イライライライラ。
俺の今纏ってる雰囲気を一言で表すなら、どす黒いの一言に限る。
さっきからチラチラとこっちを見てくる謙也を一睨みすると、謙也はびくりと大袈裟に肩を跳ねさせてから
慌てて前を向きよった。なんやねん。
ちっと普段の俺からは想像できひんようなおっきな舌打ちをする。あーイラつくわぁ。
机で頬杖を付きながら窓の外を見つめる。おーまるで俺の心のように見事に曇っとるわぁ。
タンタンタンと机を指で叩きながら、携帯を見つめる。
愛しの愛しのからのメールを今か今かと待っとる俺。
なんていうことか、俺はいつも日頃の行いがよすぎるっちゅうのに、何故か俺の誕生日にちょうど風邪をお引きになされた彼女さま。
あーあかん会いたいー・・・!うずうずと頬杖を止めて頭を机に押し付ける。
本間にあかんて。に会いたいんやけどもうめっちゃくちゃ会いたいやけどそんでぎゅーて抱きしめてちゅーしたいんやけど!!
あーあーーと呪文のごとく呟いている今の俺に近づくものは誰一人としておらん。
(ちなみに誕生日プレゼントは以外今日は受け取らんと公言しとったから、誰一人として俺にプレゼントを寄越しに来ない)
相変わらず前の席の奴(謙也)からの視線を感じるがシカトやシカト。うーあー、意味もなくその言葉を繰り返し携帯をつつく。
が足らん・・・。なんではよメール返してくれへんのー?あ、もしかして寝とんのか!?あ、せやな・・・風邪なんやもんな・・・・あぁ、寂しいねんけど・・・。
はぁと盛大なため息が俺の口から漏れる。幸せが逃げてまう・・・・いや、むしろ、が隣におらんと俺の幸せなんてもんは存在しぃひんのや!
せやからカムバーック!!
と、意味もなく心の中で叫んでみたり・・・・・ちょいちょお待てや。俺無駄のない男で有名やのに、無駄な行動と発言で今日いっぱいやない?
あ、せや、これもがおらんせいやな・・・・俺、の前でしか完璧でおれんわー・・・・はぁ。
考えれば考えるほど、に会いたくて今すぐ教室を飛び出しての家に突入してに誕生日プレゼントはわ・た・し!的なこと言うてもろて、そんでそんで
とムフフなことして今日という日を過ごしたい!という願望が溢れてきて俺ぶっ飛びそうや。
もうどうしようもないこのへの愛にうぷうぷしながら足をブラブラさせとると、前の席のスピードオタク(さながら俺はオタクやな!)が小さく
「キショ・・・」
と言うたんを聞き逃すわけもない俺は前の席の椅子を思いっきり蹴飛ばす。
すると、謙也が「ぅおあっ!!」となんとも情けない声を出すもんやから、思わず吹いてもうた。あかんあかん、謙也ごときに笑ぉてまうとは不覚やった!
が、しかし、それと同時に俺の携帯がバイブする。おおおお、声には出さず心の中でそう叫ぶと携帯を素早く掴む。
、おおおお!!ちょ、これで、でで電話やん!!慌てて通話ボタンを押す俺。「もしもしっ!?」我ながら余裕がない言い方になってもうたなぁと頭の隅で思うが、
別にええわ。俺のことなんてどうでもええねん。とにかく今はの声が聞きたくてしゃあない。姿が見れんならせめてお前のお美しい声を聞かしてぇな!
『もし、も・・・し?』「(!!)!?大丈夫か!?熱は!?なに、どんな風邪引いとるん!?」『あは、はっー・・・た、だの風邪やで〜・・・こほっ』
「っ!!あかんやんあかん!今咳した!!」『そりゃ、風邪やもん・・・』「せやったらはよ寝なあかんやん!」
『・・・せやけど・・・蔵がウチに会えん死にそうや〜!ってメールしよったからまだ寝んでわざわざ蔵に電話かけとるんやないかー・・・!』
「ハッ!す、すまん!堪忍な・・・やってに会えんとノイローゼになりかけやってん・・・」『昨日会うたやんけ・・・』「ちゃうんやって!毎日会わんと嫌なん!」
『どんだけー・・・』 くすりと最後にが笑ったのを安易に俺は頭ん中で想像できるわけで、自然に顔が緩むんがわかる。あかん、今
めっちゃ顔ニヤけとるわ・・・。顔を腕で隠しながら、少し辛そうなの声を聞く。ちょお待ってな、あと少しだけ君の声を聞かせて。
『蔵ー・・・?』「んー・・・?」『そろそろ昼休み終わりやないの?』「あー・・・本間や・・・うわーいややー」『なに駄々こねとんねん』
「しゃあないやん・・・愛しのとの電話切らなあかんのやで?そんなん嫌に決まっとるやんか」『愛しのて・・・恥ずかしいんやけど』
「本間のことやもん」『・・・・ありがとう』「どういたしまして・・・ってあと一分切ってもうた・・・」『え、本間に!?あ、ああああんな!』「ぷっ、なに?」
時計の針が本鈴を鳴らそうと動く。あと少ししか話せないと知るとは焦ったように言葉を紡ぎだす。あぁそんなとこも全部全部かわええわ。
ふっ、周りに気づかれぬよう笑みを零すと、がコホンと咳払いをする。なんやなんや?
『あーあんな、えっと・・・な、蔵お・・・・お、お誕生日おめでとな!えと、そんでな、明日には、風邪治っとると思うからプレゼントは明日まで待っとってな!』
・・・・・あーこらあかん。さっきよりもっと笑みが濃くなる俺。
嬉しすぎる幸せすぎる君の一言で俺の今日はどんより曇り空から一転ピッカピカの晴れ間に早変わりや!
顔を机から上げ、本鈴がなる十秒前、俺は大きく息を吸うて
「かわえすぎ!愛しとるー!!!」
と電話の向こうで顔を真っ赤にさせているであろう愛しの彼女に向けて愛の言葉を。
ハッピーバースデー:甘えんぼ
は俺を幸せにしてくれる魔法使い。
4月14日は毒手持ちの絶頂男の誕生日やで!