「あー・・・イラつく」








むかむかとする。 胃がぐつぐつする。 全部全部、胃の中にあるもの、いや、体の中のもの、すべて吐き出してしまいたい。 そしたら少しは楽になれるだろう。








「あーあーあー」








無意味に声を出した。馬鹿みたい。 あぁ、下らない。こんな私が下らない。 ぐちゃぐちゃの思考を解す術を私は知らない、知りたくもない。 いいや、このまま絡みに絡んで私の首を絞めて、早く楽にしてほしい。 ふっ、そこで漏れた嘲笑。 思いだけで死ねるわけないじゃない。 愚かな馬鹿げた自分の思考に呆れ果てた。








「馬鹿、だ」

「そうだね、は馬鹿だ」

「っ・・・!?」








誰もいないと思った。いや、いなかった。 だから私の独り言だけが響いていたというのに、その空間に違う声が響く。 それはよく知る声で、私の肩が大きく震えだした。








「せ、いち・・・」

「なんで、電気をつけないんだい?真っ暗で何も見えないよ?」

「見えなくて、いいの」

「どうして?」

「今の、私・・・ひどい顔してるから」

「いつもひどい顔してるじゃないか」

「黙れ馬鹿野郎」

「ふふっひどいな」








クスクスと柔らかい笑い声が私の耳から入り頭を混乱させてく。 真っ暗な空間、部屋のベッドで寝転ぶ私を精市はドアに凭れながら見ていた。 いつの間に・・・。ドアが開いたのにまったく気づかなかったなんて、よっぽど回りが見えていない証拠だ。 訝しげに何の用なの?と聞いたら、精市は答えなかった。 黙ってベッドまで歩いてきて、私の横に腰掛ける。








「何なのよ・・・」

「ご飯の時間なのに下りてこないっておばさんが心配してたよ?」

「・・・ご飯食べたくないって言った」

「そんなのダメに決まってるだろ。ほら、俺と一緒に下に行こう?今日は俺の家誰もいないから、一緒にご飯だよ」

「別に嬉しくない」

「素直じゃないなぁ・・・」








本心だ、そう告げようと口を開こうとしたがその前に精市が小さく「ごめん」と呟いた。 暗がりの中、私の頭を精市の手が撫でる。








「・・・なんのこと?」

「知ってるんだ。俺のこと好きだっていう奴らから嫌がらせ受けてるんだろ?」

「は・・・?」

「仁王から聞いたし、俺も見た」

「・・・違う。そんなの受けてない。私、別に、いじめられてもない」

「嘘。なんで言わないんだ」








責める訳でもない、静かな口調で精市は私に話す。 精市が言う言葉に対して返すとき、体が無意識に震えそうになった。 こんなことで悟られてはいけない。私は今までどおり、普通。普通でなくちゃ・・・・・・、精市と一緒にいれないよ。 素直じゃない私は今更精市に甘えるとかできないし、頼ることもできない。 だから、いいの。








「嘘じゃないホント」

「・・・はぁ。なんでそうまでして隠すかな・・・」

「事実よ。私は嫌がらせなんて受けてません。精市の勘違いです」

「・・・

「だから放っておいてよ・・・」








語尾が微かに震えてしまったけど、大丈夫よね? 私が強情なのを精市は誰よりも知ってるから、そう言ってしまえば精市はそれ以上何も言わなくなった。 ただ静かに私の頭を撫でるだけ。 時より指に髪を絡ませて、遊んでいる。 とても優しく、壊れ物を扱いみたいに触れるのが私の目頭を熱くした。








、」

「な、に・・・」

「俺はから離れるつもりないよ。もちろんが俺から離れることも許さない。これからもずっと一緒だ」

「・・・っ、意味わかんないよ」

「うん、今はわかんないままでいい。いずれわかることだから」








精市の手のひらが私の目蓋を覆う。 完全に視界が真っ暗になった。 あぁ、本当にこの人は・・・なんて優しいんだろう。 じわじわと目蓋から溢れるものを知らない振りして、彼は「だから今はおやすみ、。おばさんには俺がなんとか言っとくよ」と私の耳元で囁いた。


























目覚めのときは、

(またいつもの私に戻る。)