「んー・・・」
「朝やーほらさっさと起きー」
「んあ・・・むーもうちょっと・・・」
「それさっきも言うとったで。もう、昼前や」
「ぅー・・・お母さんもうちょっとだけってばー・・・」
「誰がお母さんや」
「・・・お母さんいつからそんな素敵な細谷ボイスになったの・・・?」
「細谷ボイスってなんやねん」
「ていうかいつから・・・関西弁・・・?」
「生まれたときからやったな」
「・・・・・・・・ん?」
「ほら、ええ加減目覚まし。俺が誰だかわかるか?」
「・・・おかあ・・・しら、いし・・・・?」
「そや。みんなの白石蔵ノ介やで」
「しら・・・・・・・・い・・・・・・し、っぎゃあああああああ!!!!」
ファイブ!
「すみません・・・!!」
「人の顔見て叫ぶとかないやろ」
「ですよね・・・!!」
「起こしにきた人間になんちゅー仕打ちや」
「まっこと申し訳ございません・・・!!」
仁王立ちをする白石の前でひたすら土下座をしています私です。
眉間に皺を寄せてますがそんなとこも綺麗なこの子に嫉妬します。
って、ちがう!
朝起きてこの状態おかしいよね、うん!
いや、うん、私が悪いのはわかってます。
わざわざ起こしにきてくださった白石の顔を見て叫んでしまった私が悪いのです・・・!
まず、私の寝ていた場所は実を言うと白石のベット。
はい、今の重要なんでね、もう一度言いますよ。
白石のベットで寝てました。
とんでもないよね、これ。ファンが知ったらマジ私八つ裂きじゃね?みたいな。かっこわらい。
私は「床でいい!!」と主張したのだが、白石が
「女の子を床では寝かせられんやろ」
となんとも紳士的な
心遣いを発揮し、私がベットで白石がソファーで寝ることに。
まぁ、服はというと例の如く白石の服を借り昨日は色々あったため早く寝た。
で、今。みたいな。かっこわらい。
ちらりと上を見てみると、白石がため息をついて
「もうええわ。・・・まぁ、俺も置きぬけのにいきなり顔近づけたのは悪かった。すまんな」
と眉を下げ笑った。
そんな笑顔を朝から見た私はご飯食べる前からごっつぁんです!!な状態だわ・・・!
私も「ごめんね」ともう一度言って立ち上がろうとした瞬間、
突然走る足の痛みに体勢を崩しすっ転ぶ。
へ・・・?・・・ぅあっ!!こ、これは・・・!!
「っあ・・・!」
「え、・・・?っどないした!?」
「む、ぬ・・・!!」
「!?」
あまりの足の痛さに視界が歪む。ちょっこんなことで私の貴重な乙女の涙を流してたまるかあ!
ぷるぷると体を震わせながら痛みを我慢する。
白石がものすごく心配そうに私に声をかけてきて、いや、ホント、そんな必死にならなくても・・・。
なんていうか申し訳ない。
「おい!!」
「っ!!だめ!!」
「いたっ!」
そして、私の肩を掴んで起こそうとした、白石の手を思いっきり振り払った。
だって、だってさ・・・、
「あ、足しびれた、っから動かさないで・・・!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」
そうなのよ、さっきの土下座姿勢ってさ、正座じゃん?
起きぬけいきなり正座とかハンパなく辛かったわけで、私の足は見事痺れた。
震える体で痺れた足をとにかく動かさないようにしてそう白石に訴えかけたら、
白石は目をパチクリとした後、口の端をニィと上げ立ち上がる。
へ?
「ほう・・・足が痺れたんか。なんや、いきなり転んで苦しそうになったと思たらそんなことかいな」
「そ、そんなことじゃないっぞぉ!めっちゃくちゃ痛いっていうかむずむずしてるっていうかだねぇ・・・!」
「ほうほう・・・そうか」
私が苦しんでるのを見ると、白石はキラキラとした満面の笑みになったと思ったら、私の足元に行きしゃがんだ。
え、ちょっと、待てよ。え?めっちゃいい笑顔だけど、なんか嫌な予感しかしないよ?
冷や汗がゆっくりと私の背中を流れる。
・・・気のせい?むしろ気のせいであってほしいんだけど・・・、え、
「っひ、ぎゃあああ!!」
「ほれ!ここが痛いんか!」
「ぅわあっ!ちょっギブギブ!!痛いって・・・!」
嫌な予感ははずれることなく正解した。
白石が楽しそうに私の痺れた足で遊ぶ。
なんていう地獄だ・・・!!
あまりの痛さに手をジタバタさせたが、もちろんそんなの意味のない行動。
もちろん足は動かせない・・・!
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら、白石の魔の手から逃れようと匍匐前進で逃げようとしたら、
白石が強く私の痺れた足を掴んだ。っ!!
「ひぃ!!ちょっとぉぉマジでかんべってててて!!」
「心配したんやぞ!」
「す、すみっませんっしたあああ!!」
「・・・うりゃ」
「っぎゃあああ!」
もうね、それはもうね、本当に楽しそうに人の痺れた足をいじくるとか悪魔以外の何者でもないでしょ!
いくら見た目とか趣味とか老けてても、こういうとこはまだガキンチョなのか・・・!
私は下唇をかみ締めながら、年相応の表情を見せる白石を涙目で見つめた。
いや、だけどね、これはいかんよね?
こんなんで年相応な顔されても困るっつの・・・!!
そんなわけで、結局痛みと白石の攻撃から解放されたのはそれから5分後のことでした・・・。
「はっ、はぁはぁ・・・」
「あーおもろかった」
「全っ然面白くないわ!!し、死ぬかと思った・・・!」
「大袈裟やな・・・って、腹減ってたんや。、出番やで」
「は、い・・・?」
「条件、忘れたとは言わせんよ」
「じょ、うけ・・・あ。」
「ほな、頑張ってな」
ニコッ、朝から体力を使い果たして疲れきってる私に白石は笑いかけて寝室を後にした。
・・・・・・・なんか、私・・・家に帰れるまで生きてられるか不安になってきました・・・。
軽く眩暈を覚えながら、それを振り払うように首を振る。
そうそう、何事も楽しまなきゃね!白石の悪魔な部分見ちゃったけど、私は負けないぜ!
グッと拳を握り締め決意(?)を新たにすれば、お腹の虫がKYにも「ぐぅ♪」と鳴りやがる。
・・・・・まぁ、これが私っすよね!
とりあえず私もお腹がすいてきたので白石の後を追うように、寝室を出て台所へ向かうのであった。
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