別にね?悪気があったわけじゃないのよ。
たまたま、なんかの石に躓いちゃって、転んじゃって、ぶつかったの。
ほら、これ不可抗力じゃん。私悪くないじゃん。








「へぇ・・・そう。じゃあはこれについて何の謝罪もせず帰ろうとするのか・・・」

「・・・いやそのぉ」

「ふふ・・・そうだよね、は不可抗力で突っ込んだから仕方ないよね。この、花壇に、さ」







精市は静かに微笑みつつ、私が転んだことによってぐちゃぐちゃになった花壇を指差した。 ・・・いやでも確かに不可抗力だけども突っ込んだのは事実だし、ぐちゃぐちゃにしちゃったのも事実だし、けど、謝っただけじゃ許してもらえないと思って帰ろうとしたとかさ言えないよね。 ここは精市が大事に育ててる花があることは知ってたからさぁ余計私の足は花壇から逃げ出そうとしちゃったんだよね。 ま、だからといって逃げられたわけではなく、花壇に水を上げに来た精市にばったり出くわした。 きっと神さまは私が心底嫌いなんだね。







「そもそも、なんでこんなとこ通ろうとしたんだい?」

「・・・ここ突っ切った方が校門近いなぁみたいな?」

「そうか、のその横着さがこの悲劇を生んだのか・・・」

「ひっ、ごめっごめんなさい!!」







ぞわっと一気に冷気が漂ったこの空間で私は即座に土下座する。死にたくない死にたくない死にたくない! 何度も何度も土下座していると、精市が「いいんだよ。君に怪我がなくて良かった」と心配を滲ませた声で言うもんだから咄嗟に顔を上げる。 ・・・・・・・・・・・・上げなきゃ良かった。







「だけど、そうだね。花壇はこのままにしておけないな・・・もちろん花壇直すの手伝ってくれる、よね?」







笑顔だけど笑顔じゃない精市にニッコリと微笑まれ、さながら私は壊れた人形のごとく首をカクカクと縦に振るしかなかった。 そして花壇を元通りにするまで地獄のスーパータイムが始まる。







、そこに置いてある肥料持ってきて。引き摺ったら埋めるからな」

「(どこに!?)え、え、でも、これ30kgって書いてあるんだけど・・・」

「早く、持ってきて、くれるかな?」

「ウス!持ってくるっす!」







花壇をシャベルでサクサクやってた精市の目が鋭く光ったのがわかり、 自分はゴリラだからなんでも持てるという暗示を何度もし、何度も落とそうか引き摺ろうかと思いながら精市の元まで持ってきた。 腰ぶっ壊れるかと思った。







「次、そこの肥料」

「え!?待って待って待って!」

「待ちません」

「いやいやいや!これ、これの重さ見て!」

「たかが35kgだろう!」

「たかがって重さじゃねええええ!!30sで腰がアウトなんです!追加5sむり!!ホントむり!!」

「さーそろそろ種を植えようか」

「しーかーとー!?」







ふふっと柔らかい笑みを浮かべてるくせに、手では私に早く持って来いの合図を送る。コイツまじない。 今更ながらなんで花壇を横切ろうなんて思ったんだ自分と思った。魔王のテリトリーに踏み入るとか自殺行為なのわかれよ自分。 チィッ!!と舌打ちをすれば、精市がぐりんと顔をこちらに向けてきたので私は急いで肥料を持ち上げた。 うん、私今すんごいおっきなゴリラだからこれぐらい平気平気へいきへい・・・きなわけねぇだろうがァァァ!!! やはりプラス5sは一筋縄でいかんのだな・・・! 足がガックブルブルして前にまったく進めない。つぅか汗ぶわって出てきた、これまじやばい。 あと少しで落とす―――――そう思った瞬間に私の腕から重みが消えた。 思わず、きょとんしてしまった私に、面倒臭そうな声音の精市が私の名前を呼んだ。







「え、あ、はい」

「こんなのも持てないのか?」

「あ、はい、すいません。自分かなりの一般女子なもんで」

「チッ・・・使えないな」







私が足をガックブルさせ尚且つ汗もだっくだくさせて持っていたものを、 精市はケロリとなんでもないように持ち上げているのを見て、誰だよ病弱で儚げな王子様とか言ったのと思った。 ばっかじゃねぇの。妄想もいいとこだよ。こいつ35kg軽々持っちゃってるよ。しかも片手で。 その光景についつい立ち尽くすだけになってしまった私に精市は笑顔で「クズ」と吐き捨てるとさっさと花壇のもとへ戻った。 まあ、けどさ・・・・・・精市ってなんだかんだ言って、私が本当にできないとわかるとちゃんと助けてくれるんだよね。 でも、もしかしたら自惚れかもとか思うけど、それでもいいかなって思う。 こんな風に思ってなきゃさ、精市と幼馴染なんてやってらんない。まともに付き合ってたら多分引きこもっちゃうだろう。 とボーっと突っ立ったまま思っていたら、精市が私に雑草を投げつけてきたことにより先程の考えは一気に吹き飛んだ。 こいつやっぱ悪意の塊だわ。




















魔王との正しい付き合い方










「あれぐらいの肥料持てないとか・・・変なとこで女ぶるのやめた方がいいよ」

「いや、実際に私女なんですけど」

「ハッ」







なんとも残念な目で私を見ながら鼻で笑ってきたのでなんだかすごく悲しくなりました。