「私、彼氏が欲しいです」
「なに・・・また二次元?」
「違います!三次元で、ですよ!」
思わず飲んでいたお茶を噴出しそうになった。
の発言をもう一度、頭の中でリピートしてみる。
『違います!三次元で、ですよ!』
・・・え、マジで?
いつも口を開けば二次元の話、所謂オタク話しかしなかったが、
三次元の彼氏が欲しいなんて言うなんて・・・。
内心動揺しながらお茶を飲み続ける。
「それで、ですね・・・あの金髪の外人さんは雲雀さんのお知り合いなんですか・・・?」
「は?」
飲み続けていたお茶がなくなっておかわりしようかなと思った矢先、がさらなる爆弾を落とす。
ほんのり頬を赤く染めて、僕に問いかけるはいつもの野蛮性はなくただの女の子みたいだった。
・・・いやいやいや、待て。
それよりもはなんで頬を染めた?
・・・金髪の外人?
・・・・・・いや、まさか、そんな、
「この前、応接室に行ったらその外人さんがいて、めっちゃイケメンすぎて光ってて・・・」
「へ、ぇ・・・」
「思わず逃げちゃったんですけどね!とりあえず名前だけでも!と思いまして・・・で、なんて名前ですかあの人」
「・・・」
何してくれちゃってるのかな、あの馬。
ていうか、そもそもが何故、あの人を気にしてるのかが理解できないんだけど。
なんだがムカムカしてきた僕はのことを無視して仕事をやり始めた。
すると前方からシャーペンについてる小さい消しゴムが飛んできた。
なんか投げてくるものがピンポイントにムカつく。微妙すぎでしょ、それ。
「なに」
「なにじゃないですよー!名前聞いてるんです!」
「雲雀恭弥」
「いやあんたのじゃないし。てか、雲雀さんの名前って恭弥だったんですね!知らなかった!」
僕の名前を知らなかったことに多少嫌な気分になりながら、尚もが聞いてくることを
ことごとくシカトしていく。
そんな僕に対してどんどんぶーたれてくるを見て、僕はため息をついた。
僕があの人の名前言いたくない気持ちを少しもわからない彼女にため息をついてしまうのはしょうがないことだと思う。
「もーいい加減教えてくださいよ!」
「嫌だって言ってるでしょ。・・・それに、きみこそ何でそこまでしつこく聞いてくるわけ?」
「なんでって・・・イケメンと知り合いになりたいと思って何が悪い!」
ダンッと僕が作業している机を叩いて身を乗り出してきた。
いや、そんな真顔で尚且つ必死に言われても、僕的にはすごく困るよ。
若干引き気味の僕を尻目には口を閉ざさなかった。
「そりゃね!私の周りにイケメンはいるけど外人のイケメンはいなかったわけですよ!
そりゃそうだ私日本国でしか活動してないもん!だから、外人のイケメンは知り合いにいないわけで!
だから、名前とか知りたいわけで!文句ありますか!?」
「いや・・・文句ならたっぷりあるけど」
「そこは文句ないって言いましょうよ!!」
「それよりきみの周りにイケメンなんていたっけ?」
「え、山本くんと獄寺くんはイケメンですよ。あと雲雀さんもイケメンです」
「・・・そう」
「草壁さんはテライケメン」
「ちょっと待て。何故?」
なぜ、草壁がイケメンの分類に入るんだ。
ものすごく納得いかない。
不満顔の僕には口を尖らせて「草壁さんほどのイケメンはそうそういませんよー」とほざいてきた。
これに対しての突っ込みはあえてスルーさせてもらおう。
とにかくそんな不純な理由であいつの名前を知りたいなら尚更教えられないなと思った僕は、に
もう一度一言「嫌だ」と言った。
「えーなんでケチ!」
「もうケチでいいよ」
「はげ!」
「はげてないから」
「じゃアヒル!」
「どこからそんな言葉がきた」
「もー教えてくれたっていいじゃないですかー!」
「きみもいい加減しつこいよ。僕はなんて言われようと教えるつもりはないからね」
あの人のことは一切、に教えるつもりのない僕はこれ以上聞かれるのもうんざりしてきたので鞄にものを詰め込んでいく。
仕事は結構区切りがいいとこで終わってるし、あとのことは草壁にやらせておけばいい。
僕が帰る支度をしているのを見たは大声で「逃げるのか!」などと意味不明なことを言ってきた。
ピーピーと騒ぐを無視して、支度を終えた僕はの薄汚れた鞄も一緒に持つ。
女の子なのにこんな汚い鞄使ってるとかホントありえない。
僕の行動にポカンと口を開けて黙ったに正直助かったと思いながら、扉まで歩いていく。
たどり着いたところで、後ろで動く気配のないに僕は言葉を投げかけた。
「ほら、何してるの?早く帰るよ」
「え、ちょっ話はまだ・・・って私のキラ様その他もろもろ入ってる鞄持って行かないで下さいよ!!」
慌てて僕の後ろを追いかけてきたを足が遅いと馬鹿にしながら、僕は昇降口まで走ってく。
そして、密かに今後絶対ににはあの人に会わせないのとあの人にもを絶対に会わせないことを
心の中で誓った。
え、別に、
ヤキモチとかいうやつじゃないから
(そうだ。この鞄、川にでも捨てようか)
(ちょっなんてこと言うんだい!ダメですからね!これ私の彼氏入ってますから!)
(どんだけ。ていうか三次元の彼氏が欲しいとか言っておいて鞄の中に彼氏がいるってどんだけ)
(所詮私には紙の中の彼氏だけで十分なんですよ)
(どんだけ)