只今、四天宝寺のテニス部は学校の合宿所にきております。
昼はくったくたになるまで部員達はテニスをし、マネージャーである私もくったくたになるまで働きました。
働き蜂もいいところです。
金太郎くんがお腹が減ったといえば何か食べ物を渡し、光くんサボろうとしているとこを発見しては注意をしに行き何故か叩かれ、蔵先輩にはドリンクが薄いタオルがふわふわじゃないと文句を言われ、
ユウジ先輩には私が小春先輩を厭らしい目で見ていたとかなんとかイチャモンをつけられたりと・・・本当にマネジャーの仕事は疲れます。
というか、最近自分の仕事がマネージャーの仕事なのかがわからなくなってきました。
「はああああああ・・・・」
ご飯も食べてお風呂も入り終わり、ペタペタと自分に割り当てられた部屋へと向かう。
まだ合宿一日目ですが、私はもうくたばりそうです。
溜息だって盛大になってしまいます。
まあでもまだまだへこたれてはいられません。
なんたってまだ合宿一日目なのですから。
「ふふ・・・負けませんよ・・・」
いくら理不尽な扱いを受けてもあんな人達には屈しないぞ!
とりあえずは明日のために鋭気を養わないと・・・。
さぁ明日も頑張るぞ!と自分の部屋の前にたどり着き、意気込んだ時でした。
「ー!!何しとんねーん!始まるでー!」
「は、い?」
「早よう早よう!!」
「え、え?何がですか?ちょ、き、金太郎くん!?いたたたっ!!ちょ、腕もげます!」
金太郎くんがズダダダダと大きな足音と大きな声を上げながら走ってきました。
それを見た瞬間、私の中の警戒音がぐわんぐわんと鳴りだします。
とても嫌な予感がします・・・。
一瞬逃げようとしましたが金太郎くんの言っている意味がわからず首を傾げている間に、私の腕は金太郎くんに掴まれてしまい全力で引っ張られていく。
あああああとてもとっても嫌な予感が・・・!
「ああのっどこへ行くのですか!?」
「白石達の部屋や!」
うわもうこれ完全に最悪。
金太郎くんに目的地を聞いた途端、頭痛が私を襲う。
ああダメです行きたくないです寝たいです私激しく寝たいです。
悪魔達が潜む部屋へ引き摺られてく中、金太郎くんを説得しましたが私の腕を掴む力は緩むことはなく、気付けば魔王の根城が目の前に。
「・・・あ、あの、どうしても入ら「白石ー!連れてきたでー!」・・・」
「おお、金ちゃんご苦労さん」
「お前今まで何しとったん?何回も電話かけたんやけど」
「え、えっとお風呂に行ってたので携帯は部屋に置きっぱなしだったんです・・・」
「はぁ?」
「すいません・・・」
「まあまあ、しゃあないやん!風呂入る時に携帯持ってく奴なんて居らへんやろ?な!」
「謙也先輩・・・!」
「・・・そや、言い忘れてたんすけど・・・謙也さんさっきからチャック開いてますよ」
「!?」
「!!」
「お、おおおおまっそれ早よ言えやアホ!」
「すんません忘れてました」
「あ、せや、謙也なしてさっきパンツ見せとったん?」
「見せてたわけやないわボケ!ちゅうか白石おまっお前も気付いとったんなら早よ言え!」
「えー小春に言わんといてって言われててーんしゃあないやーん」
「やんっ蔵りんそれは言わん約束やでぇ!」
「小春!?それ浮気か!?」
「あははっ謙也アホやな〜!!」
カオスとはこのことをさすんでしょうね・・・、とぼんやりこの濃い空間を眺めます。正直関わりたくないです。
というか蔵先輩の部屋には本来ならば銀先輩と健先輩だけなのですが、何故か光くんと謙也先輩とユウジ先輩と小春先輩もいます。
・・・けど・・・あれ?千歳先輩がいない・・・?
そのことに気付いた私は、きゃいわい騒いでる中さきほどのことで部屋の隅でいじいじとへこみにへこんでる謙也先輩に聞きに行く。
「あのー謙也先輩?」
「ん?ああ、か・・・なんやお前も俺を笑いにきたんか・・・」
「ち、違いますよっそんなことするわけないじゃないですか!そんなことより聞きたいことがあるんですよ!」
「(そんなこと・・・)な、なんや?」
「千歳先輩はどうしたんですか?」
「あー千歳ならほら・・・あのこんもりしとる布団あるやろ?あそこに居るで」
「え?・・・あ」
確かに謙也先輩が指差した場所にはこんもりとした布団がありました。
そして布団がたまに上下しているところを見ると、どうやら千歳先輩は寝ているみたいです。
・・・よくこんな五月蠅い場所で寝れますね・・・逆にすごいです。
って、・・・んん?あれれ?
「もしかしてあともう二つのふくらみって銀先輩と健先輩ですか・・・?」
「おん」
なんということでしょう・・・!!
我がテニス部の常識人が二人ともいないなんて・・・!
私は本気で自分の部屋に帰りたいと心底思いました。
で、ですが・・・こんだけ五月蠅ければ、私が今ここで抜けてもバレないんじゃ・・・?
そんな淡い思いを胸にじりじりと後ろに下がろうとしました。
・・・・・・まあ、無理でしたけど。
「あれー?どこに行くつもりなん?」
「く、蔵先輩・・・」
「帰ろうとしたらあかんで。今から、うんと楽しいことがあるんやからな・・・」
蔵先輩の顔がそれはもうとてもとても楽しそうに歪んだのを見て、思わず顔が引きつりました。
うああああ怖いよおおお。
まさしく心の中は土砂降りな気分です。
動けないままでいる私に蔵先輩は真っ白な枕を手渡されました。
それに疑問を抱き口を開こうとしたその時・・・蔵先輩から発せられた単語によって、私はすぐさま逃げ出したい衝動に駆られました。
「第三回枕投げ大会を開催致します。皆、枕準備ー!」
「は、はいいい!?っ、だ!!」
「ああ、手が滑ってもうたわ。すまん」
「ひ、光くん・・・ったい!!」
「なにボケッと突っ立っとんねん!枕投げなんやから油断しとっぃて!!」
「ははっざまあみぶほっ!!!」
「謙也ーゆだんたいてき!やでー!」
「ちょ、待ってくだ、ヒッ!!な、なななんですかユウジ先輩!!」
「今日小春のこと厭らしい目で見とった罰や!!」
「い、言いがかりもいいとこですよそれ!」
「ちゃん頑張ってー!」
「っ!?ー!!」
「いやですからなんで!?」
「ー俺も混ぜてぇな」
「ひぃ!もっと厄介なのきた!」
「ちゅうか、こんな騒がしい中で千歳や師範に健一郎はよう寝てられぃっだ!」
そして後日、千歳先輩と銀先輩と健先輩以外のレギュラーメンバーと巻き込まれた私が寝不足で死んでたのは言うまでもない。