教室をせわしなく行き交う人。それを避けながら、早足である人物の元へ向かう。 途中色んな奴から、「誕生日おめでとー!」という言葉とプレゼントを受け取りながら。 俺はその人物のとこまで辿りつくと、そいつの前の席に座る。 すると、下向いとったそいつはこっちを向き「誕生日おめでとう、謙也」と爽やかな笑顔付きで言いおった。(その笑顔で教室におった女子の半数以上が悲鳴をあげたのは言うまでもない) それに対して「ありがとう」とこっちも負けじと笑顔で返す。(その笑顔に教室におった女子は何の反応も示さず楽しく談笑しとった。・・・別に寂しくないで) はぁ、と大きなため息を吐いて(あ、いや、ちゃうねん。別にこれショック受けたため息とちゃうから)、 白石の机に肘をつき口を開く。




「なぁなぁ白石くん?」

「なんだね謙也くん?」




白石も俺と同じく机に肘をついて気持ち悪い口調で俺に返してきた(あぁ、気持ち悪い。しかも近いねん・・・) 眉間に皺がよりそうになるのを耐えながら、俺がこいつのとこに来た理由を話す(うあーなんでやろ、めっちゃ白石笑顔やわぁ・・・腹立つー)




「俺になんか用か?」

「あんな、えーと、俺の・・・か、かわえぇ彼女のちゃんどこにおるか知らん?」

「自分の発言で照れんなや。ハッ!えーせやなぁ謙也のかわえぇちゃんの居場所は 俺知らんなぁ」




ハッと今鼻で笑ぉたで、こいつ。ちゅーか、なにいけしゃあしゃあと抜かしとんじゃ!! お前が嘘ついとんのは一発でわかるんやで!?ネタは上がってんやからな! 耐えていたというのに、今ので思いっきり眉間に皺が寄った。 そしたら俺の顔を見て、眉間を指差しながらニヤニヤする白石。・・・ホンマにこいつは・・・!




「おーこわ!眉間に皺寄ってるでー謙也ー?」

「うるっさいわ!お前、嘘やろ!やって金ちゃんがさっき白石とが一緒に歩いとった言うてたんやで!?」

「気のせいや。きっと金ちゃんは幻覚を見たんやで」

「えぇ!?そないなことあるかいな!」

「そやな。謙也やったらあるんやろうけど金ちゃんやからあるわけないな。なんてったって、金ちゃんの目は光輝いとるけど、謙也の目は腐っとるからな

「ちょっ白石!?今なに言うた!?君俺に対しての暴言ひどない!?」

「そうかぁ?いつものことやん」

「・・・そやね。お前はそういう奴やもんね」




ちっ。と白石に聞こえるように舌打ちをしたのに、その当の白石はもう俺のことやのうて窓の外を見とった。(イッラァ・・・!!) もうええ!ガタンッ、わざと大きな音を立てて立つと白石がこっちを意地の悪そーな顔をして見てきた。なんやその顔! そして「なら、あそこにおるけどなぁー謙也くん?」と窓の外を指差した。「ホ、ホンマに!?」と窓に食いつくが・・・誰もおらんやんけ・・・。 ちらりと白石の方を向くと、腹を抱えて笑ぉてる白石が・・・・・・・・フッ、しばいたろか、こいつ・・・・。 白石に騙され(ちくしょう!)俺はもう怒りマックスになり、教室を荒々しく出て行く。教室出たときに白石がなんか言うとる気がしたが、シカトしといた。














