「お、おう。さ、沢田では、ないか」

「へ?あれ、お兄さん・・・?どうしたんですか?あ、もしかして京子ちゃんに用ですか?」

「ち、違うぞ!」

「?え、と、じゃあ、なんですか?」






俺の目の前でソワソワしてるのは、いつもハキハキしてる京子ちゃんのお兄さん。
教室に入るときにたまたま会って、引き止められて、今の状況にいたる。
そわそわそわ、何かを言いかけては口を閉じ、わたわたわた、手は何かを伝えようと動いては止まり、
正直うざい。
本当に、いつものハツラツさはどこへ消えたのだろう。
これ、ここに獄寺くんがいたら相当ヤバいと思う。絶対、キレてる。(只今、獄寺くんは家に携帯を取りに行ってる)
これ、ここに山本がいたら確実に爆笑してる。いやでも、ある意味いてほしかった。この状況、俺にどうしろと?(只今、山本は宿題忘れのため先生に呼び出しくらってる)
ちっ、面倒だな・・・。
お兄さんに聞かれるように舌打・・・・いや、ため息を零したら、突然肩に衝撃。(!?)
驚いていると、肩にきた衝撃の原因であるお兄さんが切羽詰った感じで俺に詰め寄る。






「ちょっ!」

「さ、沢田!!」

「は、はい!?」

「沢田は、げ、元気か!?」

「は、はぁ?い、いや、俺は元気、ですけど・・・」

「お、お前ではない!!沢田、の方、だ!!!」

「・・・え、姉さん?」






顔を真っ赤にして何を叫ぶかと思ったら、姉さんの体調。
そういえば、姉さんは熱出して今日学校休んでるんだった・・・。昨日はたしか、早退したし。
でも、なんでお兄さんがそんなこと聞くんだ?だって、姉さんとお兄さんってクラス違うじゃん。
俺はなぜお兄さんがそんなことを聞いてくるのかが不思議で、首を傾げてお兄さんを見つめる。
すると、お兄さんは目を泳がせながら、口を開く。






「昨日沢田が早退して今日は休んだと聞いて、どうも落ち着かなくてだな・・・。 それに、き、気になって今日の授業はほとんど聞き逃してしまって・・・」

「・・・」

「だから、その、弟であるお前に聞きに来たんだ。沢田・・・、は今朝どうだったんだ?昨日よりはマシになってたか?熱は・・・」






これは・・・、俺は目の前で相変わらず顔を真っ赤にしながら姉さんの心配をするお兄さんを驚きな視線で見ながら思う。
これは、つまり、あれじゃないだろうか?
お兄さん、もしかして、姉さんのこと・・・。






「え、えーと、まぁ、昨日の夜より熱は下がってたんで明日には学校に来れるかと・・・」

「そ、そうか!ならよかったぞ!・・・じゃ、俺は教室に戻る!次は移動教室だったからな、じゃあな沢田!!」

「え、はい。あ、あの!!」

「む?」






俺から姉さんの体調を聞いたら、すぐさまさっきまでのしおらしさは一切なくなり、いつものお兄さんになって立ち去ろうとしたが、
俺がすぐ呼び止めた。
俺はどうしても気になったことがあった。と、いってもこれはきっと確実にそうだろうこと。
お兄さんは不思議そうに俺を見ている。
俺の直感から言おう。お兄さんは、






「お兄さんは、姉さんのこと好きなんですか?」

「!!お、俺はっ、好き、だぞ!」






予想通りの答えだった。俺から顔をそらしながら周りに人がいるというのを忘れて、大声でそう言うと、お兄さんは走って行ってしまった。
そこへ、ちょうど先生のところから戻ってきた山本と、携帯を取ってきた獄寺くんがきて、不思議そうにお兄さんの走り去ったあとを見ていたのは言うまでもない。
俺の顔がものすごく笑顔だったっていうのも言うまでもない。






これは、もう、
明日の二人が楽しみだ。









「姉さん、体調どう?」

「ん、だいじょぶー」

「そっか・・・あ、そうそう、姉さんのことお兄さんが心配してたよ」

「?・・・お兄さん?」

「あ、京子ちゃんのお兄さんね」

「ああ、笹川くんか。そうなんだ・・・そういえば、昨日早退したときも一番笹川くんがあたしのこと気にしてくれてたなぁ・・・」

「・・・・・・へぇ」

「笹川くんってすごい優しいよねぇ・・・」

「うん、そうだねー・・・(すごい優しいのはきっと姉さんだけだと思うな・・・)」

「それにかっこいいし・・・」

「うん、そうだね。あ、」

「え?」

「そういえば今日お兄さん、姉さんのこと好きって言ってたよ」

「ふぅ・・・え、ええええええ!?ウソ!あたしも好き!!」

「いや、俺に言われても・・・」

「はっ!ご、ごめん!」




答えは案外すぐだった