・・・非常に居心地が悪い。
朝のHRから、なんでだろうか・・・隣の席に座る丸井にすごく見られている気がする。
しかもなーんか目線がおかしんだよね。
なに?って聞こうしたが別に何も言ってこなかったので、たいしたことじゃないだろうと思い気にしないことにした。
――――そして、ずっと無言で見てきてた丸井が3限目の休憩時間にして私に身体を向けてきたと思ったら、とんでもない爆弾を投下してきた。






の胸ってパットなのか?」






ボキリ、握っていたシャーペンの芯が折れる。
・・・なに、え???今こいつなんて言った?
とても聞き間違えかと思ってしまう単語が聞こえた気が・・・。
パット??私の胸が・・・・・・・・なんだって?
思わず丸井を二度見してしまう。







「え、ごめん今なんて・・・」

「いやそう聞いたから・・・」

「いやいやだから今なんて・・・パ、パット?」

「おう。の胸がパット」






誰だそんな偽情報を流した奴はァァァア!!!
いやっ確かに!!私の胸はちっちゃいかもしれないけど!!!
聞き間違えかと信じたかった単語はどうやら聞き間違えではなかったらしい。
くそ、聞き返すんじゃなかった・・・。
頭を抱え込んで後悔する私に、丸井は容赦なくさっきの問いをもう一度繰り返してくる。
シカトしてれば諦めてくれないかなとか思ったけど、コイツうぜぇのな。
反応しなかったら叩いてきやがんの。
あまりのうざさとだんだん強くなる叩きに耐えられなくなり、頭を抱えるのをやめてとりあえず・・・、






「・・・まずね、パットいれるんだったらもっと胸大きくするんだけど」

「まぁ確かにそうだな」






こいつ・・・。
重い口を開いて言った言葉にすんなり納得してふんふんと頷く、丸井。
いや、確かに納得して黙ってほしかったけど、内容的に複雑。
自分で言っといてあれだけどね。






「つかさぁ、私の胸がパットだなんて誰が言ったの?」

「仁王」

「・・・あ?」






ここまで人をぶっ殺したいと思ったのは始めてかも知れない。
丸井に爆弾抱え込ませたのはあの野郎だったのかよ、そうなのか。
教室で一番いい席、窓際の一番後ろにいるであろう人物を睨みつけるように振り向いたところ、 思っていた人物とは全く違う人がいて焦った。
あわよくば怒鳴りつけようとしていたので余計にだ。
でもしょうがないと思う。
この怒り、晴らさずにいられるだろうか!
幼馴染だからって言っていい事と悪い事があんだろ!!
私、女の子なんですけど!!!
・・・ていうか丸井、お前それで私をずっと見ていたというのか。
目線がおかしかったのはそのせいか、コノヤロー。
この男も本当に失礼極まりなくて遺憾である!!
だけど、まだダメだ。
丸井の前に潰さなきゃいけない奴がいる・・・。
そう思い直し丸井にくるりと向き直った。






「丸井、雅治どこ?」

「知んねー。さっきまでいたけどな」






あんにゃろう・・・・・・。
ふつふつと煮え立つ怒りに拳を震わせ歯軋りをすれば、丸井が顔を引きつらせた。
ヒッとかも聞こえた。
うっせ見てんじゃねぇぞテメー。






「お前顔こわす、あーっと・・・あっガムいるか?」

「いらない。変わりにラケットちょうだい」

「なんでだよ。やだぜ?お前の犯罪に手は貸したくない」

「つっかえね!」

「うるせーよパット」






丸井ぶっころ。
殺意が満タンになったのでガムくっちゃくちゃしてる丸井の胸倉を掴み上げ腕を振り上げる。
が、直後のんびりとした声が私と丸井の名前を呼んだ。
聞きなれた声にバッと振り向けば、雅治が眠そうに欠伸をしながら私達の方に近づいてくる。
うん。






「雅治ころす」

「なんじゃ物騒じゃのう。やっぱりは女子じゃなか」

「ああん?」

「おい、仁王。の胸、パットじゃねぇじゃん」

「おお、そうか。まぁパットいれてるにしてはちっさいしな」

「ぶちころすぞテメェら」






丸井の胸倉を放し、今度は雅治の胸倉を掴み上げた。
おお怖かーなんてのん気に言う雅治に私の顔が引きつる。
しばらく睨みつけていたが、あることに気付いてしまい私はよろめいた・・・。
ちくしょう・・・世の中は常に理不尽だ・・・。
健気に生きてる私に全然優しくない・・・!
雅治の睫毛の長さが目にはいり悲しくなってしまった。しゅん。
改めてコイツと幼馴染にした神さまを恨みます、ジーザス。
そんなことを思っていると丸井と雅治がまた私の感の触る話をし出す。
ホントサイテー、マジケーベツ






「まっに胸があっても違和感だよなー」

「それどういう意味なの。丸井焼かれたいの?」

「もう陽には焼けてるっつーの」

「確かにわかるぜよ。が巨乳とか想像しただけで笑えて・・・ぷっ」

「笑ってんじゃねぇよマジ焼けしね」






雅治と丸井に盛大に舌打ちするとわざとらしく怯えだす二人。
コイツらこんな時だけ仲良しこよしでウザイんだよ!!
ああ、この湧き上がる殺意をどう抑えればいいのだろうか・・・。
ねぇ、神さま仏さま幸村さま教えてください・・・。
この震える拳をどう抑えればいいですか・・・?






「いって!!!っちょ、なんで殴ってくんだよぃ!」

「あ、やべ、震える拳抑えられなかったや」

「おーこわ!お前さんから離れとってよかった」

「次はお前だ」

「嫌じゃ」






神さま仏さま幸村さま、ダメでした。
震える拳は自制できず丸井に飛びました。
後悔はしてねぇけどな!!!!
にしてもーマジでーあー雅治くんむかつくー。
ほっぺが引きつりすぎて痛いわよチキショウッ!!!
ぼきりと指を鳴らし次は雅治だ・・・と思ったところで、雅治が視線を後ろに向けた。
つられて私も雅治の視線をたどってみると、もう数十秒で鐘がなることを知らせる時計が目に入る。






「お、もうそろそろ鐘が鳴るみたいじゃな。席に戻らんと」

「あ、マジだ。俺も戻ろうっと」






いけしゃあしゃあと雅治がそう言って自分の席の方に歩き出せば、続いて丸井ももう知らねと言うように身体の向きを戻した。
雅治にはあとで私の鉄拳を一発かまさないとやっぱり許せないので部活前に必ず捕まえよう・・・。
丸井は・・・。






「っで!!!なにすんだよぃ!」

「制裁」






隣の席なのを理由に、丸井の座っているイスを横から蹴っ飛ばしてやった。
そのままお尻割れろバカ。
ぎゃいぎゃいと丸井が喚いたが知らん顔で先生がくるのを待った。
ふと背中に視線を感じ、振り返ると雅治とバッチリ目が合う。
おい雅治、お前ニヤニヤ笑ってるけど次お前の番だからな。














(このブス!)(うっせデブ)(デブ)(雅治お前ホント燃やすぞ)