「あ!!」


フラフラと歩く俺に、またもや色んな奴が「おめでとー!」と声をかけてくれた。 爽やかに白石風に「ありがとう」言うたらみんな爆笑しよったいじめか。少し傷心なそんな俺は屋上へ向かおうとしたら、 今日ずっと会いたくて探してたが目の前に!!は俺と同じくフラフラと歩いとった。 朝から探してもいなくて、の教室にいってもその姿がなくて、 来とらんのかなぁと思ったんやけど「さんなら来とるでー。せやけど休み時間になるたんびにさっきからどっか行ってまうねん」てクラスの奴が言うとったから、 来ているのなら会えるやろ!と、意気込んでたのは二時間目の休み時間。只今の時間、掃除が終わって部活へ向かう放課後。(ちなみに教室掃除やった。プラス白石もや) これはもう完全に避けられてるとわかったんはさっき。やって、俺には会いにきてくれへんのに、白石には会いに行ってんやもん・・・!! ありえへんやん、なぁ?今日は俺の誕生日なんやで!?そや、誕生日や!何度でも言うで!今日は俺の誕生日や! せやのに、は俺が会いに行ってもいいひんし、会いにはきてくれへんし・・・!白石ムカツクし・・・!(あ、これはちゃうな)とにっかく、彼女としてどうなん!?の後ろ姿を見て沸々と湧き上がる怒りというか悲しみというか、 もうとにかくに問いたださんと気がすまん!俺は自慢のこの俊足で、考え事をしている内に大分離れてしまっていたの元へ。






っ!!やっと捕まえたで!」

「っな!?・・・け、謙也!?」




簡単に追いついたの肩をガシっと掴むと、はすごく驚いた顔をして俺を見た。 それから小さく「あーあ、見つかってもうた・・・」と呟く。 ・・・え、それどういう意味なん?その言葉に俺の目頭が一気に熱くなって、の細い肩を掴む手に力が入った。え、だって、なぁ? 痛みで顔が歪んだの表情に心が痛んだが、今は気にしてられん。やって、俺、今のの一言で傷ついてる心さらに抉られたんやもん。 (あかんあかんあかん!泣いたらあかんで自分!)




「け、謙也?」

「っ、な、なんで今まで避けてたん!?俺の・・・今日は、俺の誕生日やのに・・・っ!」

「ちょっ、痛いわ、謙也。放しぃ」

「質問に答えろや!なぁなんで!?」

「あーうん、今日が謙也の誕生日だってことは知っとるよ」

「じゃ、あ・・・・なんで?なんで避けとったん・・・?」




肩からはずした手のひらを強く握り締めながら、平然と突っ立てるを見つめる。 あぁ、あかんな。俺めっちゃひどい顔してそうや。 目とか潤みまくってぼやけとんもん。唇を噛み締めて必死に耐える。(俺は強い子男の子!彼女の前では絶対泣かんで!う、うん!)




「・・・なに泣きそうな顔してるん?」

「し、しとらん!しとらんよ・・・」

「はぁ・・・まったく・・・。今日なんで避けてたって・・・そんなんなぁ、全っ然おもろないからに決まっとるやん。」

「??」




意味がわからず釘をかしげる俺に、が少し呆れ気味で、背伸びをして制服の裾で俺の目元を拭った。 ぐずっと鼻を鳴らすと、はフッと笑いを零す。 なんや、人が鼻水を垂れそうになっとるのがおもろいんか! ギッと睨むと、さらには笑みを濃くした。(な、なんなん・・・?)




「まったく謙也はアホやなぁ」

「ア、アホッ!?」

「そや。愛しの彼氏が色んな女子からプレゼントもらっとんのやで?そんな光景を平気で見てられるほど、ウチ大人やないねん。そんなことも察しられん謙也はアホや。」

「・・・へ?」

「でもな、謙也にウチ以外の奴からプレゼント受け取らんでーなんて言うても困るやろ?せやからウチが見とぉないという理由で謙也避けとったん。これで、謎は解けたか?」

「・・・そ、そっやったんか・・・。よかったぁ・・・お、俺もしかして嫌われたかと思た・・・」

「嫌う?ウチがかぁ?ははっ、何言うてんそれは絶対ありえへんわ!だって、ウチこないにも謙也のこと好きやもん。」

「!!っ俺も、好きや!」




は恥ずかしがりもせず、俺を真っ直ぐ見て話してくれた。 つまり俺に会いに来てくれなかったんは俺が女子やらに囲まれたりプレゼント受け取るとこを見とぉないというのが理由で、それは所謂、嫉妬、というやつで・・・うん、普通に嬉しい。 潤みまくっていた瞳はもう完全に渇いとって、がクリアに見える。うん白石に言ってやったとおり、かわえぇ彼女が見える、で!ぱちぱちと瞬きをしながら、を見つめる。 そしたらみるみる内にの顔がにやけていく。えーと・・・なんでにやけるん?不思議に思っとると、この俺のどうしようもない嬉しさが顔に出てしまったのかわからないが、 その後が小さく噴いた。ちょっ、噴かんでもええやん。ジッとさらに見つめると、は笑いながら俺の頭に手を伸ばして、優しく撫でてくれた。 (うわ・・・めっちゃ気持ちええ・・・)




