気にしないで」

「そう?・・・それにしても気持ちいいねーキャプテンもくればよかったのに・・・」

「キャプテンは読書で忙しいんでしょ。しょうがないよ、だってあの人三度のご飯より読書が好きなんだから」

「うーん・・・でも、」

「我侭言わないの。それとも私だけじゃ不満?」

「えっ、違うよ!!おれそう意味で言ったんじゃ・・!」

「ふふっ大丈夫、わかってるから」








そう私がからかうように言えば、ベポは頬を膨らまして「ひどい」とそっぽを向いてしまった。 まったく、そんな行動すべて可愛いっていうのをわかってないわね、この白熊さんは。 私に背を向けるベポに「ごめんね」と一言投げかければ、すぐさまこちらを向くベポ。 口元に手を当ててふふっ笑いを零しながら「ちょっと困った?」と問いかけてくるベポに 私は「ものすごく困ったよ」と返した。 私の答えにベポは嬉しそうに笑って それから仰向けに寝転がって暫くすると隣から小さな寝息が聞こえてきた。 その規則正しい寝息を聞いてると私まで眠くなってくる。 んー・・・私もこのまま寝てしまおうかしら・・・。 意識を少しずつ手放してきた私はそのままゆっくりと目蓋を閉じようとしていた。














「よぉ」

「ん・・・?」








あと少しで眠りにつくというとこで、低い声とともに体を揺すられ私は閉じかけていた目蓋を開けた。 そこにいたのは不機嫌な表情の我らの船長。隈が目立つ瞳で私を見下ろしていた。怖いなぁなんて今でも思ってみちゃったり。 ・・・しかし、なんて珍しいのだろう。 この時間は部屋にこもって読書の時間なのに。そして私は眠いのに・・・。 そう思いつつも、船長が目の前にいるのにいつまでも寝てるわけにはいかないため私は目を擦りながら上体を起こす。








「あれ・・・どうしたんですか?キャプテンがこんな時間にこんな場所で・・・」

「俺がここに居ちゃ悪いのか?」

「いえ・・・そういうわけでは・・・」

「はぁ・・・ただの気分転換だ。それで出てきたらお前ら二人はこんなとこでお昼寝か。 いくら暖かいとはいえ風邪引くぞ」

「大丈夫ですよ。私達バカですから風邪は引きません」

「それもそうだな」








そこは否定してほしかったなぁなんて思う。くくっと咽で笑う船長は意地悪だ。 隣にいるベポはぐっすり寝ているみたいで、船長がいることに気づかない。 あんなに船長のこと気にしてたのに。それにふふっと笑いを零せば船長は不思議そうな顔をした。








「なんだ?」

「あ、いえ、ベポはやっぱり可愛いなぁと思いまして」

「そんなこと言ったらベポのやつ怒るぞ?」

「ええ、わかってますけど・・・ベポ可愛くないですか?」

「まあ・・・可愛いやつだな」

「ですよね」








船長が私とベポの間にしゃがみこみ、優しい顔をしながらベポの頭を撫でる。 ベポは相変わらず夢の世界にどっぷりみたいで起きる様子がない。 船長がベポの頭を撫でているのを見ていたら私も撫でたくなってきて手を伸ばす。 もこもこのふわふわ。すごく気持ちいい。 自然の顔が緩むのがわかる。あー今度ベポに抱き締められながら寝たいなぁなんて思う。










「はい・・・っ!?」

「お前の頭もさわり心地いいな」








ベポを撫でていた手が突如私の頭を撫で始める。 船長は先ほどと同じよう、優しい顔。 徐々に私の顔が熱くなってきたのがわかった。 ちょ、ちょっと、待って・・・なにこれ。 撫でられてる自分の頭が沸騰しそうなぐらい熱を持ち始めた。 ベポを撫でる手も汗がじわじわと・・・うわ、最悪。 ちょっとだけ湿ったベポの毛に申し訳なさがこみ上げる。 顔も熱いし・・・最悪すぎだわ。








「ん?なんだ、随分顔が赤いな・・・熱か?」

「っ、気のせいですよ!」








船長は意地悪そうに笑って、私の頭から手を離す。 まったくなんだっていうの、その顔は! なんともいえない気持ちで 上がった体温を冷ますように手で顔を扇ぐ。 夏島でもないのに、汗とかも出てきちゃったよ。 しばらくパタパタ手で仰いでいると、船長がぽつりと言葉を零した。








「え?何か言いました?」

「いや、たまにはいいかもしんねぇな」

「はい?」

「こうやってのんびりすんのも悪くねぇなって」








さっきとは違い、今度は優しく笑って、船長は私の隣に仰向けに寝転んだ。 そんな表情はめったに見れないから私は驚いたと同時に、必死に仰いで冷ましてた熱がまた再発してしまった。 船長はそんな私を見て、クツクツ笑いながら目を閉じた。 ・・・くそぅ、恥ずかしい。妙な羞恥心に駆られながら 自分も船長と同じく仰向けに寝転び、目を閉じた。 気持ちの良い風が通り抜けていく。 あ・・・眠い・・・。 そう思った直後に船長が何か言っていた気がするけど、 ベポの「このお肉美味しいなぁ・・・」と言う寝言に消され、何を言っていたのかわからなかった。 改めて聞き返すのも悪いし、重要なことだったらまた言うよねと思いあえて何も言わないでおく。 それに、うん、眠いんだもん。 とりあえず私は今度こそ睡魔に勝てないので大人しく寝ようと思う。
































「すきだ」

(・・・おい、返事は?)
(・・・)
(・・・・?)
(・・・すー・・・)
(・・・・・・)

(ありえねぇ・・・)