「そういえばさ、今何時?」

「10時過ぎやないすか?」

「ふーん・・・って光遅刻!?」

















イレブン!























「ダメだよ光!遅刻は良くないっしょ!知ってる!?白石なんてもう学校着いちゃってるよ!?」

「そらそうやろな。部長真面目やし。ちゅうかさん叫びすぎ、うっさいすわ。置いてくで?」

「す、すみません」






しゅんと一気に肩身が狭くなる私。
私は今、白石にお弁当を届けるため四天宝寺中に向かっている。
萌えと青春の匂いがプンプンする場所・・・完結に言うならエデンだ。
だけどここで新たに発見された私の特技はなんと、方向音痴☆
というわけで、私一人ではたどり着けない四天宝寺・・・と項垂れていたら、メシアこと光が私の目の前に現れ、 事情を話して一緒に仲良く(ここ重要ね)学校へ向かっている最中だ。
しかしだね、よーく考えてみたらね?
私と会うとかさ、完全学校遅刻じゃね?
この時間に学生である光くんがここにいたら遅刻ですよね?そうですよね?
まぁそんなこと言ったところで私の言葉はすべてさきほどのように一刀両断されてくんだけどね。ホント恐ろしい子よこの子!






「あ、ここです」

「ふーん、ここ・・・ここォ!?ちょっと早い!早すぎる!着くの早っ!!」

さん、こっち」






私が光とともに歩いた時間、約5分弱。なんなの。まじでなんなの。
こっから会話がどんどん広がって親密になっていくところでしょ・・・!?
私の肩身が狭くなっただけで目的地の学校に着いちゃったよ!
あまりの展開の早さに私は打ちひしがれる・・・暇はない!!
光がどんどん先を歩いていく。学校の中にどんどん入ってく。
ちょ、私部外者だから入るの結構怖いんですけど!
ちょ、そ、そんなずんずん行かないでよー!!
慌てて光の元へ走って追いつくが、何故かどんどん校舎らしきとこから離れていく・・・あれ?






「あのー光?教室とかってあっちじゃないの?」

「色々と面倒やからこっち・・・って話すのめんどいんで黙っとってくれません?」

「ひどっ!!」






けどここで捨てられたら大変なので素直に黙る私。
とぼとぼと光についてく。すると見えたのはこじんまりとした・・・部室らしきもの。
いや・・・これは部室だ!!だってその建物の扉の横に『男子テニス部』って看板(?)があるもん!!
ちょっとォ!まさかの聖域に到着だよ!!






「えっこ、これってえ!」

「部室です。ここなら部長も安心してさんと話せるやろうし面倒なことになるのも避けられるやろ」

「わー入ってもいい!?」

「はい」






光はポケットから小さな鍵を取り出すと部室のドアノブの鍵穴に差し込んだ。
ガチャリと音が鳴り、扉が開く。
う、うわー!!やっばい匂い存分に嗅ごう!!
ふんっと鼻息荒く私は光に続いて部室に入る。
ぐるりと部室を見渡せば、意外ときれいに整理されてるし掃除されてて綺麗だった。
な、なんだかホント意外だよ・・・普通、男子が使う部室とかって汚くね?
服とかほっぽってるよね?ぶっちゃけそれ見たかったんだけど・・・。
ほら例えばパンツとか・・・ね。なぁんて変態くさいこと思いながら軽くガッカリした私の名前を光が呼んだ。






「部長呼んでくるんで、ここで少し待っとってください」

「まままままじで!?うわっちょー助かる!ホントにありがと光たん!」

「部長やなくて警察のがええかな?」

「ううん、私は部長を呼んで欲しいな光くん」






ちょっと調子乗ったら、ものすごい冷めた目した光に睨みつけられたので即座に土下座しといた。
なんか私の調子乗ったはほとんどの確立で命にかかわるのでこれからはちゃんと自重しよう・・・。
とりあえず大人しく部室に入ってそこら辺にあったイスに腰を下ろした。
まじ、やっべ・・・改めてここって部室なんだよね?
改めてここでみんな着替えてるんだよね?改めて・・・やっべ、鼻血でそうだよ・・・。
ブツが見れなくても、みんながここで着替えてるんだと思うとテンション上がってきた!
想像力豊かな私はどんどん自分の頭の中で素晴らしい光景を思い浮かべ一人うっとりしながらにやける。
さ、最高・・・!






「ちょ・・・さん顔がキモイっすわ」

「・・・顔がキモイって相当な暴言だよね」

「あ、そうそう。もし部室荒らしたら即ブタ箱ぶち込むんで、そのこと忘れんと行動してください」

「うん、絶対忘れない。全細胞に今刻んだから絶対忘れない」






光くんが笑顔で親指を下に向けたのを見て本気で泣きたくなった。なにこの子ドSな鬼畜・・・!
イスに座って体を小さくさせ大人しくなった私に満足したような光はもう一度大人しく待っているように言うと、 今度こそ白石を呼ぶために部室から出て行こうとする。が、ドアに手をかけたところでいきなりこっちを振り返る。
なんだ・・・べ、別に今は何も妄想してないぞ!!
光に何を言われるのかとビクビクしていると、光は自分のバックから紙とペンと取り出すとそれにすらすらと何かを書き込む。
え、なにまじで。
光の読めない行動に首をかしげ黙って見ていたら、その紙が私に向かって投げられた。ちょ!!






「なっなにすんのさ!」






不意打ちだったけどちゃんと紙をキャッチした私。ナイキャッ!
なんだろうと見る前に光がまた私の名前を呼ぶ。






「え、なに?」

「それ俺のケー番とメアド。今日みたいになんかあったら俺にすぐ連絡してください。いつでも助けたる」






そう言って光は小さく微笑んで部室から出て行った。
私は数秒固まった後に顔が急激に熱くなっていくのを感じる。
う、っわ・・・マジで超かっこいいんですけどぉぉぉぉ!!
光から貰った紙を思わずくっしゃっとするほどときめいてしまった。
もうやばい!あのかっこよさない!!
何あの男前!何あのイケメン具合!死ぬんだけど!
なんかなくても連絡取りたいんですけど!
イスに座りながら悶絶。
ムフフと盛大に緩みまくった顔で光から貰った紙を見つめた・・・・・・・・・が、私はあることに気付いた。













「あれ・・・私ってまだ携帯行方不明じゃね?」






うっかり忘れていたことに驚き、思わず白石のお弁当を落としてしまった。
・・・って、やっちまったァァァァァ!!!




→Next