わたしの好きな人は、怖い怖いはずのマフィアのボスです。 でも、わたしの好きな人は全然怖くないです。もちろん、彼の部下も全然怖くありません
「ねぇ、ディーノ」 「んー?」 「一緒に遊ぼー?」 「あー、ごめんな、もうちょっと待っててくれるか?」
ディーノはそう言ってさっきロマーリオから貰ってた紙切れになにかを書き込んでいた。 わたしは床に座ってイスに座るディーノを見上げる。 窓から入る光に、ディーノの綺麗なサラサラな金髪が反射して、すごくすごく綺麗で素敵。 ああ、まるで、ディーノはロマーリオが読んでくれた絵本に出てくる王子様みたい。 だって、ディーノだけこの空間でキラキラ輝いているんだもの。 わたしもいるのに、わたしは汚いだけの女の子だから。 ディーノみたいにキラキラ光ことはできないのがすごくかなしい。 一生懸命紙切れに文字を書いたりはんこを押しているディーノの腿らへんにそっと頭を乗せる。 邪魔かなって思ったけど、ディーノは嫌な顔をせず、こっちを見てほほえんでくれた。 それからおっきな温かい手でわたしの頭を優しくなでる。
「今日はやけに甘えるな・・・どうかしたのか?」 「ううん、なんでもないよ」 「ホントに?」 「・・・・・・ううん、ホントは怖い夢見ちゃったから怖かったの」 「ん、そうか。」
わたしが素直にそう言うと、ディーノは腿に乗せている私の頭をくしゃくしゃとなではじめた。 それがすごく気持ちよくてわたしは目を静かに閉じた。 そしたら閉じた目から涙がぽろぽろ出てきて、顔をディーノの腿に押し付けぎゅっと、自分の手を握る。 ・・・?」 心配そうなディーノの声が聞こえる。 けど、止まりそうにない涙を見られたくなくて、汚いおえつを聞いてほしくなくてわたしはただ首を振った。 大丈夫だよ、ディーノ。ただ、涙がかってに出てきちゃうだけ。 唇をかみしめておえつをかみころした。 すると、ディーノの両手がわたしの頭をつかんできょうせいてきに上をむかされる。 いやいやと首を振ってもディーノは離してくれなくて、にじんだ視界にディーノの金髪が揺れた。 「っぅ、」 「・・・どうした?」 「ぅー、っな、んでも・・・な、ぃっ」 「なんでもなくないだろ。」 イスから降りたディーノはわたしと同じ目線になるようにしゃがんだ。 そして親指で優しくわたしの両目からこぼれる涙を拭う。 あまりにもディーノの優しさがわたしの心を温かくして、言葉もあふれてきた。 「ディー、のぉ・・・!」 「うん」 「こわ、ぃよっ・・・!」 「うん」 こわい、と呟くわたしにディーノはうん、と答えるだけ。 わたしのおでこにディーノは自分のおでこをくっつけて、わたしの目をまっすぐに見てくれた。 こわい。 いつか優しくて温かいこのぬくもりがわたしのそばから消えちゃうんじゃないのかと思うと、 死んじゃうくらいこわい。 もし、そうなったら、なにもかもがすべて色をなくていくのを感じて、わたしはどうしようもない恐怖に襲われるの。 ディーノがいなくなったらわたしは、 「でぃ、っの・・・どこっに、も」 「あぁ、行かない。大丈夫だ。ずっと傍にいるから」 「ふっ、やくそく・・・っぅ!」 「ん、指きり」 おでこをはなして、ディーノは小指をさしだした。 わたしも小指を差し出してきゅっとディーノの小指と絡める。 ぐし、とあいているもうひとつの手で目を擦り、涙を拭う。 にじんでた視界は一気に透明感を取り戻し、ディーノの笑顔が見えた。 わたしもつられて笑うと、「やっと笑ったな!」と今度は嬉しそうに笑ってくれる。 ああ、幸せだよ、ディーノ。 わたしは繋がれている小指を離しディーノに抱きつくと、ちゃんとうけとめてくれた。 さっきまで不安でこわくて仕方なかったのに、今はそんなの一切ない。 今は、温かいこの安心だけ。 すると、急に眠気がわたしをおそう。 その眠気に逆らおうとはせず、ディーノの大きな腕の中、わたしはゆっくりと目を閉じようとする。 今度は幸せな夢が見れればいいな・・・。ぼんやりとまどろむ意識の中でわたしはねがう。 ・・・あぁ、そうだ、眠ってしまう前に・・・ 身体を少しだけはなして、 「ディーノ・・・」 「ん?あ、寝んのか?」 「・・・・・・すき、だいすき、あいしてるディーノ」 わたしがディーノを見つめてそう言えば、嬉しそうに目を細めてくれたディーノ。 そして少し照れながら「俺も・・・のこと、すげぇあいしてる。」とディーノは小さく呟いて、 わたしのまぶたにキスを落とし、わたしを強く抱きしめて一緒に床に寝転んだ。 窓から差し込む暖かな光をあびて、わたしたちは目を閉じる。
 陽だまりの詩。 Grumo positivo la poesia di Rino.