キーンコーンカーンコーン
予鈴が鳴り、周りが慌しく次の授業の用意をし始める。
かくゆう私もその一人なわけで、鞄に手を突っ込み教科書を探す。
が、お目当てのブツが全然手にあたらない。なんていうか紙くずだらけ・・・。なんて鞄なんだろう私の鞄・・・。
諦めて、今度は机の中を漁ってみる。
国語・・・じゃないじゃない、数学・・・違う違う・・・生物、お前じゃない・・・歴史、お呼びじゃない・・・
あっれー・・・?おっかしいなぁ、いや、そんなまさか忘れてるなんてこたぁないっすよね?
大急ぎで、ロッカーの元へ行く。少し乱暴気味に開けて中をのぞくも、
そこにあるのは大量のプリントと資料集だけ・・・。
・・・ああああああありえないありえない!!
ほおけてる場合じゃないじゃんどうしよう!!
慌てて時計を見ると、あと二分弱で本鈴。先生すぐ来る。つぅか廊下にほとんど人いねぇ。あ、絶望・・・!
頭を抱えて廊下にしゃがむ。
よりによって私の苦手な教科かつ苦手な先生の授業で、
教科書を忘れるなんて・・・!!
終わったこれマジで終わったちくしょうどうしましょう本気で顔引きつってきたんですけど神さま・・・!
「だ、大丈夫・・・?」
「!へ、あ、うん、大丈夫!・・・じゃない」
「ええ!?」
私がしゃがみこんでいると、頭上から心配そうな声が聞こえて顔をあげる。
そこにいたのは、クラスで有名どころか、学校で有名なダメツナが私を心配そうに見ていた。
じーっと見てると、ダメツナは少したじろきながら「どうかした?てか、もうすぐチャイム鳴るけど・・・」
と言う。・・・・・・チャイム・・・ハッ!!
「ど、どうしよう!!」
ダメツナの一言で私は我に返り、慌てて立ち上がった。
あーあーあーどうしようどうしよう。ダメツナがいるにも関わらず、私はロッカーの前をぐるんぐるん回る。
先生は忘れ物したら必ず授業中は集中狙いで指されるし、最後にたくさん宿題出されるしで最悪なんだよなぁ
もうやんなっちゃう!生徒いじめに入ると思うんだよねこれ!
そう思うと腹が立ち始めて、思わず「もう!!」と声が出てしまった。
「えっと、」
「いっつも嫌味ばっかり言うしさーだからあの先生嫌いなんだよ!」
「もしかして、なんか忘れたの?」
「英語の教科書忘れたの!あー絶対ぐちぐちねちねち言われる・・・!!」
「英語の教科書?俺持ってるから貸そうか?」
「あなたなんて教科書を貸してくれる友達なんていないでしょみたいなこと言わ・・・持ってるの!?」
「え、あ、うん。英語の授業今日あったから・・・」
「か、貸してください!!」
思わぬ伏兵がいました・・・!!
私は勢いよくダメツナの方を向くと、ダメツナは引きつり気味の笑顔で「ちょっと待って」
と言ってロッカーをあさり始めた。
ちょっとドキドキしながら、ダメツナの背中を見つめる。
そして時計を見ると、時間は残り一分を切っていた。
「あばばっ時間やばっ!」
「えっと、これ・・・はい。」
「!あ、ありがとう!!」
「え、あぁ、どういたしまして」
時計をガン見している内に、教科書を発見したダメツナは私にそれを渡す。
そして笑顔で「俺、四時間目が英語だから、それまで返してくれればいいよ」と言った。
ドキン、とダメツナの笑顔見た瞬間大きく心臓が跳ねる。
あと、もう何秒かでチャイムが鳴るのに、私は借りた教科書を両腕で抱き締めて、教室に入ろうとするダメツナを
呼び止めた。
「あ、あの!」
「ん?」
「私、って言うんだ!それで、ダメツナの本名ってなに!?」
「へっ?」
「ダメツナしか知んないの!だから、本名何!?」
「あ・・・沢田綱吉だけど・・・」
「さわだ、つなよし・・・・」
「えーっと、さん?早く教室入んないとヤバイと思うんだけど・・・」
「あっ!ホ、ホントだ!!ありがとう!また後で返しに行くね!!じゃ!」
私は、ダメツナ・・・沢田くん、に言われて慌てて教室に入る。
それから席に座ろうとした瞬間に鳴ったのはチャイムで、思わず安堵のため息が出た。
前の席の友達が「あんた廊下で何してたの?」と聞いてきたので、
「ちょっと教科書借りてた!」と誰に借りたかは言わないでそう答える。
友達がまだ何かを聞きたそうな顔をして口を開こうとすると同時に扉が開いて、先生が入ってきた。
「気をつけ、礼」
の声とともに、友達は渋々といった感じで前を向く。
それから、先生が英語を読み始める。
私はペラペラと教科書を捲りながら、先生が読んでいるところになんて目もくれず、
教科書にたくさん書いてある沢田くんの落書きを見ていた。
英語の授業だというのに、そんなもの入らないくらいに頭ん中は沢田くんでいっぱいで、自分で自分に驚く。
“ああ、これって、あれ、ですかねぇ?”なんてノートに書いてみた。
いや、別になんかあるわけではないけど・・・うん。
シャーペンをくるりと回して、次に書き込んだ文字は“沢田くん、好き、かも”だった・・・っておい!!
大急ぎで私は書いた文字を消す。段々、顔が熱くなっていく。あー!!と思いつつ机に顔を伏せると、
目に入ったのは沢田くんに借りた教科書。
あー・・・あの沢田くんよ、と心の中で言いながら、私はまたノートに一言を書き込んで消した。
“好きになってもいいですか?”
(これを機に彼と関わることが多くなった私は、今や立派なボンゴレファミリーとして活動中だったりします。)