「ぷくくっ、ははっ、ありがとうなぁ。・・・あ、せや、謙也にまだ言うとらんかったな。」

「ん?なんを?」

「・・・誕生日おめでとー、や。」

「あ、あぁ、そやな・・・俺まだに言われてへんわ」

「せやろ?えーと、コホン。今日は愛しのかっこかわええ謙也くんの誕生日で・・・」

「ちょっ、なんやそれ!」

「・・・あんな、大好き。めっちゃ好き。ホンマ愛しとる。謙也に会えてホントによかった。ありがとう、ウチと出会ってくれて。好きになってくれて。
これからも、ずっとずっと傍におってな?というても、ウチは謙也が嫌言うてもずっとずっと一緒におるつもりなんやけどな!・・・改めて、おめでとう謙也」

「・・・・・・・・おう、ホンマにありがとう」

「・・・・・顔真っ赤やで、謙也」

「う、うっさいわ!」




の俺を見る視線があまりにも優しくて、俺の頭に乗る手のひらがあまりにも温かくて、俺はとてつもないくらいの幸せを感じてる。 に「ホンマ謙也はかわえぇなぁ・・・」と言われ「のがかわえぇよ!」って言ってやった。けど、なんや、そんなこと言うてしもた自分に照れた。 あかん、ダサすぎる自分。顔絶対にもっと赤なった・・・。それには満面の笑みで「やっぱ謙也はかわえぇよ」と言う。・・・はい、もう俺なんにもいいません。 言うても墓穴掘るだけやもん。 ちょっとダサすぎる自分にへこんでいると、が「あっ」という声を漏らした。




「??どうかしたん?」

「あんな、謙也にプレゼントあんねん」

「え?な、なに?」

「ちょっとかがんでくれへん?」

「こ、こうか?」

「うーん・・・もうちょっとやね!」

「?こう?、なんな・・・っ!?







頭に乗っとった手がいきなり頬に伸ばされ、両手でぎゅっと挟まれたと思たら、俺の唇に衝撃。 すぐ後にはちゅっという可愛らしいリップ音が俺の耳に届いた。 驚きで目を見開く。俺の視界には目を閉じたしか映っとらん。 ゆっくりと俺の顔から離れていくと同時に目を開いていくは・・・なんちゅーか、めっちゃエロかった・・・ちゃうな。えー・・・い、色気?そや!色気ありまくりで、目が逸らせんかった・・・。




「へへっ、これがウチからのプレゼントや!」

「っ、あ、ああありがとうな!!」




次には無邪気な笑顔で俺から離れたに少しだけ寂しくなる。 しかし、からのプレゼントが今日貰った中で一番嬉しかった。うん。 せやから、嬉しすぎてダサイことに相当どもってもうたが、まぁ、うん、しゃあないな。 やって、めっちゃ嬉しいんやもん!しゃあないて!うん! こんな素敵な可愛い彼女をもって俺は幸せもんや! 一人、ゆるみまくりの顔の俺をはクスクスと笑いながら、またもや、いきなり俺の胸倉を掴んで引っ張る。(ぅお!!) うわっとっと!とバランスを崩してに倒れかけてる俺に、はまた1つちゅっとリップ音を鳴らして俺の唇に口付けた(う、わわっ!)




















(突然のことで驚き、さらに、柔らかく甘い彼女の唇に酔いしれて、 キスした後に不様にも腰抜かしてしまったことは俺とだけの秘密である。)
ハッピーバースデー:
      浪花の純情ボーイ
















「うわー・・・熱いなぁ」

「うわー・・・めっちゃ目障りですわぁ。ちゅーか謙也さんダサッ。」

「あー・・・それは言ったらあかんことやで財前。・・・フッ、まぁええわ。明日にでもからかってやろか

「・・・部長、今めっちゃ悪い顔しとりますわ」
3月17日はスピードヲタクの誕生日やで!