「好き」
「むり」
「なんで」
「あたしは謙也が好きから」
「・・・」
そう言うてはそっぽを向いた。
けど、だって知っとるやろ
「謙也、彼女おるやん」
「・・・うっさい」
「せやのに諦めんの?」
「それを言うならこっちのセリフや。あんたこそ諦めい。」
薄く膜がはった彼女の瞳に、またあいつを思って涙するのかと思うと、言いようのない嫌な気持ちが 俺の腹の中で疼く。
俺なら、お前にそんな顔させへんのに。
「なぁ、謙也のどこがええの?」
「そんなんいっぱいありすぎて思いつかんわ」
「俺じゃ謙也の代わりにはなれへんのか?」
「なれんよ」
きっぱりとはっきり言われた言葉に、今度は俺の目に薄い膜がはる。
あぁ、アホやなぁ俺も。お前も。
なんで、
こんなに一生懸命叶わぬ恋をして傷ついているのだろう。
どんなに叩いても、
この壁は崩れない
(近くにいるのに、僕らはまるで違う世界にいるみたいだ)