最近、恋人である光くんが甘えん坊だ。
周りに人がいるときはさすがに抱き付いてこないけど2人きりの時はずっと、そう私が帰るまで光くんは私に抱きついている。
光くんの部屋のベッドを背に座っている私の腹部に顔をうずめて、何も喋らずひたすら私にくっつく。
なんかあったんかなーて思って聞いてみてもイヤか?と言われううんと答えてしまうのが私。
結局光くんがひたすら私にひっつく理由はいまだわからないのである。
周りに人がいるときはそばにはよくいてくれるけど手とか繋いだりしないし隣に座る場合は距離を置いて座られる。
私から距離を詰めても、光くんは詰めた距離の分だけ離れる。
それが少し悲しくてなんで離れるん?て聞いたら暑いんやとか真冬に言われた。
光くんは本当に不思議な人だ。










「光くん、ジュース飲みたい」

「ん」

「・・・光くんちょっとどいてくれへん?」

「無理」










テーブルに置いてあるジュースを取りたいにも光くんがくっついてて身動きとれない。
どいてー言うても一向に聞いてもらえない。
今の私は抱き枕だ。
まぁ・・・光くんに甘えてもらえるなんて貴重だし嬉しいし嫌じゃないんだけどね。
私が動こうとするのを止めて、素直に光くんに抱きつかれてると光くんがふと顔を上げた。
どないしたんかな?
首を傾げ光くんの眠そうな目を見つめつつ、私は光くんが話し出すのを待つ。
しかし話す気配がない光くん。
無言でジーッと見つめてくる。
えと・・・・・・寝ぼけてる?










「ひ、光くん?」

「ん」

「寝ぼけてる?」

「んーいや起きとる」

「ほな眠いんか?」

「んー・・・ん」










私の言葉にこくりと頷く。
その姿はいつも見てるクールでかっこいい光くんとは全く違っていて非常に可愛い。
私は不覚にも顔を熱くしてしまった。










「・・・、なんや」

「な、なんもあらへんよ」

「顔赤ない?」

「ちゃうもん、赤なってへん」










光くんが私の顔を下から意地の悪い笑みを浮かべながら見てきた。
先ほどの眠たそうな雰囲気は消えていて、私をいじる気満々な感じだ。
これ以上見られるのは耐えられなかったので光くんから顔をそらすと、下から伸びてきた腕に私の顔が固定される。
う、ひ、ひどい・・・・・・










「ひかっ光くん!」

「ぷっ・・・なんちゅう顔しとんねんお前」

「笑わんといて!私かてひどい顔しとるて思っとるもん!」

「は?・・・あーまぁひどい顔っちゃひどい顔やけど、可愛えと思うで?」

「なっ・・・ななななななに言うてん光くん!」

「俺の率直な意見」










ニヤリと笑う光くんに私は口をパクパクさせて顔をさらに熱くさせた。
あーもう、光くんには敵いそうにないわ・・・。
抵抗するのを諦めた私は光くんがいたずらに髪の毛を弄ったり、ふ・・・ふとももを撫でてくるのを必死で平静を保って我慢した。
そしたら光くんが面白くなさそうな顔をして、










「かがめ」










と一言呟き私の髪の毛を痛くない程度に引っ張る。
なんだろうと思いつつ、言われたとおり少しだけかがむ。
頭の上にはてなをたくさん飛ばしているだろう私の目を先ほどとは違う顔で見つめる光くん。
その瞳は微かに熱が籠もってて・・・見ていたら心臓が爆発するんじゃないかってくらいドキドキしてきた。
黙ったままの光くんに私が耐え切れなくなり私から口を開く。










「ど、どないしたん?」

「・・・」

「あの・・・また寝ぼっ・・・!?」










私の言葉は最後まで言い終わる前に光くんに飲み込まれた。
ちょっとだけ乾いた唇が優しく私のそれに押し付けられる。
目を閉じるどころか見開いて光くんの目を見つめ返してしまえば、動けなくなってしまった。
たった数秒、それでも私にはすごく長くて、息もできなくて、頭がクラクラしてしまう。










「・・・可愛えな」










ぽつり、その言葉を呟いてゆっくり光くんが離れていく。
私はものずごく恥ずかしくて恥ずかしくて死にそうになりながら光くんから目をそらしたくて顔を横に向けようとも、 光くんがそれを許してくれない。
いまだ顔は固定されたまま、彼の瞳からは逃げられないまま、
また光くんの顔が私に近づく。










「・・・好きや、。もっと、俺にお前をくれ」










少しでも動いてしまえば唇に触れる距離で光くんは、ピタリと止まった。
そして甘く体の芯がふるりと震えてしまう低い声で囁かれてしまえば、私は大人しく目を閉じて光くんを受け入れるしかないのだ。


















もっと、もっと、もっと、