そうだ、気持ちを落ち着かせて・・・。
私は大人なの・・・そう、だから落ち着いて落ち着い「遅なってごめんな!」
「しっ白石ィィィィ!!」
「おちゃめ・・・って、おお白石、お前かいな」
「は、え?・・・なんで泣いとるん?」
「さあ、知らん」
お前(ユウくん)のせいだ!!と声を大にして言ってやりたかったが、私はグッと堪えた。
だ、だって私大人だからね!
握り締めた拳はぶっるぶると震えていたが。
フィフティーン!
やっと白石が部室に現れた。
白石は対照的な私達の顔を見て一瞬固まったが、すぐに何事もなかったように私達に話しかけた。
なんて薄情!私の暗い気持ちを察しろ!
「ちゅうかユウジは何しとんねん。お前らの様子見とると、結構前から話してたみたいやな・・・ユウジ、授業はどないしてん?」
「小春が居らんからやる気せぇへんのや。あーあー小春が足らんーっちゅうねん!!」
「しゃあないやろ?風邪や言うとるんやから」
「せやけど・・・あーもう今日の部活もあかん気するわーこーはーるー」
白石はユウくんの発言に思いっきり眉間に皺を寄せた。
しかし白石は大きな溜息をついただけで、何の文句も言わない。
白石だったら絶対説教すると思ってたのに・・・!
私同様、ユウくんもてっきり説教されるかと思っていたらしく、何の文句も言わない白石に驚いた表情をしていた。
え、なんで?おかしいでしょ。ここは部長なんだから、授業サボっている上に部活までサボりそうな勢いの子を怒らなきゃ・・・ダメでしょ!
だけど・・・やっぱり白石は一向に怒る気配がない。
なんで、なんで?と疑問詞ばかり浮かべていると白石はロッカーに向かう。
その行動に不思議に思いユウくんと顔を見合わせ首を傾げてから、恐る恐る白石に声をかける。
「し、白石?」
「なんや?」
「いや、えっと・・・なにしてるの?」
「なにって・・・帰る支度や」
「え!?白石帰るんか!?」
「おん。連れて帰る」
「私!?」
「そうや。、一人じゃ帰れへんのやろ?」
「うっ」
確かに・・・。
光に案内してもらったけど・・・ぶっちゃけもうその道覚えてないし、このまま一人で帰れとか言われても帰れなかった。
けど・・・なんでそれが白石が帰る支度になるのだろう?
だって、まだ時間的にはお昼ぐらいだし・・・授業とかまだあるよねぇ?
「あ、もしかして白石はこいつ送るために帰るんか?」
「え、私!?」
「せや。ええか?小春が居らんでも俺が帰ってもちゃんと部活に行くんやで?小石川に全部まかしといたから」
「へーへー」
「えっえっちょ、授業はどうするわけ!?」
「早退。俺、成績も生活態度も悪ないねん。せやから心配することはなんもあらへん」
「いやさ、そんなことじゃなくてね・・・授業は受けなきゃいけないものなんだよ!」
「・・・がまともなこと言うとなんや寒気するな」
「なんですとぉ!?」
「まあええわ。ん、準備はできたから・・・帰るで」
「いや、だから・・・」
「ほな、またなー今度会うた時もいっぱいだべろなー」
「え、あっうん!!また、ってちょっと白石置いてかないでよー!」
私の訴えも虚しく白石の胸には届かず、白石はスタスタと部室を出て行ってしまった。
部室でヒラヒラと手を振るユウくんに手を振り返して慌てて追いかける。
なんだかんだ言ってユウくんはいい子だった気が・・・する、いや、小春ちゃん話が、なぁ。うん。
面白かったし可愛かったけど、ね!
って今は白石だよ!
私のために早退までしてくれた白石には相当ときめくけど・・・なんだか罪悪感がむくむくとやってくる。
いや本当にときめくけどかなーりときめくけど・・・萌えるけど、萌えるけど。
でもね、お姉さん的には、ねぇ・・・ちょっと、何回でも言うね。萌えるけどッ!!
そう、これは光と謙也、または白石と謙也がイチャこらするぐらい・・・萌えガッ!!
「っったァァァァ!!!」
「今変なこと考えたやろ。ええ加減にせえよその頭・・・本気で割るで?」
「・・・・・・す、すんませんです・・・」
***
白石とともに家へ帰る途中、午前の説教の続きが行われた(プラス先ほどの不埒な考えについて)
もうすんげー叱られた。道行く人たちにものすごい好奇な目と不審な目で見られたよ・・・。
こんなに怒られたことは小学校以来な気がする。
先生の机の中にトカゲ入れたりとか、ゴキブリだァァとか言ってコオロギを男子に投げつけたり・・・うわぁ懐かしい記憶だわ。
むふふ、と笑いを零せば、「話聞いとるんかァ!?」と白石にチョップされた。
いったいよ!って思ったけど、ユウくんのお目覚めチョップのが痛かったのでここは文句を言わないことにする。
とりあえず、未だ続く説教を右から左へ聞き流していると目の前にはもうマンションが見えた。
あ、あれ?やっぱマンションから四天宝寺めっちゃくちゃ近かったけい?
びっくらこいたよ、え、私ってば素晴らしい方向音痴だったのね!
あと少しでマンションの玄関!そして白石からの説教からも開放されるだろうと思い落ち気味だった気分も一気にあがる。
白石の説教も落ち着きが出だしたからそろそろ終わるだろう。
やっとこさマンションの玄関にたどり着き、二人でエレベーターを待つ。
「あ、そろそろくる!」
「はー・・・本間今日は最悪やったな・・・」
「あはは・・・ごめんってば!」
「明日は絶対大人しくしとれよ?」
「はいはいっと・・・ってきた!」
エレベーターがきたところで白石の説教も終わった。
ナイスタイミングとか思い、扉が開くのを待つ。
チーンと言う音が鳴って、さぁいよいよ開く・・・ぞ・・・!?
「やあ、元気そうだね!」
「・・・は、・・・・・・ああああああ!!!」
エレベーターの扉が開き、その中には人がいた。
置くの壁に凭れ掛かり爽やかに笑うその顔を忘れもしない、その人物は・・・
「てっめ、クソガ、神さまぁ!?」
「おい、今クソガキって言おうとしただろ」
「すんませんしたァ!!」
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