「私、浜ちゃんと結婚しますっ!」

「そうよかっ・・・・・・はぁ?」

「彼以上に私に似合う男なんていないんですよ!!」



今日ももちろん無断で応接室に入ってきた。もうノックしてから入れなんて言わない。諦めた。 ソファーに腰掛けくつろいでいるところにはそれはもう興奮気味に語りだす。




「浜ちゃんは私の理想の人なんです!優しいしかっこいいし可愛いし背高いし裁縫できちゃうし推測だけど料理できちゃうし・・・!」

「推測ってなに推測って。なに、もしかして君が言ってる浜ちゃんって・・・」

「浜田良郎くんのことですよ」

「知らねぇよ。そうじゃなくて・・・もしかして、二次元の人間、のこと?」

「ハッ!(鼻笑)当たり前じゃないですか!他になにがあるって言うんです?」




こいつ今鼻で笑いやがった。 さらには小馬鹿にしたようなカオを付け加えてきてる。イラァ。 ものすごく、色々なことに(が相変わらず馬鹿な発言するのと結婚するとか言うのと馬鹿にしてきたのと・・・何より、 僕の目の前で他の男(・・・と言っても二次元だけど)の自慢をするのとで) イラってきたので、ささやかな嫌がらせとしてに胸ポケットに入っていた消しカスを投げつけた。 (いつも床に落とさなくてポケット溜めといてよかった)




ちょっ、きたなっ!!どこから召喚したその消しカス!!」

「召喚?普通に僕の胸ポケット」

「なんつーとこにいれてるんですか雲雀さん!!私そんな子に育てた覚えありませんよ!!」

「奇遇だね。僕もきみに育てられた覚えないよ。そして、もしきみに育てられたとしたらかなりの性格破綻者になるよね」




それどころか、むしろ僕じゃない誰かになるよ。うん。確実に名前とか狂殺(きょうや)になるよ。 ・・・まぁ、いいや、そんなこと。(僕も妥協というのを覚えてきた気がする) 僕は残りの消しカスもに投げてから、ソファーから立ち上がり 僕専用のイスに腰掛ける。少し落ち着こうか、自分。




「っぎゃー!!髪の毛に消しカスがぁぁぁぁあ!!なんていう悲劇!!」

「うるさい」

「ちょー!!逆襲だー!!」




そう叫びながら、はポケットから消しゴムを取り出す。(あれ、普通筆箱からじゃないの?あれ) そして、テーブルにむかってそれを擦り始める。 ・・・いやいやいや。




「ちょっ、それ、やめてくれる?ホント困るそれ」

「えっ、なにがっ、ですっ!?(ゴシゴシ)」

「いや、ゴシゴシじゃないから。ちょっ、はげるって」

「え、雲雀さんが?」

「テーブルが。どんなボケ?咬み殺すよ。」

「やっだ雲雀さん!目がマジだ!(ゴシゴシ)」

「いや、だから、ゴシゴシすんな」




何かやつを止めるものはないかと机の上を見る。一番に目に入ったのは、下敷きで・・・うん、これでいいや。 素早く手元にあった下敷きをに投げつける。しゅっといい音を立てて飛んでった。 もちろん、それもまた前回の消しゴムみたく(あ、そういえばあの消しゴムどこやったけ?)、 見事に彼女の頭に直撃(ちなみに角が当たったみたい) 一瞬にしてが床にのた打ち回る。・・・・・ちょっと罪悪感。




「っうあああああ!!!(ごろごろごろごろ」

「・・・あんまり暴れないでよ」




ガンガンテーブルを蹴りながら床を殴りながら転がりながら、悶えてる。 下敷きはまたもや扉付近に落下していた。(あ、またもや拾いに行くのが面倒な距離に落ちた・・・) そして、をもう一度見ると・・・うん、暴れないでって言ってるのに暴れてる。 どうしよう。このままじゃ物が破壊されそうな予感がするんだけバキャ・・・あ。




「・・・・・」

「つぅ・・・あ、やっちゃった」

「あ、やっちゃったじゃないでしょ・・・これは・・・」




テーブルが不吉な音したと思ったら、テーブルの脚が一つ消えた。 おかしいな。 テーブルの脚、全部で四つなんだけど。 なんで三つになってるの? すっごい不安定になってるよ・・・ぐらぐらしてるよ・・・そこで何か書こうものならすべてが無駄になる気がするよ・・・。 ジロッとを睨むと、取れてしまった残念なテーブルの脚をもちながらはしまりのない顔で頭をかいた。 反省の色?そんなもん、見えない。むしろこの子に反省という意味が存在するかもわからないよ。




「あはっま、仕方ないよ☆」

「・・・咬み殺していい?」

「ノーセンキュー」

「遠慮しなくていいよ」

「いやいやいや」




僕がトンファーを持ちの元へ行くと、が土下座で謝ってきた(もちろんその手にはテーブルの脚) しまいには「ごめんなさい雲雀さまんさ。私の神はキラ・ヤマトさまです。ごめんなさい。ぬむぬむだー!」と言ってきたが、 はたしてこれは謝られてるのだろうか?かなり危ういとこだと思う。 しかも、ぬむぬむだーって・・・何語? ・・・・うん、そんなこと気にしてたら僕の毛根は死滅してしまうと思うからもう考えるのやめよう。 まぁ、そんなことより、




「ねぇ、君がなんやかんややってる内にもう最終下校だよ。」

「あれ!?私のせいなんですか!?」

「他に誰がいるって言うんだい?怒るよ」

「トンファーちらつかせてる時点でもう怒ってるじゃん」

「・・・ほら、早く出て行ってくれる?」

「はーい!わかりましたよーだ!じゃ、帰りますねーはい!」

「いやさ、テーブルの脚渡されても・・・僕にどうしろと?」

「なんとかなるよ!」

「これ投げつけていい?」

「ノーセンキューでアディオスー!!」

「ちょっ、・・・!!ちっ」







はぁ・・・とが去っていった応接室で一人ため息。 イスから机に腰掛け、窓の外を見つめる。早く、学校の戸締りしに行かなきゃ。 せっかく今日は一緒に帰れる、かと思ったのに・・・ああ、ムカつく。 僕の中を好きなだけかき回して、すぐいなくなる。柄にもなく、傍にいたいって思うのは僕だけなのかな? やっぱり・・・君は一回咬み殺さなきゃダメなのかい・・・? しばらく外を見つめていると、校門まで走っていくの後姿が見えた。・・・・速くない?妙に足速くない? ここ出て行って一分ちょっと経ったくらいなんだけど・・・。 驚きでの後ろ姿を凝視していると、あと少しで校門というところではこっちを振り向いた。 片手を口にそえると、大声で





「明日は一緒に帰りましょうね!」




僕はそれに対して首を大きく一回縦に振った。









(もともとそのつもりだったけど、ね)(ぽそりと誰もいなくなった応接室で心に広がる温かさを感じながら呟いた)